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戦う司書さんと勇者と魔王  作者: 星砂糖
旅立ちと 封印都市と 勇者と魔王
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Page17「お風呂で反省会」

ペンシィの口調がおかしかったので修正 2016/9/13

「そろそろ反省会しようと思うんだけど大丈夫?のぼせてない?」

「はい。大丈夫です」


お風呂の淵を掴んでペンシィを見ずに答えるティア。

溺れるのが怖いのである。


そんなティアを置いて、お風呂の中央に突き出た球体に触れるペンシィ。

球体が淡く光ると、ティアが石を異空間に入れ終わった後休憩していた小川近くの草原になった。


「わぁ…」


ペンシィを見ずに淵を掴んで外側を見ていたティアにとっては目の前の無骨な風呂場の風景が、いきなり見知った風景に変わったことに驚きつつも、初めての投影魔法に感動が勝ったようだった。


ペンシィが球体を操作すると風景が変わり、ティアとティアの祖母クリスが対峙している教導戦開始時点の光景になった。

投影の中の二人は動かない。

動かないどころか風による衣服の揺れすらない。


「あの…全く動いていませんがどうなっているのでしょうか?」


ティアは両手でつかんでいた淵から左手を離し、ペンシィに向く。

絶対に右手は離さないという意思表示なのか、淵を掴む右手に込める力はました。


「まだ動かしてないからね!これはティアちゃんが教導戦する時にアタシが記録したやつで、本の【記録】能力を使ったの。お風呂に来なくても投影できるけど、ここの方が広く見れるし、この球体のおかげで負荷なく動かせるから楽なんだよ!」


そう言ってペンシィは球体をぺちぺちと叩く。


「じゃあ動かしながら問題点を出して、改善方法考えていくからねー!」

「わかりました」


ペンシィが球体に魔力を流すと投影されたティアとクリスが動き出す。

その動きはティアが魔法を放ち、クリスが盾で散らしたところで止まる。


「まずはここだね。魔法を使うっていうのはクリスの意表を突けてるけど、クリスは一瞬で立て直してるね!」

「意表を突けていますか?」

「うん。もう一度動かすからクリスの表情に注目してね」


表情に注目してもう一度見ると警戒から一瞬驚きニヤリと笑うクリスが見えた。

そのニヤけ顏を見たティアは、お風呂に入って温もっているはずなのに寒気を感じてぶるりと震えた。


「じゃあ続けるね。聞きたかったんだけど、使ったことない水魔法にしたのは火だと草が燃えると思ったからかな?まぁ使ったことないって言っても他には火しか使ってないけどね…」

「そうです。また燃やすのは怖かったので…」


ペンシィに背を向け投影された映像に向き直ったティアが答える。

その声は少し落ち込んでいた。


「水の選択はありなんだけどこの量だと前が見えなくなってるからクリスの動きに対応できてないね」

「そうですね。いきなり水がなくなったのでビックリしました。お祖母様の盾より水の方が広い範囲にあるのに吹き飛ばせたのはどうしてですか?」

「それは縦の表面に盾より大きい結界を作って、結界にティアちゃんが出した水を乗せて振り上げたんだよ。クリスがよくやる盾の見た目より広い範囲を守る技的なやつだね」

「結界ですか。なるほど」

「今後はその辺も練習するとして、この場面では風を出してもよかったかもね。風だと視界を遮らないから他のよりも牽制には使えるよ」

「風ですか?」


ティアは淵を両手で握ったまま額から魔力を放出した。

濡れて貼り付いているせいか、いつもより前髪が揺れない。

その放出した魔力が風になるようイメージをすると、魔力の中心から外に向けて強い風が吹いた。雪が降っていれば吹雪と言われるほど強い風だった。


突然の強風でティアの髪が逆巻き、ペンシィがお湯の上で跳ねる。


「な、何もしなかったら魔力の流れのままに風になるから、今度やる時は魔力の流れも意識してね…」

「あ、その、ごめんなさい…」


お湯を払いながら球体に戻るペンシィに向かって謝る。

不可抗力とはいえ体の小さなペンシィを吹き飛ばしたのだ。

罪悪感はある。


「この辺の反省点はこんなものかな〜。ほいじゃ次まで進めるね!」


投影されたクリスがナックルガードを装着しながら跳び上がる。

空中に出した結界を足場に更に飛び上がり、地面に向けて落下し、クレーターができ、ティアが尻餅をついた所で止まった。

ティアは空中を跳び上がるクリスを見て小さな口が開いたままになっていた。


投影自体が魔力で行われているため【看破】で見ても結界の有無はわからない。

戦闘中はクリスを見失っていたティアなので、改めて見るとクリスが何もない空中を跳ねてるように見えたのである。


「お祖母様が腕にナックルガードを付けた後、何もない空中を跳んでいましたがあれは何ですか?」

「あれは空中に結界を出して足場にしたんだよ。ティアちゃんは跳んで乗るのが無理だと思うんだけど、階段状にすれば登れるかもしれないね〜」

「なるほど…」

「ちなみにクリスが付けたのは自前のナックルガードの一つだよ。属性は風で落下する時に風で加速したり、風の影響をなくしたりする便利装備!まぁその辺は今のティアちゃんには早すぎるので、時期が来たらってことで〜」

「わかりました…早く時期が来ることを願っています」


実際は魔法付与ではなく風の精霊による祝福された装備なため便利装備の一言で片付けていいものではないが、ペンシィ的には自力で魔法を付与したり、精霊として祝福することも可能なためどちらも同じという認識になっている。


ちなみに一般的に魔法付与された物は、付与された魔法しか使えず、付与できる魔法の数や質はその物の許容量以内に収めなければならない。

失敗すると込めた魔力が爆発するため大変危険な行為になる。

そのためクリスのナックルガードを魔法付与で再現できた者はどの国でも王宮お抱えになれるほどである。


「ここの反省点は場数を踏まないと無理だと思うので今はクリスの説明で終わりかな!」

「場数ですか?」

「うん。クリスの動きについていけないのは仕方ないとしても、水が跳ね上がった後ボーッとしちゃったでしょ?攻撃が無効化されてもすぐに対処できるようにならないとダメなんだけど、それには経験が必要だからね!」

「わかりました。がんばります」


本日何度めかわからない気合を入れ直したティアを尻目に、ペンシィは球体を操作する。


投影されたティアが立ち上がり、無骨な鉄のロングソードをクリスの頭上に出現させるが、クリスは見ずに弾く。

その後クリスが【気配操作】でティアを威圧した所で止まった。


「あー。ここで記録が止まってるよ〜。ティアちゃんの魔力が大きく乱れたからかな?」

「それは私が本を大きくしたことが原因ですよね?」

「そうだね〜あの時のことは覚えてる?」

「あまり覚えていません…」

「そっか〜。じゃあまずは記録されてるところまでの反省点ね」

「はい」

「と言っても経験不足の一言で済むんだよね〜。出す場所を見るのも、出す数も早さも同じ。何度もやって慣れるしかないかな」

「わかりました」

「で、クリスの威圧なんだけど、これはティアちゃんがクリスの魔力に飲まれちゃってるせいで強く感じたんだよ。対策としては相手の魔力の流れに身を任せて受け入れるか、こっちも魔力を出して対抗するかだね。ティアをちゃんは対抗する方がいいと思うよ」

「身をまかせるのはよくわからないので対抗します」

「うんうん。それでいいと思うよ。で、この投影の後はティアちゃんが本に魔力を大量に流してクレーターより大きくして振り下ろしたの」

「クレーターより大きく…」

「後はクリスが自前で盾と魔力を底上げする服を出して、それで本を止めただけかな〜。ちなみにティアちゃんが出した水を跳ね上げる時に使った盾は【複製】したやつだよ」

「お祖母様は本を開かず出せるのですね」

「それも経験だね〜。まぁ司書になったばかりだしこんなものだよ〜。時間はあるしゆっくりやっていこー!」

「そうですね。ではもう少ししたら出ましょうか」

「そだね〜」


ペンシィが球体を操作して投影を終了した後はゆっくりと浸かる。

ティアは最後までお風呂の底にお尻をつけることなく入り、ペンシィは肩まで浸かっていた。


お風呂から出たティアは、備え付けのタオルで体を拭いた後、クローゼットを出した。

そのクローゼットからお尻の部分に黒猫が縫われた白いパンツと、胸下に黒猫が縫われた肌着を出して着る。

ペンシィは一瞬で司書の服に変わる。濡れていた部分はすべて乾いていた。


「あーティアちゃん。髪は風を出して乾かしてみるといいよ」

「風ですか?」

「そうそう。魔力を出して、髪に向かうよう流れを調整して風にするの。風にしてから向きを調節した方がやりやすいかもね。あと、さっきみたいにならないよう風にするのはゆっくりでね」

「わかりました」


ティアは魔力を出し、一度に全てを風にするのではなく、端からゆっくりと風にする。

渦巻いていた魔力を風にしたため、渦に沿うように風になる。

その流れを意識しながら一定方向になるように調整した後、風が吹いている前に移動して髪を乾かす。


「自分で風の前に行くんだ…」


ペンシィの呟きは風に阻まれてティアには聞こえなかった。


髪を乾かしたティアはクローゼットから黒猫の着ぐるみパジャマを取り出し、袖を通して胸の前のボタンを留めて着る。

籠に入れていたリボンと三角タイをクローゼットに入れ、クローゼットごと本に収納する。

忘れ物がないか確認した後、靴を履いて部屋に戻る。


部屋の前にはお盆に蓋をした状態で夕食が置いてあった。

お風呂で反省会をしていたためいつの間にか夕食の時間が過ぎていた。


扉を開けて中に入り、机と椅子を出してお盆を取って机に置く。

フタを開けると野菜スープ、白パン、サラダ、鶏肉を薄く切って塩焼きにしたものがあった。


夕食を食べながらペンシィと今後の話をする。


「明日は魔法の練習ですか?」

「んー。先にたくさん物を出す練習をするつもり。本を複数出したり、一度にたくさん【複製】してもらおうかな」

「たくさん出す練習ですね。がんばります」


食事を終えたティアはお盆を扉の前に出し、共用トイレで用を済ませた。後は寝るだけである。


部屋に戻ったティアはベッドを出し、布団をかぶる。

慣れないことをしたせいかすぐに寝る。


ペンシィはティアが寝たことを確認して自分の空間に戻る。

嫌々ながら整理の仕事をやるためである。

放置しているとメモリアに怒られるのだ。

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