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戦う司書さんと勇者と魔王  作者: 星砂糖
旅立ちと 封印都市と 勇者と魔王
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Page16「メモリアのお風呂」

ペンシィの口調がおかしかったので修正 2016/9/13

初めての教導戦で祖母と戦ったティアはペンシィと一緒にメモリア館内にあるお風呂に向かうため精霊樹のある中庭を後にする。


メモリア館内には歴代司書がこだわり抜いたお風呂がある。

火魔法で管理された蒸し風呂。

水魔法で水の流れを作り出した波の出るお風呂。

風魔法で頭を気泡で覆い、お湯の中で呼吸ができるようになる水中洞窟風呂。

土魔法で形作った卵型のカプセルに入る卵風呂。

光魔法を使った空間投影による露天風呂。

闇魔法によって周囲が見えない真っ暗な闇風呂。

火水風土をふんだんに使った流れる熱帯樹林風呂。

などなど…その種類は50を超える。


いろいろあるが、その中でティアが入れるのはオーソドックスな風呂だけである。


「ティアちゃんは普段どのお風呂に入るの?」

「普通のお風呂だけです。魔法効果がかかっているお風呂には入ってません」

「そっか〜。じゃあ今日は投影風呂にしよ!いろいろ都合がいいし!」

「………わかりました」

「ん?何かあるの?」

「いえ…大丈夫です…たぶん…」

「そう?」


ペンシィはティアの態度を不審に思いつつも、お風呂に関することなのでそこまで大事ではないだろうと思い放置する。追求するのが面倒なのもある。


二人はメモリア館内に戻り、【お風呂】と書かれたプレートが掛かった扉を開ける。

中は小さな部屋になっていて扉が二つあり【普通のお風呂】と【魔法のお風呂】のプレートが掛かっている。

扉の他には休憩用の椅子が6つ置かれていて、入り口には靴を脱ぐためのマットと、靴を入れる棚がある。


入り口で靴を脱ぎ、【荷物入れ】に入れて中に入る。

普段は【普通のお風呂】に進むティアだが、今日は【魔法のお風呂】に進み、扉をくぐる。


扉の先はさらに小さな小部屋になっていて扉が一つと、扉の横に大きな棚がある。

その扉のドアノブの上には小さな四角い穴が空いている。


ティアは扉横の棚に近づくと引き出しについているプレートを見る。

【熱帯樹林風呂】【滝風呂】【天空風呂】【海底風呂】【海風呂】【山風呂】【猿風呂】【たまご風呂】【治癒風呂】【活性風呂】【毛生え風呂】【ふわふわ風呂】【もこもこ風呂】【草原風呂】【オーロラ風呂】【極寒露天風呂】【灼熱水風呂】【読書風呂】…


ティアが見える範囲では【投影風呂】が無い。


「ペンシィさん。【投影風呂】が見当たりません。高いところにあると思うのですが探してもらえますか?」

「はいよー」


ペンシィは飛び上がり、上からプレートを見ていく。

【投影風呂】は最上段にあり、すぐに見つかった。


「ティアちゃん!ここだよ!」


ペンシィが指を指した棚は、クリスなら届く高さで、クリスの3分の1程の身長しか無いティアでは届かない。


「届きません…」

「うーん。今後のためにいろいろ覚えてもらおうかな!」

「何を覚えるのかはわかっていませんが頑張ります」

「それじゃあね、魔力を出してその魔力が手になるようイメージしてみて。その時、その魔力の手が棚を開けることができることもイメージしてね!」

「わかりました」


ティアは額から魔力を出し、右手で引き出しを引くイメージをした。

するとぼんやりとした、辛うじて手に見える形になる。

右か左の区別はつかない。


その手っぽい何かが引き出しの取っ手に指らしき何かを引っ掛けて引き、引き出しを開ける。


開けた引き出しの中に手っぽいものを入れて中の物を取り出そうとするも、上手く握れないのかガチャガチャと搔き回すだけだった。


「取れません…」

「見えないもんね〜。そういう時はもっと魔力出してその流れを【看破】で見るといいよ!中に入ってる物の隙間を魔力が流れて形がわかるから!」

「わかりました…やってみます」


手っぽい何かの先から魔力を流し、それを【看破】で見る。

ティアの目には引き出しの中に流れた自分の魔力の間に細長い長方形の板がたくさん見える。

それを一つ魔力の手で掴み自分の手元に持ってくる。

【看破】で手を見ることで少し操作が上手くなったようだった。


「取れました!」


取れたことに嬉しくなったのか笑顔のティアは、取った長方形の板を右手で握りペンシィに見せる。


「うんうん!よくできました!」

「はい!」


それを見たペンシィも嬉しくなり褒める。


「じゃあそれ刺して入ろっか!」

「はい…」


ティアが棚から取り出した細長い板は白色で、黒い文字で【投影風呂】と書かれていた。

それをドアノブの上に空いている穴に差し込み、回す。

このドアは棚から取り出した板によって開いた先が変わる物で、異空間にあるお風呂に繋ぐためのドアである。

魔法効果のかかっていないお風呂も同様のドアで行き先を変える。

ちなみにティアが気落ちしているのは無視である。


扉の先、目の前には二枚式の横にスライドする扉がある。

右側には4行3列の木の棚と洗濯物を集める箱と、体を拭くためのタオルが積まれた台がある。

棚の中に編み込まれた籠が入っており、どこにも着替えやタオルが無いことを見ると誰も入っていないようだ。

ティアはスライドドアに近い棚の一番下の籠を引っ張り出し、服を脱ぎだす。


頭を傾けて黒いリボンしゅるっと解く。

テールが解け縛られていた髪が後ろに流れる。

解いたリボンを綺麗に折りたたみ籠の奥に入れる。

三角タイから留め具を外し、リボンの隣に置く。

留め具の絵も本と羽ペンになっていた。

留め具を外したタイの右側を引っ張り、襟から引き抜く。

引き抜いた三角タイを折りたたみ、留め具の横に置く。

Vネックベストとセーラーブラウスを脱ぎ、洗濯箱に入れる。

ベストとセーラーブラウスは教導戦の影響で濡れていた。

ベルトの留め具を外し、スカートを脱ぐ。

ベルトの留め具の絵も本と羽ペンになっていた。

スカートも洗濯箱に入れる。

スカートは尻餅を付いたせいでお尻の部分が土で汚れていた。

壁に左手を付き右足を曲げ、後ろ手にニーソックスのつま先を掴み、引っ張る。

つま先を掴んで引っ張るだけでは脱げなかったので、脱いだ部分を掴み再度引っ張り、足から抜く。

手を入れ替え左足も同じように脱ぐ。

脱いだニーソックスは洗濯箱に入れる。

濡れて張り付いたキャミソールを一息で脱ぐ。

黒いペンギンが縫いこまれたパンツを脱ぎ、キャミソールと一緒に洗濯箱に入れる。


裸になったティアは扉を開き中に入る。

ペンシィはパッと光ると裸になった。精霊は便利である。


入ってすぐ左には石鹸と体を洗うための薄い布が置かれた棚があり、中央には円形のお風呂がある。

お風呂の周りには桶が置いてあり、お風呂の中央には球体が突き出ている。

この球体が周囲に投影を行い、周囲の風景を変えて楽しむお風呂である。


石鹸と布を手に取りお風呂の淵に近づく。

淵に着くと近くにある桶でお湯を掬い体にかける。

肩から流れ、平らな胸を越え、ぽっこりしたお腹を濡らし、足へと流れる。

濡れた背中に髪が張り付く。

体を濡らした後は髪にも掛け、濡らす。

前髪から垂れた水が平らな胸に落ちる。


全身にお湯をかけたら石鹸を使って髪を洗い始める。

メモリアに住む司書達は体を洗ってから湯に浸かる決まりがある。

これは過去の司書が旅をした結果決まったもので、メモリアには同様に様々な決まりがある。


泡でモコモコになり、髪先まで洗えたことを確認すると、泡が入らないよう目を瞑り息を止めて洗い流す。

何度かお湯を被り泡を落とすと、次は体を洗い始める。


泡のついた布で手先から腕、首、胸、お腹、背中、股、足と上から下へ洗っていく。

最後に顔を洗って終わりのようだ。


体を洗い終わったティアは淵から湯船を覗き込む。


「入らないの?」

「…深くないでしょうか?」

「ここは座って景色を楽しむお風呂だから深くないと思うけど…もしかして泳げないの?」

「泳げません…魔法のお風呂は深いので怖いです」


ティアが普通のお風呂しか入らないのはそういう理由だった。


「ここは大丈夫だよー!」

「わかりました…」


ティアはしぶしぶといった様子で、淵に手を付きながら左足から入る。

立ったままで臍までの深さだった。

大人であれば座って丁度いい深さだが、ティアが座ると顔まで浸かってしまう。

なのでティアは淵を掴み膝立ちになる。

上から見ると透き通ったお湯の中の小ぶりなお尻が見える。

ペンシィはお湯に肩まで浸かり、ふわふわと浮いている。


「そういえば、なぜこのお風呂を選んだのですか?」


淵に掴まりながら首だけペンシィに向ける。


「ここの投影機能で記録した教導戦を流して反省会するためかな」

「そんなことができるのですね」

「できるんです!でもまぁ、もうちょっとゆっくりしてからやろうか」

「わかりました」


ペンシィはお湯に浮かびながらのんびりとしている。

ティアは淵に顎を乗せて目を瞑りゆったりとして反省会を待つ。

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