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戦う司書さんと勇者と魔王  作者: 星砂糖
旅立ちと 封印都市と 勇者と魔王
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Page11「祝福の効果 その3」

「じゃあ次は盾!盾は【気配操作】だね!対象に魔力を込めて存在を大きく見せて威圧したり、逆に小さくして隠れたりする能力だよ〜」

「気配…よくわかりません」

「ですよね〜。じゃあまずは確認!今のティアちゃんは魔力を使おうとしていないけど身体を魔力が覆ってるのはわかる?」


そう言われて自身の身体や手を見回す。

何も見えなかったティアは集中して【看破】を強めた。すると薄っすらとした霧のように見える魔力が見えた。

その魔力はゆったりとした速度で身体の周囲を回っているように見える。


「この霧みたいなものですよね?特に何も意識していませんが動いています…」

「それが魔力だよ〜。魔力を感じれる人がティアちゃんの近くに立ったら魔力量がすごいことに気づくぐらいには漂ってるよ。気配もそんな感じで、生命力ややる気に満ち溢れてると気づかれるかな〜。ちなみにアタシの魔力は見える?」

「えっと…」


ティアは集中してペンシィを見つめるが何も見えなかった。

実際には魔力の膜で身体を覆っているのだが、【看破】に不慣れで、魔力や魔法の知識が無いティアは気づかない。

また、何も見えていないのに、目の前に居るのに居ないような不思議な感覚を覚えた。


「何も見えません」

「見えないかー。他にはなにかある?」

「ペンシィさんが目の前に居るのに本当にそこにいるのか分からなくなる不思議な感覚があります…」

「ふむふむ。じゃあもう一度見て〜」


再度ペンシィを見ようとしたティアは驚いた。

さっきまでそこに居ない感覚だったのに、いきなり存在感が増した。

ペンシィに視線を移すと、掌に乗るぐらいの身長のペンシィが見えているサイズより大きく感じたのである。

慌てて【看破】で見ると、薄い緑色の魔力がペンシィを覆っていることがわかった。

その魔力はペンシィと同じ形をしており、腕を動かすと腕に合わせて、魔力でできた腕も同じように動いている。


ティアに向けて手を向けるペンシィ。

その腕を覆う魔力がティアの目の前に迫る。


「ひっ!」


その威圧感に耐え切れず、ぎゅっと目を瞑り、頭を抱えてうずくまるティアと、それを見て慌てて魔力を抑えるペンシィ。


「あぁ!ごめんごめん!いきなりでびっくりしたよね!?大丈夫だよ!アタシは何もしないよ!!」

「いえ…迫ってくる時の圧迫感が、お祖母様のお説教の時に似ていたので…とっさに…」

「えぇ!?クリスはティアちゃん怒る時に【気配操作】使うの!?」

「さ、先ほどの威圧感が【気配操作】なのですか?」

「そうだよ!最初にアタシが居ないような感覚になったのが気配を小さくした時で、ティアちゃんが蹲った時は気配を大きくしてたんだ〜」

「そうなのですか…やる前に説明が欲しかったです…」

「それはごめんね〜」


少し涙目のティアと頬を掻きながら苦笑いしているペンシィ。

出会って1日も経っていない二人の距離感はまだ埋まりそうにも無い。


「えっと…切り替えてやり方の説明ね!【気配操作】は対象を魔力の膜で包んで、対象が発してる魔力や気配を包んだ魔力で抑えるの。この時の膜に込めた魔力量で膜の厚さが変わるから多めにつぎ込むといいよ。膜は薄い方が膜の魔力に気づかれにくくなるんだけど、薄いと動いた時に維持できなくなるかもしれないから注意が必要だね〜。薄い膜の時はゆっくり動くって感じ!」

「はい」

「逆に気配を大きくする時は小さくする時と同じ手順で膜を張ってから、膜の中に魔力を流して膨らませる感じ。別に膜なしでやってもいいけど、魔力の維持が大変だからオススメはしないからねー。というわけでやってみよ〜。まずは右手を膜で覆ってね〜。膜を作る時は毛布や紙をイメージするといいかも?」

「紙や毛布ですね。わかりました」


そう言うとティアは魔力を溜め、右手に流す。


いつも使っている毛布をイメージしながら右手から魔力を放出しようとするも、うまく出せなかったティアは、額から放出して右手を覆った。

もちろん前髪は捲れ上がる。

納得した素振りを見せつつも、額から魔力を出すのに少し抵抗感があるティア。

6歳といえど女の子なのである。

魔法を使うたびに前髪が吹き上がるのは今後の課題として心に留めている。


覆った魔力は霧状ではなく、布っぽい魔力だった。

薄っすらと白いため、白い手袋をつけているようにも見える。


布状の魔力で覆っているため、ティアの周囲を漂う魔力は右手を部分だけ避けるように動いている。


「これでいいのでしょうか?」

「ん〜おっけー。次は右手の膜を膨らますイメージで魔力を流してみて〜」

「はい」


再度魔力を溜めて額から魔力を放出し、右手の膜の中に魔力を流し込む。

膜が手の形のまま膨らみ、存在感が増す。


魔力の手で本に触れるも本は動かず、避けるように魔力の手が形を変える。

魔力の手は本に触れられないが、ティアの手は本に触れることができた。


本から手を離すと、魔力の手は元の形に戻った。


「その手だと物には触れないよ〜。気配を強めて相手を威圧したり、逆に薄めて隠れるのに使うんだよ〜。慣れれば全身覆うことができるようになるけど、【看破】を使いながら目を覆うと見えづらくなるから注意してね!薄い膜ができるようになったら同時に使えるようになるから頑張ってね〜」

「わかりました」

「じゃあもっと膜に魔力を込めて込めすぎた時のパターンもやってみようか!そんな顔しないで!ゆっくり流せば大丈夫だから〜!」


ペンシィの言葉を聞いた瞬間、ティアはとても嫌そうな顔をしたが、仕方なく魔力を込め始める。


右手を覆う魔力の膜は、いつしかティアの身長を超える大きさにまで膨らんでいた。


「ま、膜にどれだけ込めたの…」


膨らんだ手の威圧感に少し恐怖を感じるペンシィに気づかないほど集中し、ゆっくりと魔力を流し込むティア。

ペンシィからすればティアの身長の時点で自分の何倍もの大きさである。

巨大な手が目の前にある様は、いつ握りつぶされてもおかしく無いという錯覚まで生まれている。


しばらく経過して、天井に届きそうなぐらい膨れ上がったところで指先から魔力が漏れ出し、急速に萎んでいく。

込めていた魔力が溢れきると、膜も維持できなくなり消えた。


「ゆっくり込めるとこんな感じになるけど、一気に込めると破裂するから注意してね〜!」

「破裂するのですか…わかりました。注意します…」

「うんうん。ティアちゃんは飲み込みが早くて楽だよ〜。あと戦闘系であるのはナックルガードとグリーブの【物質破壊】なんだけど、実はさっきの膜でやってもらったのと同じ感じです!」

「え?先ほどと同じ……魔力を込めて破壊するということでしょうか?」


ティアが右に首をかしげる。

ペンシィはティアに合わせて傾く。


「その通り!物質ごとに魔力の通りやすさは違うんだけど、やり方は限界より多く魔力を流して破裂させる感じ!」

「それだととてもたくさんの魔力が必要になってくると思うのですが…難しくないでしょうか?」


今度は左に首を傾げる。

ペンシィも傾く。


「ティアちゃんの場合はたくさん流せば壊せるけど、普通は一点集中だね〜。一箇所に魔力を集めまくって、その一点だけ壊すんだよ〜」

「一点だけですか?」


また右に首を傾げるティア。

ペンシィはそれを予想して先に傾いていた。


「そう!例えば剣だったら刃の根元に集中してポッキリと壊したり、杖だったら杖先の魔石を壊したりかな。場合によっては岩や地面を砕くんだけど、ティアちゃんにはまだまだ無理だね〜」

「最初はわかりますが…岩に地面ですか……そんな能力必要なのですか?」


また左に首を傾げる。

今度はペンシィも首を傾げながら傾く。


「う〜ん。できないよりできる方がいいって感じだねー。司書は何かと苦労するからできることが多いのはいいことなんだけど、ティアちゃんは数が多いからね頑張らないとだね!」

「そうなのですか。頑張ります!」


胸の前で拳を握り意気込むティア。


「じゃあ実践したいんだけど、壊していいものなんて無いよね?」

「えっと…無いです……」


本を開き、倉庫にしまった物の一覧を見ながらティアは答えた。


「じゃあ戦い方を覚える時に一緒にやっちゃおうか!やり方はさっきの膜に魔力を流すのと同じ感じだから大丈夫だよ!一気の流す違いはあるけどね!」

「一気にですか…少し怖いですが頑張ります!」


ペンシィはティアのモチベーションが高いうちに叩き込み、さっさと楽になろうと思った。


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