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戦う司書さんと勇者と魔王  作者: 星砂糖
旅立ちと 封印都市と 勇者と魔王
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Page10「祝福の効果 その2」

「次は槍の【看破】ね!」

「魔力の流れを見るのに使っている能力ですね?」

「そうだよ!原理はティアちゃんの魔力を周囲に流して、変化や魔力反応や違和感があれば、ティアちゃんの魔力に干渉して見えるようにするの」

「私の魔力を周囲に流しているのですか…その中で私の魔力の塊が見えたのは、魔力の変化が起きたからということでよろしいでしょうか?」

「うん!ティアちゃんの魔力が周囲を漂っていて、急にティアちゃんの中から魔力の塊が出てきたから見えたんだよ。武器に流してる魔力が見えたのも同じ理由だよ。慣れればティアちゃんの中を流れる魔力や、他の人の魔力も見えるようになるよ!」

「わかりました。ところで【看破】は先程の魔力破壊とは違いずっと機能するものなのでしょうか?」

「違うよー。魔力破壊と一緒で魔力があれば使いたい時に使えるやつなんだけど…慣れてないから無意識で発動しているのかもね」

「そうなのですか?」

「発動方法は警戒とか、興味があって周囲に意識を向けるとか、【看破】を意識しながら目に魔力を集めるとかだね。記録だと罠を警戒したり、相手の弱点を突くことを意識したり、魔法の流れを見るためにで使ってたんだけど…心当たりある?」

「その中だと興味ですね。ペンシィさんに何を教えてもらえるのかドキドキワクワクしていますし、いつもより周りがよく見えている気がします」


ティアはクスクスと笑いながら答える。

ペンシィは頼られていることにニヤニヤしている。


「ふ〜ん。しばらくしたら慣れてどうにかできるようになるよ。ティアちゃんの魔力が多いから問題ないし、むしろ祝福の説明では発動してた方が何かと楽かなぁ〜」

「わかりました。ところで、なぜ【看破】で罠や弱点を見抜くことができるのですか?」

「んー。例えば隠し扉があったとして、隠し扉の周囲の壁ごと【看破】で魔力を流すと、普通の壁は特に違和感なく表面を流れるんだよ。でも、隠し扉の場合扉が開く分の隙間があるから、そこに魔力が流れると、壁の向こうに魔力が流れちゃうよね?それが違和感になるんだよ。わかる?」

「なんとなくわかります…」

「罠は実際に目の前に無いと説明しづらいな〜。で、弱点なんだけど、弱点って言うより魔力が集まっている部分や、逆に魔力が薄い場所を狙うって感じなんだけど…わかりづらいよね?」

「そうですね…」


ティアとペンシィは苦笑している。


「う〜ん。さっきティアちゃんがナイフに魔力を流してたけど、最初は腕に魔力を流したよね?」

「はい。ナイフは手にありましたから、腕を通さなければ流せません」

「そうだよね!この時相手がいたとして、看破を使ってたらティアちゃんが腕に魔力を流してたのが見えるの。だから、腕に流した魔力で何かくるかもって警戒できるよね?」

「そうですね。見えていれば警戒できます」

「でしょ!で、魔力は力をぐって込めるだけで流れるものだから相手の動作を読むのにも使えるし、逆に意識をしていないと薄くなるんだよ。だから、そこを狙えば隙をつけるの。後は、怪我をしてる部分は流れづらくなるから、見えれば狙えるよね?そんな感じ」

「なるほど…わかりました」

「じゃあティアちゃんが納得したところで!実践だよ〜!さっきと同じようにナイフを出して、魔力を流してね〜」

「わかりました」


ティアは【魔力破壊】の実践で使用したナイフを出し、魔力を流した。

二度目だが、まだ慣れていないため魔力を流すのに2回失敗した。


「また水球を出すから切ってもらうんだけど、今回は切る前に【看破】で水球を見て欲しいんだ〜。何か見つかったら教えてね」

「切る前に水球を見るのですね。わかりました」


ペンシィが水球を出す。

ティアは胸の前で手を握り、水球をじっと見つめる。無論ナイフを両手で握った状態なので刃は顔にの近くにある。


「ティアちゃん!そのナイフの持ち方が危ないよ!」

「あ、ごめんなさい!」


ナイフを右手で持ち直し、刃を下に向ける。

ペンシィはほっと一息吐いた。


「どうかな?何か見える?」

「う〜ん。さっきと同じに見えます…」

「じゃあ、水球の周りに魔力を放出してみて!その時水球に集中すること!あ、出す量は剣に込めた魔力の半分くらいね!」

「わかりました」


ティアは目の前にある水球に向けて魔力を放出するイメージをしながら体内の魔力を集める。

集めてから気づいた。

さっきは剣に魔力を流すため、握っている手に向けて魔力を流した。しかし、今回の流す対象は「目の前に浮かぶ水球」なので、どこから放出すればいいのかわからなかった。


本来であれば空いてる左手を水球に向け、掌から放出するのがベストだが、ティアにそこまでの余裕はなくなっていた。

先ほどナイフに込めた魔力が溢れたことが脳裏をよぎったからである。


決められないことに焦ったティアの集中が途切れ、額から魔力が放出された。

魔力の放出により前髪が吹き上がり、触り心地の良さそうな額が露わになる。

迷っている間も魔力を溜め続けていたため、放出された魔力は剣に込めた魔力の数倍になっていた。


ティアの前には水球、水球の向こう側にはペンシィが居たので、放出された魔力は水球を弾け飛ばせた。ペンシィを巻き込んで。


「なんでおデコから…?」


空中で何回転もしたペンシィがフラフラになりながら、ティアの前に戻る。


「えっと…その……どこから魔力を出せばいいかわからなくなって…迷っていたら勝手におデコから出ました…」

「あーごめん。アタシがちゃんとアドバイスしてないせいだね〜。こういう時は空いてる手を使えばよかったかな〜。まぁ、適量を出せればどこからでもいいよー。ティアちゃんの場合、両手が塞がることが多そうだからおデコからでちょうどいいかも?」

「おデコでいいのですか?」

「ティアちゃんは体も小さいし、力もないからね〜。ナイフも両手持ちでしょ?放出するために片手持ちにしたらバランスが崩れて上手く戦えなくなるよ〜。おデコから魔力を出せば両手で持ったままで戦えるし。魔力操作に慣れたらもっと細かいところから出せるようになるから、今はおデコにしよう!」

「なるほど…わかりました。おデコから魔力を出すようにします。では、続きをお願いします」

「ん、ほいっと」


ペンシィは水球を出した。

ティアはペンシィが笑いを堪えていることに気づいていない。

おデコから魔力を出すことでどうなるかわかっていないティアは納得しているが、魔法を使いこなすペンシィからすれば、面白いことになるという確信があったが、今は練習に集中する。

肩を震わせながら。


ティアは手にしたナイフの刃先から魔力をゆっくりと放出し、手放した。

ナイフは床に落ちる前に消えた。

ナイフの存在時間がギリギリだったので、【魔力破壊】の時と同じ失敗をしないように気をつけていたティア。


ナイフが消えたことを確認したティアは同じナイフを複製して魔力を込めた。


再度【看破】を使うために魔力を溜めて額から放出する。

そよそよと前髪が揺れる。


今度はゆっくりと放出し水球の周囲を覆う。

すると水球の中で光る部分が見えた。

光っているのは水球の中央で、大きさは水球全体の10分の1以下の淡い緑の光を発している。


「何か光っています。なんでしょうか?」

「お〜見えたんだね〜。その光ってる部分は魔力が集まってるところ。この水球の場合は水を維持するためにある部分だね〜。で、熟練の術者だった場合はこうなるんだよ」


ペンシィが水球に向けて手をかざすと光が薄く広がり、やがて見えなくなった。よく目を凝らすと薄っすらと緑色になっているが、ティアは気づかなかった。

「薄くなって消えました…」

「綺麗に分散したらこうなるの。切られても大して影響がなくなるくらい薄いから、どこを切られても水球は維持できるよ。試しに切ってみて〜」

「はい」


ティアは両手で持ったナイフを斜めに振り下ろす。水球は真っ二つになったが、それぞれ消えずに残っている。


「二つに分かれて残ったままになっています!」

「上手く魔力を操ったらこれができるようになるよー。じゃあ次はこう!」


二つの水球が一つになり、グニグニと蠢きながら人型になった。

光は頭と心臓部分にあり、二つを薄い線が繋いでいる。

身体中細い線が巡っているが、慣れていないティアにはやっぱり見えていなかった。

目の動きを見て見えていないことに気づいたペンシィだったが、最初から詰め込みすぎるのも良くないと思い指摘しなかった。


「これが大抵の人を看破で見たときの魔力の見え方。次は魔法を使おうとしてる人ねー」


心臓部にある光が少し弱くなり、右腕を模した部分へと流れる。

流れた光は手に集まり、その手をティアに向けた。

それをじっと見ているティアに向かってピュッと水を飛ばした。


「わっ!?」


ティアの頬を濡らす程度の量だったが、濡れたことに変わりはない。

ペンシィを拗ねた目で見る。


「あははは!ごめんごめん!じっと見てるティアちゃんを見てたらどうしてもね!実戦だったら大怪我してたんだし気をつけることを学んだってことでどうかな!?」

「む〜。また今度何か作ってもらいますから!」

「りょうか〜い。じゃあ最後にさっきの光を切った場合どうなるかやってみようか!」


言いながら人型から球形に戻すペンシィと、無言でナイフを構えるティア。

水球の中の光はティア側に寄っているため、軽い力で切れそうだった。

それに気づいたティアはナイフを右手で持ち、左から右に振った。

お世辞にも鋭いとは言えない動作だったが、刃は光を切っていた。


切られた光からペンシィの魔力が漏れ出し、水球が萎んで無くなった。


「魔力が集中しているところを切って乱すと、魔法が維持できなくなるから覚えといてね」

「わかりました」

「次はナイフは使わないから倉庫にしまっといてー。時間が経つと勝手に消えるから」

「はい」


ティアは[荷物入れ]にナイフを入れた。


ナイフは1複製してから1時間後にひっそりと消えた。


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