#07
(やばいやばい、早く帰らないと~!)
放課後、真白は全速力で一階へと続く階段を駆け降りていた。
何故こんなに急いでいるのか。実は、今日四時半頃から、真白の好きなドラマの再放送があるのだ。只今の時刻は四時過ぎ。急げば間に合う時間だ。こうなったのも、真白が宿題を忘れたせい。居残りさせられていたのだ。まぁ、自業自得だろう。
降りの階段は、昇りに比べ断然楽だ。スイスイ降りる事ができる。一歩踏み外すと、大変な事になるのだけれど。
そんな事を考えながら、軽々しく降りる。すると、何があったのか、真白の体がいきなり前のめりになった。明らかに、不自然な格好で。やばい、と思った時には頭の中は真っ白だった。
固く閉じた目を、ゆっくりと開ける。痛くない。どうやら転ばずにすんだようだ。すると、何かが腹にあたってる感覚がした。恐る恐る見ると、人の手があった。それも、ガッチリとした男の腕。手を辿っていくと、顔に辿り着き、真白の顔つきが一気に強ばった。
「危ねぇぞ」
そう言って微笑んだのは、あの変態男子生徒だった。
(変態ぃ!)
真白は、物凄い勢いで彼から離れる。すると、彼は小さく笑った。
「ははっ、凄い逃げ方。真白の事助けてやったのに」
「確かにそうだけど! ……って」
真白は、何か違和感を感じた。それは、彼の言葉にあった。
「今、真白って……」
「呼んだよ。ダメ?」
(ダメじゃないけど、なんだか馴れ馴れしい……)
憮然とした面持ちの真白。そんな彼女を見て、彼は首をかしげた。真白は「ご自由にどうぞ」と彼に背を向ける。
「帰るのか?」
「勿論っ」
そう言って、一歩踏み出す真白に、彼は悪戯な笑みを浮かべた。背を向けている真白には見えないのだが、それは何かを企んでいるようなものだった。
「俺も一緒にいい?」
「なっ……やだよ!」
名前もクラスも知らない、ましてや昨日パンツを見られた変態男と一緒に帰ってたまるか。そう思い、真白は全力で拒否した。すると、彼は諦めてくれた。
何故、彼は真白にあんなに構ってくるのだろうか。不思議に思いながら、急いで家まで走った。