#06
「最悪だ最悪だ最悪だ……」
ボソボソ呟きながら、登校完了時刻ギリギリに真白は学校に到着した。真白の周りには、負のオーラが纏っている。
昨日の、見知らぬ男子生徒に告白され、パンツを見られた事件。告白された事がもう大変なのに、その後事故だとはいえパンツを見られるなんて。せめて、もっと可愛い柄のを――
(――って、そうじゃないでしょ)
パンツを見た事は、しょうがないのかもしれない。あれは、確かに事故なのだ。だが、問題はその後だ。彼は、真白のパンツを見て何て言っただろうか。
(「美味しそうなイチゴだな」……って、最悪! 変態!)
見ず知らずの彼を呪ってやりたい衝動に駆られた。だが、言ったとおり名前も知らなければ、クラスも知らない。もしかしたら、学年すら違うのかもしれないのだ。まぁ、もうできれば会いたくないものだ。
(そんな事より、昨日見たあのポーチ可愛かったなぁ)
『昨日見たあのポーチ』とは、帰り際に、街中のショーウィンドーに飾られていたポーチの事だ。
(なにより、色が最高だよね。白と青のチェックとか、私と陽ちゃんのイメカラ――)
「――今日のパンツは何柄?」
「白と青のチェック――って!」
真白はわあああと騒ぎながら、声がした方を振り向く。するとそこには、ふむふむ、となにやら頷いている昨日の変態男子生徒がいた。
「白と青のチェックと……」
「違うから! マジで違うから!」
呟く彼を、全力で否定する。本当に違うのだ。ちなみに、今日はキャラクターもののパンツである。
「じゃあ、何柄?」
「教える訳ないでしょっ」
どんだけ真白のパンツの柄を知りたいのだろうか。正真正銘の変態だ。というか、何故か会話になっていた。
「いいじゃん、ケチ」
「ケチも何もないっ」
しっしっ、と真白は彼に向かって追い払うような仕草をする。すると、彼はフッと笑って近くにいた女子生徒に軽々しく声をかけた。そのまま、先へと進んでいく。途中で、その彼女の友達と思われる女子生徒達にも声をかけながら。
(……なんだよ、タラシじゃん)
真白は彼に、軽蔑の眼差しを向けた。