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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

忌羅

作者: 夜桜李桜

 どうも、キアラという名でログインしてますが、本当は「夜桜 李桜」という名の者です。

 此の「夜桜李桜」の文集は結構続かせますので、其処は宜しく。

 序章


 私は、人で在る事を止めてしまった。人と云う存在を、上手く理解できなかったのだ。

 先刻届いた一通の手紙を、姉に見せる。姉は一言「私には関係無い」と手紙を私に渡し、其の儘に階の自室へと行ってしまった。

 私は其の手紙をやっと見て、姉の云いたい事が解った。手紙の内容は、姉を嫁に取りたいと云う、男性からの懇願の手紙だった。

 私は無断で其の手紙を破り、傍にあった塵箱に捨てた。姉が私の前からいなくなると考えると、悪寒が走ったのだ。姉は私の唯一の家族。両親は無理心中で、血の繋がっている親族達も同然。姉は其の無理心中から見事生き残り、残された私と共に今日まで生きて来たのだ。

 今は午前一時。善い子は就寝の時間だと大人は云うのだが、其れを云ってくれるのは最早誰もいない。

 私は椅子に腰かけ、テーブルに置いてあった一葉の写真を見る。写真には、幸せそうな少女とその姉らしき女性、美しい両親が写っていた。少女は一見幸せそうな表情だが、其の裏は果たして、私の知るようなものなのだろうか。



 一話


 俺は、今日も亦、命を削られる。

 あれから姉は、嫁に貰われていった。そして昨日、気を病んだ夫との心中を図り、首を斬って死亡した。

 私は、涙を零す事は無かった。泣きたいのに泣けないのは、私が冷たい心の持ち主だからか。其れとも、私が人で無くなったからか。

 姉は最期に、私に一言残したそうだ。唯、「約束を忘れないで」と云い、死んでいったと云う。

 唯一の家族が死んで、私の心は空っぽになった。姉の墓は作られることは無く、唯遺体のあった場所に、無数の花束が添えられた。

「姉さんは、嘘吐きだ」

 私は無意識にそう云った。そしてはっとして口を塞ぐ。空を泳ぐ鳥達が、私を嘲笑う様に次々と泣き叫んでいく。

 私はその場に蹲り、姉に対して「嘘吐き」と云った事に、激しく歓喜した。二人ぼっちの私達は、何れかは何方かが先にいなくなってしまうのだ。姉は今頃、天国とやらで楽しく暮らしている事だろう。一方、残された私は、五月蠅くて汚い此の世界に留まり続けなければならないのだろう。

 然し私は、どんなに周りから非難されようとも、一族の名誉を誇りとして心に刻みながら、前へと進む事を決意した。

「おう、心空じゃねぇか」

 不意に私に声を掛けたのは、嘗て友達だった明楽だった。嘗てと云っても、一度裏切られただけだ。

「何の用?君には興味無いんだけど」

 私は、態と冷たく言い放った。明楽は私の腕を掴んで「そう冷たく云うなよ」と、耳元で呟いた。普通の女子ならば此処で赤面するのだろうが、私は違った。明楽に対する怒りが増し、今にも縊り殺してしまいそうな勢いだった。

 明楽は私の殺気に気付いたようで、ばっと飛び退き、何時の間にか傷付いていた自分の頬に手を当てる。

「ふぅん、お前、未姉の事について恨んでんのか」

 明楽は私の年上の男性だ。しかも、姉の元夫。姉に、嫁に取りたいと云い寄って来た男性だった。姉は彼の事を思って自害したと云うのに、彼は自分だけ助かって、今ものうのうと私の前に平然と居る。

 私は憎かった。姉を帰して欲しいと何度も懇願したのに、聞く耳を持たず、姉を自害させてしまった、憎き相手。彼の名も、顔も、身体も、存在自体が私に憎悪を呼び起こさせる。

「早く帰って。私はもう眠りたいんだ」

「お前は如何して俺を見ない?莫迦にも程が有るぜ?」

 彼は少々自意識過剰だ。姉の次には私に云い寄って来て、此れでもう十五回目だ。

「なぁ、いい加減俺に決めたら?俺なら、お前を好いようにしてやるから」

「姉さんの時もそう云って、騙したよね?」

 明楽は唐突に私の髪を掴み、亦しても私の耳元で囁く。

「勘違いするなよ。俺は唯お前の家の財産が欲しいだけだ。姉の時だって、俺がこう云った途端お前に放そうとしたから、自害に追いやっただけだ」

 私の怒りは頂点に達した。彼の耳元で、大声で「お前に何が解る!」と言い残して、私は其の場から逃げるように立ち去って行った。



 二話


 私は、あれから沢山泣いた。泣いて泣いて泣き疲れて、何時の間にか眠り、起きた時にはもう朝日が昇りつめていた。

 彼と会うのも段々恐ろしくなり、私は此の日から外の世界と接しなくなった。

 然し、明楽は私の家の場所を知っている。

「嫌だ・・・嫌だ・・・」

 何度も否定する。自分の存在価値を、何度も否定し、死のうとする。

 然し一向に死ぬことが叶わない。姉が、両親が死なせて呉れないのか。涙が再び溢れ、床にシミを作って行く。扉が開く音がし、私は壊れた機械の様に後ろを振り返った。

「今日も可愛いなぁ、心空よぉ」

 彼だった。私の憎く、今ではもう恐ろしい対象になってしまった明楽だった。

 私は近くに立てかけてあった大鎌を手に取り、彼が財産探しに没頭している背中を刺した。

「がはっ・・・!?」

 彼は力なく倒れて行く。彼の鮮血が床に染みて行って、次第に赤黒く染まって行く。

 私は如何しようも無く、彼が死ぬのを楽しんだ。何時からだろうか。私がこうやって人を殺すのを喜ぶようになったのは。

 矢張り私は、人では無いのか。きっとそうだろう。そうでなければ、きっと今頃。私は死んでいるかもしれない。

 此れは一種の自己防衛なのだ。市警が来る前に早く彼をもっとズタズタに引き裂いて、何処かに捨てなければ、私が罪に問われることになる。

 私の名は、心空。今は亡き『夕立』一族の最後の生き残りにして、其の名を捨てた者。

 此れは日記だ。「私」とは別れ、「俺」となった俺の御話。

如何だったでしょうか?お気に障りました?

初めての残酷なシーンが多かったので、結構キツかったです。

どうぞ、御贔屓に。

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