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義政の首
初めて会ったときから気に入らなかった。
小山小四郎義政。
いや、昨年入道して永賢と名乗っていたか。
その顔が、今、目の前にある。
自害後五日にあって、やや傷み始めた首級。
目の下には黒々とした隈が縁取られ、己れの死を言立てる。
剃髪した頭部は幾分青味がかかっている。髪は人の死後も伸び続けるというが、その証しか。それとも激しい戦いのただ中にあって、手入れが行き届かなかったためか。
義政の首は鷲城の南庭で実検が行われ、氏満はそれを座敷から眺めていた。
変わり果てた姿。
閉じられた目も口も、二度と開かれることはない。
「もう良い、下げよ」
家臣に命じる。
――京までもつかな。首は腐らぬよう櫃に酒を入れて浸さねば。
首級は義満に送る。
四百年前の平将門の故事にちなみ。
「まさか己が城で、予に首を晒すなど思いもよらなかったであろうな」
氏満は誰にともなく呟いた。