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地図

 買い物というものは気合いを入れなければならないらしい。


 夕日が沈んできた頃、家に戻った俺は床に座り込み息を吐いた。


 疲れた。仕事よりもしんどいとは思いもしなかった。

 フードコートを抜けてからアパレル関連、家電、家具、食品と回ったが増えていく荷物は想像以上の量だった。


 疲れた体を起こし、着信があったらしい光って自己主張するスマートフォンを弄る。


 件名も本文も無いメールには画像が数枚添付されている。


 例の研究所の見取り図だろう。

 関口研究所一階と上部に書かれた地図だが、これが中々広い。


 まず階段まで連なる一本道の廊下が長い。百メートルほどもある。

 走り切るのにも時間がかかるし、隠れることが可能な場所も少ない。


 長い廊下には役に立つのかすら分からない角が数回と部屋が左右に数個づつ。


 更に画像を変えて分かったことは地下へと続いているらしく、俺が目的としているデータは最下層の一番奥の倉庫に仕舞われているらしい。


 セキュリティを突破しつつ、雫を連れてとなると頭を使わなければならない。


「何それ?」


 風呂から上がったらしい雫は俺の隣に座り、スマートフォンを覗きこんだ。


 ドライヤーで乾かしていないのかぴったりと肌に貼り付いている。


「仕事の地図だ。雫も覚えておけよ」


「難しいの?」


「まぁ、簡単ではないな」


「確率変えようか? ランダムだけど」


 成る程。そんな使い方があるのか。

 仕事の成功率を変えることが出来ればグッと依頼達成に近づく。


 この能力は様々な方向に応用が効きそうだ。


 欲しがる人間が多く存在すると睡蓮さんが言っていたが納得できる。


 どれだけ絶望的な状況でもひっくり返すことの出来る能力とでも表現すれば良いのだろうか。凡人の俺には分からない。


「いや、止めてくよ」


 雫に能力を使わしては他の元保護者の方々と同じだ。

 雫と出会った日の夜、あの時に殺した人間達と同類にはなりたくない。


 俺の返事に対して目を見開いていた雫は満足そうに頷いた。


「珍しいな。でも、嫌な気分じゃないよ」


「そっか。そう言えば雫ってよ、年の割には大人っぽいよな」


 昨日と今日で感じたことだが、服装は勿論、たまに出る言葉が年相応ではない。

 今だって〝嫌な気分じゃない〟と表現したが、普通の中学生がノータイムで返せるようなものではない。


「そうかな? 普通が分からないから何とも言えないよ」


 そんなものか。と、話を区切り、部屋のカーテンを閉めた。


 テーブルの上に紙とペン、先ほど見ていた画面が表示されたスマートフォンを置き、どっかりと座った。


 ペンを持って紙に地図を書き写していく。

 昔からそうなのだが、何かを覚えるときは必ず書いて覚えていた。その習慣が今でも残っているのだろう。


 書きながら、道のり……一本道なのだが、これも習慣で通るルートを組み上げていくが、これ、どうあがいても絶望じゃないのか?


 一本道だから目立つし隠れる場所もほぼ無い。

 これだけの説明で詰みかけなのがよく分かる。


 案外、迷宮化するよりも効率的かもしれない。


「行き詰まってるの?」


「そんなところだ。ま、何とかするよ」

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