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狩人

 殺し合いと喧嘩は別物だ。

 喧嘩は相手を武力で組伏せる。そんな意味合いが強いだろう。


 ならば殺し合いは?

 自己解釈だが、殺し合いは命を賭けたギャンブルだ。


 勝っても手元には何も残らないけどな。


「なぁ、そろそろ本気を出していいか?」


 先ほど雫に言っていた奥の手を使わしてもらおう。

 俺の仕事の為の俺だけの武器を。


「手、抜いてたのかよ……死んだふりとか?」


 純粋に面白かったからだ。クスリと笑い、それもいいな。と言って俺は神経を内側。自分の内面へと落としていく。


 俺は狩人だ。


 強靭な四肢を持った虎だ。


 鋭い爪と牙で狩るのは人間。目の前の男だ。


 体が熱く火照り、目に違和感が走る。

 視力が広がり、手を地面に着ける。違和感は既に体中を駆け巡り、俺は笑った。


 俺の表情は目の前の男には理解できてないだろう。


 下を向いた俺の視界には黒と黄色、白の毛。俺の腕だったものだ。


「……何だよそれ……頭おかしいって……」


 何の理由もなく睡蓮さんが雫を俺に預けるわけがない。

 俺も能力持ち。単純な動物に変身するだけの能力だけどな。


 低く唸った俺は四肢に力を入れ、男に飛びかかった。


 足がすくんでいるのだろう、反応できない男の肩を掴み、押し倒した虎は牙を向いたところで思い止まった。

 そう言えばだ。さっき男は言っていたよな。違う会い方をしたかったと。


 生殺与奪の権利は俺にあるわけだ、いやはやいいこと考えた。


 どちらにせよ俺の変化は十秒程しか持たない。これで勝ちが決まったのは能力を見慣れていないルーキーだったからだろう。


 腕から変化が解けていき、胴体、下半身、顔と順に人間に戻った俺は腰に据えたナイフを男の首元に突き付ける。


「俺の勝ちだな」


「これが噂の能力か。俺の負けだ」


 諦めたのか目を閉じた男にナイフを突き付けたまま俺は背後にいる雫を手招きして呼んだ。


 俺に駆け寄ってきた雫は少し驚いていたが取り乱しはしていない。

 不思議な事象は慣れているのだろう。


「雫、携帯」


「はい。危なかったね」


 雫からスマートフォンを受け取った俺は睡蓮さんに電話をかける。

 いつ寝ているのか、睡蓮さんは数コールで電話に出てくれた。


『帰るまでが遠足だよ』


「いや、遠足じゃないですって。それより睡蓮さん、面接希望ですって」


『面接希望? ふむ……私に命を捧げると』


「命でも何でも捧げるらしいですよ」


 男は今日一番の驚きを表情に現し、それを見ながら俺は通話のモードをスピーカーに変え、男に差し出す。


「睡蓮さん、そのままで話して頂いてもいいですよ。聞こえてますんで」


『そっかそっか。面接希望者さん、聞こえてる?』


「ええ」


 観念したのか男は静かに話始めた。


『名前は?』


「忍足 恭介です」


『よし、採用。名前が言えたら問題ないよ。咲ちゃんの部下ね』


 何とも面接らしくない面接をクリアした男改めて忍足は観念したらしく、乾いた笑いを溢した。


「後で正式な書類を作成しておきます。では、失礼します」


 通話を終了し、スマートフォンをポケットに仕舞ってそこでやっとナイフを脇に捨てた。


 忍足を座らせ、目線を合わせる。


「東山 咲だ。よろしく」


「忍足 恭介です。よろしくお願いいたします」


「敬語?」


「上司ですから」


 どうやら上下関係はしっかりしているようだ。


 ……雫なんて俺にため口だしちゃん付けだし、いやため口はいいんだけど、ちゃん付けは止めてくれないかな。


 無理か。

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