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44話

 夕食も食べ終わった私は、チュニアさんじゃない女官さん、ミーナさんという私や由梨さんと同じくらいの年齢の女性が食堂まで迎えに来てくれて、新しい部屋まで連れて行ってもらうことになった。

 チュニアさんは由梨さん、というか王妃様候補専属の女官さんだから、これからはあんまり会えなくなるかもしれないらしい。寂しくて残念だけど、仕方がない。

 そのかわり、ミーナさんをはじめ、何人かの女官の皆さんが交代で私と一緒にいてくれるって!

 さすがに私は王妃様候補じゃないから由梨さんみたいに専属で、四六時中誰かについていてもらうっていうのは分不相応だからね!

 それにある程度放っておかれた方が気が楽だし。

 うん。楽だし。

 らっくらく~。

 


 さ、寂しくなんて…あるんだからね!



 うわーどうしよう。今まではネコの姿だったから1人きりになっても、ちょっと出かけて誰かに構ってもらえてたし、朝と夜は由梨さんがいたし、昼間は女官さんとかが部屋のお掃除で常に人がいたりしたけど、誰もいなくなっちゃうんだぁ。


 そっかー。

 由梨さんと部屋が離れただけじゃなくて、チュニアさんともあんまり会えなくなっちゃうのかー。


「大丈夫ですよ、ミャーコ様!明日の午後にユリ様とお茶会の予定がありますし、朝食の時間も合わせておきました。お寂しくならないように、と先輩から引き継いでます!」


 私が目に見えて、耳をへこたらせていたせいか、ミーナさんは私と目線を合わせるためにしゃがみこんで、にこっと笑ってくれた。


 このひと、いいひと!


「よろしくおねがいします、ミーナさん!」

「ふふっ、はい。精一杯、お世話させていただきます」


 よくよく話してみると、実はミーナさんは何度か私におやつをくださったこともあるらしい。ご、ごめんなさい!あの頃はとにかくどこにいってもみんなが構ってくれてたから、正直あんまり顔とか覚えていなくって…!

 でもこれからは、ちゃんと覚えますから!期待しててください!



「こちらのお部屋になります」

「はーい」

「おや、ミャーコ様がお隣ですか」

「はい?」


 ミーナさんが部屋の扉を開けようとしているときに名前を呼ばれて振り返ると、そこにはイールさんがたくさんの本を抱えながら立っていた。

 お隣さんですか?

 はて?


「イール様、扉を開けさせていただきますか?」

「あぁ、そうですね。両手がふさがっていたんだった」

「イールさんは、おとなりさんですか?」

「えぇ。ミャーコ様へこの住居棟について説明は?」

「いえ」


 まだです。と答えながら部屋の扉を開けてくれたミーナさんへ、イールさんは会釈をしながら体半分を部屋の中へ滑り込ませる。


「大丈夫だとは思いますが、来訪者に対して不用意に扉を開けないよう、気を付けてください」

「はぁ?」

「では、わたしは失礼します」


 よっと、と両手に抱えた何冊もの本を抱えなおしたイールさんを見送ってから、私はミーナさんを見上げる。

 さっきの、どゆこと??


「…順を追って説明させていただきますから、まずは部屋のドアノブを握ってください」

「……はーい」


 金属製の丸い普通のドアノブを握って、手首をひねってみたけど、どれだけ力を入れてもドアノブが回らない!

 なにこれ?!この部屋のドア、壊れてるんじゃないの?


「このようにドアノブは普通には回せません。では次に、魔力をこめてみてください」


 ミーナさんに言われた通り、昼間ジルに習った手順を思い出しながら魔力を手のひらに込めてドアノブを握る。

 がちゃり、と開錠された音がして、怖々とドアノブを回してみると…今度は回った!


「昼間、ジル・バノル様が魔力制御について教鞭をとられた際に取得したミャーコ様の魔力情報を登録させていただきました。これで、緊急時以外でミャーコ様のお部屋に入れる者はいません」


 なんとまぁ。

 魔力って生体認証なのね。

 変なところでハイテクっぽいなぁ。


「ただ開いた扉から人や物が入室することは可能ですので、先ほどイール様がおっしゃられたとおり、来客の際も容易に開錠することはお勧めしません」

「ひとがきたときはどうするんですか?」

「通常でしたら個々ののぞき穴から確認をするのですが…」

「せが、たりません!」


 えっへん!胸をそらせて自信満々に言い切ると、ミーナさんが心得ていますとばかりに頷く。

 どうぞ、と促されて部屋の中へ入ると7畳ほどの部屋にベッドと勉強机、本棚、少し奥に次の部屋へ続く扉がみえた。

 ほっほーぅ。けっこう広いね。私の1人暮らしの部屋よりちょっと広いんじゃない?


「こちらにミャーコ様用に、のぞき穴を作成しましたので、こちらを使ってください」

「っと、あ、はい!ちょっと高いけど…みえます!」


 背伸びをして玄関ののぞき穴を見る。

 あれ?でもなんか変な感じ…?


「なんか…しせんが、たかい?」

「えぇ、特注で扉を作成させていただきました!ミャーコ様からも大人の顔が見えるように、と大急ぎで作成させたものなのですが…無事に使えるようでよかった!」

「わざわざ!?」

「城に詰めている細工師や技術師がこぞって作りたがったので、他の部屋よりも少々見栄えのする扉になっております」


 にっこりしながら、どーよ?と顔が物語ってます…。

 えぇえ、私のためにそこまでしてくれちゃってるの!?

 このお城の人たちってヒマ…じゃなくて、ボランティア精神にあふれてるんだね!


「えっと、ありがとうございます?」

「いえ、ミャーコ様の安全のためですから」

「そこまでキケンなんですか?」

「ユリ様の居室は、常に騎士がいましたが、ここにはおりませんし…なんといいましても、この区画はイール様をはじめ魔道士の皆様が多くお住まいでして…」



 がっでむ!!!


「あ、ですが!」


 私が絶望したのがわかったのか、ミーナさんが取り繕うに両手を鳴らした。

 なによ、なにかいいことでもあるの?

 由梨さんが引っ越してきてくれるとか、あるの?


「イール様の逆隣りはシリウス様ですよ!」


 えー…それもまた微妙な気持ちだわぁ。




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