21話
疲れ切ったサラリーマンの風情で肩を落とした王様は、チラリと私を見やるとまた大きなため息を吐き出す。
「困ったことに、あいつは俺の昔馴染みというか…腐れ縁というか…。まぁ、とにかく幼いころから見知った奴でもあるし、奴は俺と違って優秀でな。俺が王になったころに奴にもドラゴンが現れたらしくてな…何かといえば競ったりあおったりしてくる奴だったが、なんというか…なぁ…」
西のエイラ国の王様とここの王様はなんだか因縁があるんだと思うけど、なんか、なんというか、ちょっとだけ、ほんのりと…
「ストーカー気質…?」
ぽそり、と由梨さんが呟くと、王様は今までよりもより一層大きなため息をついた。
「何が気に入らんのだかな。…ともあれ、奴は俺が、奴よりも勝っていたり行幸に見舞われるのが気に入らない。今までは実害もなかったこととお互いが切磋琢磨することで国民に対するより一層の利益になることで俺も何も思わなかったのだが、さすがに我が国の国民…ミャーコ殿の場合は国ネコになるのか?」
「に?(さぁ?)」
「…まぁ、とにかく。手を出されて黙っているのでは、国王としての名が廃る!」
「と、いうことで」
がちゃり、とシリウスさんが入ってきた。
「我がネイブ国は西のエイラ国王に対して、ささやかな仕返しをしたいと考えております」
「仕返し…ですか?」
「えぇ、そうです。」
一見穏やかというか、通常通り能面のシリウスさんが私をチラリと見やる。
「この愛らしい、無垢な、幼気なっ、ミャーコ様に対する不埒な所業を決して赦すわけにはいかないのです!」
「…と、まぁ。シリウスが怒り心頭ということもあり、我々は全力でエイラの国王であるエリックに対して、嫌がらせを実行することに決めた!」
拳をぎゅっと握り、王様とシリウスさんはお互いを見つめて力強く頷きあう。
え、っていうか、今の空耳?
「いやがらせ…?」
あ、由梨さんもそう聞こえましたか。そうですか、では私のネコ耳が聞き間違えたのではなく、ここにいるいい年をした大の男の人は、確かに嫌がらせといったのですね。
あきれ返っている私たちに気が付いたのか、王様が少し気まずそうに小さな咳ばらいをした。
「まぁ、なんといかだな」
「精神的攻撃をするのです。我々は武力を以て他国を脅かすことも、王であるエリック殿に対して攻撃を仕掛けることもできない。また、エリック殿はレイのように身近な存在も多くはない」
西の国の王様は、どうやら友達がいないのかな。なんだかそれだけでも、友達いっぱいで活発に動き回ろうとする金髪碧眼イケメンな王様が嫌いなのかもしれないなぁ。
元の世界でいうところの「リア充め!!」ってことか。
気持ちはわからないでもないけど、それを私に向けるとは!
「そこで、だ。安易なやり方ではあるが、もっとも効果のある嫌がらせがある」
ニヤリ、と王様がワイルドに白い歯を見せて笑う。
なんでだろう。いつもはさわやかに見える王様の笑顔が、ちょっとだけジルに重なって見えた。




