表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/46

ネコとして


 


 何かに体を揺さぶられて、私はうっすらと目を開けた。

 真っ黒いアスファルトと異様に大きい子供用の靴が見える。


「にゃぁ(揺らさないでよ)」

「おかーさーん、にゃんちゃん、にゃーって!」


 さっき私をうもれさせていたゴミ袋はおそらく回収されたのか、それとも親切な誰かが助け出してくれたのか。

 私は地べたに横たわって気を失っていたらしい。そして、まだネコのようだ。

 いったいなぜこうなった。茫然自失としていると、先ほどの子供が乱暴な手つきで私の体を撫でる。


「にゃ(痛いからやさしく触ってよ)」

「かわいーねー」

「こら、野良猫に触っちゃだめでしょう」


 かいぐりかいぐり、と私を撫でていた幼児を軽々と抱き上げた母親は、腕の中で「いーやー!」と抵抗する幼児に何やら注意をしながら、私を省みることなく歩き去っていく。

 どうせなら食べ物のひとつも置いていきやがれ。触られ損じゃないか。

 


 ともかく。

 どうやら私はネコになったようだ。それは受け入れよう。仕方がない、抵抗してみても何が変わるわけでもないし、願えば人間に戻れるのなら、私はとっくに人間に戻っている。

 あー。とりあえず、今日から入社予定だった会社には申し訳ないことをした。昨年事故で両親を亡くして、天涯孤独。社会的に保証人のいない私を同情して雇ってくれた、父の年上の友人でもある社長には謝っても謝り足りない。

 祖父といってもいいくらいの年齢で、とても穏やかに笑い、社員からも慕われている人だった。

 あの会社で働きたかったなー。

 もう叶わないけど。


 とにかく、私は何が何でも生きなくてはならない。死んだ両親もまさか娘がネコになるとは思っていなかっただろうが、このままのたれ死んでしまっては、顔向けができない。

 せめて猫として立派に生きて、胸を張って再会するんだ。そうだ。私は生きていくんだ!




 そう決心してから、早1週間。

 お父さん、お母さん。都は立派にネコライフを満喫しています!







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ