第Ⅶ話
少なめです。
〈どうなってんだよ〉
「........誰も出てこねえな」
〈いや、そっちじゃないよ!〉
「ハハハ。そんなことわかってるって。後でな、後で」
俺は笑うと目を閉じる。
「.........ギィィィィィィィィ!」
背後からその何かは襲いかかってきた。
俺は避けることもせず、何かの攻撃を受ける。
何かの歯が首筋に食い込んでいく。
「.......地獄に送ってやるぜ!」
その何かの頭を片手でつかみ、前方に投げる。
「.....なんだ、コイツ?」
〈.........ば、化け物?〉
言葉で説明しにくい、そんな生物だった。
身体の表面はヌルヌルとしていて光沢がある。
口にはまるで肉食の生物のように尖った歯がずらりと並んでいた。
目は赤く、七つもあった。
体長は僕と変わらないように見える。
この生物はなんなんだろうか?
そんなことを考えているうちに次々とその何かは増えていく。
その数、十数体。
「これで全員か?まとめて潰してやる」
俺がそう言うと周りの何かはいきなり吹っ飛んだ。
「唯さん!大丈夫ですか?」
攻撃したのはナヴィアだった。
「......なんだ、この女」
「ギィィィィィィィィ!」
「っち!」
ナヴィアの攻撃で吹き飛んだ数体は動かない。
「俺の獲物に手、出してんじゃねーよ」
俺はかなり短気のようだ。
残りに対して、俺は相手の腹に拳を叩き込んでいく。
すると、何かの腹には次々と穴が空いていき、紫色の血を出しながら倒れていった。
「......次はお前だ」
視線をナヴィアに向ける。
たったそれだけでナヴィアは吹き飛んでいった。
「..........な、何するんですか」
〈何やってんだ!〉
「.......邪魔するんじゃねーよ」
「唯....さ.ん.....?」
俺はナヴィアの首を掴み持ち上げていく。
「....あの時..と...同じ」
ナヴィアが息苦しそうにもがいている。
〈......やめてくれ......頼むからやめてくれ!〉
意識だけの僕がそう叫んだ時だった。
突然、身体中から青い光が放たれていく。
「か、身体が!」
青い光はやがて全身を包んでいき、包み終わると一瞬で爆ぜた。
「...さん.........唯さん!」
目を開くとそこにはナヴィアが泣いていた。
「.........なんて顔してんだよ」
「だって....だって」
手を握ったり、開いたりしてみる。
長い間、動かしてないようなぎこちなさを感じながら動かせることに感動を覚えた。
「......ちゃんと動く」
俺とは結局、なんだったのだろうか。
頭の中に響いていた声は今は聞こえなかった。
「見舞えに来てやったんだぜ、感謝しろよ」
「......へいへい、分かってますよ」
全てが白く塗り潰された空間に僕はいた。
勿論、病院だ。
ちなみに敏が今は見舞いに来てくれていた。
「でも、驚きだよな」
「何が?」
「ここ、先輩の父さんが経営してんだってな」
「あ、ああ」
そうなのだ。
ここは天塚源内さん、つまり夏帆先輩のお父さんが経営している病院なのだ。
「しかも、個室かよ」
大体の場合は大部屋になるらしいのだが、何故か僕は個室に入院している。
夏帆先輩がそうするように頼んでくれたらしい。
「.......なにげに、モテてるのか」
「なんか言ったか、敏?」
「いや、何でもない」
「?」
小声だったので聞こえなかった。
「.......んじゃ、俺帰るわ」
「また、こいよ」
「ああ」
病室を出ていく敏を見よくり、僕はとても深いため息をついた。
「.......これからどうなるんだ?」
あれ以来、怪物は襲って来なかった。
怪物の正体も気になる
怪物と俺。
二つの謎が頭の中で、クルクルと回り続けていた。