第Ⅱ話
「.......っ!」
「...........」
目が覚めると次は、目の前にドアップで彼女の顔があった。
しかもまた、何か柔らかいもので口を塞がれているようだ。
そこで彼女は気づいたのだろう。
彼女はルビーの様に輝く瞳をこれでもかというほど開いて驚いていた。
そして......
ズドーーン
人のものとは到底思えないほどのスピードとパワーでのパンチで、彼女を寝かせたはずのソファーごと吹き飛ばされた。
「っ、ごめんなさい!」
吹き飛ばされたせいでいろいろとお釈迦になってしまったようで、あちこちにソファーだったものやテーブルだったものなど散らかっている。
窓も一部割れていた。
「あ、あの〜......大丈夫ですか?」
「.......なんとか」
彼女は申し訳なさそうな顔で近づいてくる。
「お怪我は?」
「多分、ない」
あれだけ吹き飛んだのにかすり傷一つ無い。
と、そこで気づいた。
彼女は僕のワイシャツを着ていた。
いや、あえてこう言おう。
ワイシャツしか着ていない。
そして彼女は顔を赤く染めて僕から顔を逸らす。
なんと僕はパンツしか履いていなかった。
あまりの恥ずかしさに僕は言った。
「イヤン......」
あまりのキモさに、自分で言っておきながら吐き気がした。
「.....その....変じゃないでしょうか」
「多分似合ってる」
あれから急いで僕は自分の部屋で着替えた。
彼女には僕のジーパンとTシャツを適当に引っ張りりだして着てもらった。
妹のは、何分アイツの背が低く小学生並なので着れないと思ったからだ。
そこで彼女の頭に角がないことに気づく。
やはり、コスプレだったのだろうか。
「.......あのさ、僕は高校二年の寺岡唯というんだけど、キミは?」
「あ......あの、私、異世界になると思うんですけど......魔王をやってます。ナヴィアといいます。......あの、キ、キスしたのは魔力をあなたの体に流すための手段でして別に好意からのものではないんですけど、でも私はいつもこういうことをしているわけではないはけでして、つまりファーストキスなわけでって、何言ってるんだろ私......」
ナヴィアは顔を赤くしながら魔力がどうとか呟いている。
後のほうは声が小さすぎて聞き取れなかった。
「とにかくキ、キスしたのは回復魔法を使うためっだったんです!」
着替える時に気づいたが確かに背中には傷一つなかった。
なるほど......
まあ、僕もファーストキスだったんだけど.....
「そういえば、角なくなってない?」
「あ、角は魔法で見えなくしているのでちゃんとありますよ」
角はあるのか..............なるほど。
つまり、魔王だから角が生えていてもなにもおかしくないよな。
..........いや、おかしいって絶対!
この御時世に魔王って中二病か何かですか?
いや、あれか、コスプレか。
でもやっぱりそれはおかしすぎるだろ。
だってナヴィアが嘘ついてるようには見えないしな......
「ほら」
「!」
ナヴィアがそういうと、確かに頭から角が姿を現した。
「..........OK、OK。キミが人間じゃないことはわかったよ。だからキミが自分のことを魔王というのなら.......まあ、信じてもいい.......」
僕は頭を手で押さえながら言った。
「んで、その魔王様はなんでこんな魔物がいないような世界に来てんだよ」
「........お恥ずかしい話なんですけど.......私、勇者に負けそうになりまして.......」
ナヴィアは勇者との死闘を話し始めた.........。
簡単に話すと、ナヴィアは魔王として一応頑張って世界を征服しようとしていた。
しかし後一歩で世界征服が完了するときのこと。
勇者と名乗る人物がナヴィアの城、魔王城に侵入。
そして不意打ちを繰り返しついに、ナヴィアの所まで。
ナヴィアとの死闘の末、勇者はナヴィアを後一歩の所まで追い詰めたらしい。
このままでは負けてしまう。
そう思ったナヴィアは代々魔王しか使う事を許されない魔法、空間転移を使い命からがら逃げてきたという事らしい。
.......で、裸だったのは空間転移で大量の魔力を使ったからだそうだ。
「......というわけなんです」
「......なるほど」
ここでいう魔物というのは、どうやら魔法が使える人間のことを言うらしい。
別にまがまがしい化け物というわけではないらしい。
ナヴィア角が生えているのは強すぎる魔力によって生えるとのことだ。
「あの、寺岡唯さん。........お願いがあるんですけど」
「唯って呼んでいいよ」
「わかりました。では唯さん。その、私と勇者をやっつけてください!お願いします!」
........俺と勇者倒すってどういうことだよ?