第Ⅸ話
かなり修整しました。
最初のを読んだ人はもう一度読み直して欲しいと思います。
「.......えっと、これを.....その棚にしまって」
「......何段目?」
「そうね........いちばん上でいいわ」
「わかった」
片付けは、風紀委員会の教室で行われていた。
この教室はいつも使っている教室より狭く、ドアと窓が一つずつあるだけだった。
資料は僕が想像していたより多く、気づけば教室の外が暗くなっていた。
「これで最後っと。...........ふぅ〜。やっと終わったわ」
「.......」
「.....何よ、その仏頂面は」
「.......べつに」
岩西は不満げな視線を送ってくる。
「早く帰ろうぜ」
「う、うん」
カバンを持って立ち上がる。
岩西は先に教室を出ようとしていた。
「.........あれ、開かない」
試しに僕が開けてみる。
「ホントだ」
全然、開かなかった。
岩西はドアを無理やり開けようとした。
「.....鍵でも掛かってんじゃないのか?」
「ここは室内なのよ。............鍵が掛かってるわけないでしょ」
「......ですよね......」
「窓も......全然、開かないようね」
何が起こっているんだ?
どう考えてもおかしすぎるだろ。
「こうなったら、助けを呼ぶか」
「どうやってよ?」
「.......岩西、携帯は?」
「........あのね、持ってきてるわけないでしょ。校則は守らないといけないんだから」
「.......悪い。まあ、俺はあるがな」
カバンの底から携帯を取り出す。
だったが........
「.........ダメだ、圏外になってる」
「......そう」
岩西は教室にあった椅子を持ち上げていった。
「窓でも割る?」
「.......それも、ありだな」
さすがに窓を割るのはやめておこう。
僕はドアに向かってタックルをする。
四回目にやっとドアを壊せた。
「.......やっと出て来た」
「誰だ」
暗くなった廊下から声がする。
「......岩西、教室に入ってろ」
「え?」
「いいから」
出てこようとする岩西を中に押し入れる。
「......さて、どうしたものか」
暗闇に赤い光が七つ、さらに青い光が二つある。
恐らく、あの変な怪物だろう。
今は携帯が圏外になっていて、ナヴィアを呼ぶことはできない。
あの時みたいに、もう一人の自分が出て来ることもないだろう。
非力な僕に何が出来る?
「.....岩西、窓を割って先に逃げろ」
「う、うん」
真剣な雰囲気が伝わったのだろう、岩西は素直に従う。
「.......追え」
機械音のような無機質な声が聞こえる。
すると、赤い光がふと、一瞬で消えた。
そして、残っている二つの青い光はこちらに迫ってきた。
「......ちっ」
手に持っていたバックを端に投げ捨て、岩西が割った窓から外にでる。
外にでると、岩西の後ろ姿がはっきりと見えた。
が、それも一瞬のことで、すぐに赤い光が連れ去っていった。
目で追うと、満月を後ろに、この前の怪物と一人の女性らしき姿が屋上に立っているのを確認できた。
女性はアニメでよく見る、宇宙服の様なものを着ている。
顔はヘルメットで見ることができない。
ヘルメットの奥に青い光だけが見ることができた。
それを確認したところで、殴られた衝撃と迫りくる校舎の白い壁が、僕を襲った。
「........痛った...」
今まで僕がいた場所には怪物が立っていた。
怪物は僕に近づいて、羽交い締めにする。
「離せよ!」
と、そこで無機質な声が響いてきた。
「......なぜ、力を使わない」
女性は突如、屋上から飛び降りる。
落ちる、と思ったが女性は、落ちることなくゆっくりと降りてきた。
女性はヘルメットを外しながら言った。。
「......もう一度聞く。なぜ、力を使わない?」
「..........力....だと?」
殴ったのと違うモンスターが僕を羽交い締めにする。
力とは多分、俺のことだろう。
「...なぜ...アンタが知っているんだ」
「ずっと、お前を監視していた」
月の光が窓に反射し近づいてきた女性の顔を照らす。
「.......なんで」
僕の知っているいつもの顔じゃない。
それは無表情で僕を見ていた。
「.......なぜだ、千夏!」
その表情からは、あのひまわりのような笑顔の温かさは感じられない。
「そう.......私は中城千夏」
機械的な冷たい声で千夏はそう言った。
無機質な声は、聞き慣れた千夏の声に変わっていた。