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プロローグ
それはどこにでもあり、しかし誰も気づかないそんな場所だった。
そう誰も気づかないだけで……
誰も通らないような薄暗い路地にいた。
ただそれだけなのにこの世界から切り離されているように感じる。
僕はここにいるはずなのに。
「?」
突然服を引っ張られた。
振り向くとそこには小さな女の子が服をつかんでいる。
「……どうしたんだい?」
「……あのね、これ落としたよ」
女の子は服を引っ張っていないほうの手を僕に見せた。
「えっと……これは僕のじゃないよ」
手には紅く輝く石が握られている。
僕にはそれがとてもきれいに見えた。
「……これは……お兄さんの……だから、持っていて……」
「どういうこと?」
そこにはもう、女の子はいなかった。
そして、いつの間にかその石は僕の手に握られていた。
この石が僕の運命を変えるなんて、この時の僕は思ってもみなかった。
でもこの石のおかげで大切なものを見つけた。
だから……