~藤咲マミの視点 5
修正:『藤咲ミノリ』を『藤咲マミ』に修正します。本当は下の名前で色々と考えていた話があったのですが、残念ですけど本筋の邪魔になりそうなので。
私は自宅に、住んでいるマンションに帰宅した。体のだるさを覚えながらもエレベータのボタンを押す、すぐに3階のボタンが点灯した。
すぐに開いたエレベータに乗る。
体がだるいと言っても、別に身体が疲労するようなことをしたわけじゃない。きっと、精神的に疲れたんだろう。
私が学校を出るのは他の生徒よりも遅い。
それは、私が他の生徒と帰宅時間を合わせないようにしているのもあるが、なによりも放課後になると担任の先生との話し合いが待ってるからだ。
「なにかクラスで不満なことでもあるのか」
「イジメとか、からかわれたりするなら先生が力になるぞ」
「勇気を出してみんなと勉強してみないか」
「せめて何か理由があるなら言って欲しい」
私はため息をつく。
不満や理由があるのなら私が教えて欲しいくらいだ。
エレベータから出た私は自分の部屋の前まで歩いていく。
誰しも人は、『何事にも理由があるものだ』と思っている。
中には、「いや、私は思ってないよ」って言う人もいるけれど、じゃあそういう人に「誰かに行動の理由を聞いたことは一度もないの?」と聞くと、それを「ない」と否定することが出来る人はまずいない。
相手に理由があることでみんな安心しようとする。納得して、区切りを付けたがる。
私もそうだ。
だから自分の行動を色々な風に説明しようとして考える。
でも、答えは出ないし出たところで何も解決しない。理由がわかったからって、解決できる……なんてことは現実にほとんどない。
312号室、その横には藤咲の文字。
自分の部屋の前に着いた私は、鞄から鍵を探す。
もちろんそれは、取り出しやすいところに入れてあるのですぐみつかり、すぐに鍵を開けることができた。
ドアを開き、部屋に中に入る。
そして、ドアを背中で閉めた。
自分の家に帰ってきたという安心感からか、肩から力が抜ける。
「疲れた」
自分の部屋の前に来てからの第一声はそれだった。
適当に靴を足でほうり投げるようにして脱いで、そのまま家の奥へと入っていく。
居間へのドアを片手で開けた。
「ただいま」
私は入るときにそう言った。
だけど、返事はない。
誰もいないからだ。
ああ、なんだ。私は彼を独りだと思ったけど、そうじゃない。
独りなのは私だ。
私はそのまま台所に向かう。手洗い、うがいを済ましてすぐに夕食の準備に取り掛かった。
今日はひとり分だけ作ればいい。