エピローグ
とある物が新聞を持って椅子に座っている。
「誰が、こんなことを?」
手に持った新聞を見ながら、その人物は改めて呟いた。ただし心の中で。
新聞には連続猟奇殺人の文字。
この情報はこの町どころか、日本中に知れ渡っている。
自分は今まで完璧にやってきた。
情報は流れても、警察内部で済むはずだったしマスコミに知れ渡ることはないはずだった。
このままでは、今までしてきた苦労が水の泡だ。
そろそろ他の件との類似点に気付くものも現れるだろう。
それでも到底警察の手が自分に届くとは思えないが。
だが、過信は禁物である。日本の警察は基本的には優秀だ。
もし、自分が手を下したら正体がばれる可能性は大きい。なにせ、次の獲物も同じこの街に住んでいるのだ。もしかしたら、容疑者として疑われるくらいはあるかもしれない。
それは、あまり好ましくない。
やり方を変えるか、時間が経つまで待つか。
だが、犯人が自分と同類ならば同じ獲物を横取られる可能性は高い。
あんな獲物はふたつとないからだ。と言うことは、待つのは危険である。
だが、簡単な話だ。
この犯人を利用すれば良い。
前々から狙っていたことだ。
そうすれば全てを帳消しにして、もう一度いちから始めることが出来る。
だが、上手く行くのだろうか。
いや、上手くは行くだろう。自分はそのための手がかりを持っている。が、しかし。
その人物は立ち上がる。
「どうも、相手が自分と違うモノの気がしてならない」
誰にも聞かれないようにそう呟くと、その人物は歩き去っていった。
その場に残るのは、赤いピアスが一つ。