第60話 源氏名・ヒロ
新人が並んで挨拶をさせられた。
「新人の川野ヒロキです!これでもシングルマザーで、生活苦だしこの仕事頑張ります!」
「うーん、源氏名はヒロでいいか」
源氏名までつけられたよ…。まぁ作戦中はいいか。
「よく覚えておけよ。特に新人!ここのオーナーの赤川さんだ」
へえー、初めて見たけどんな顔なんだ。あ、商店街でオバサンに詰め寄られてた時はもっと焦った顔してたな。今は威厳ある顔してるからなぁ。
「ん?新人。名前を何と言う?」
「本日よりここでお世話になります。ヒロと申します」
ちょっと怯えてる感じで返事をしてみた。
「おいー。こんな上玉は私の専属にしろよ!」
「専属?」
「給金ははずむぞ?この店で働くのと同じ時間で構わない。私と共にいてくれるだけでいいんだ」
うわー、エロオヤジ発言。でもま、私の潜入も成功ってことで。
「助かります。子供もまだ小さいので……」
朔斗さんこの現場を見ただけで、この親父を半殺しにしそうだなぁ。
その後、私はエロオヤジの腕にしがみついていた。これで片腕は封じた!もう片方が残ってるんだけど……。
「こらこら、そんなにくっつくもんじゃないぞ!」
満更じゃない顔でそんな事を言われても心に響かない。
「えー?」
私はさらに胸を押し付けた。
「おいおい。ダメじゃないか!仕方のない子だよ」
空いてる手が動く?
「オーナー、お酒でもいかがです?オーナーですもの、当然強いお酒を好まれるんでしょう?」
私は酔え!というように、話を持っていった。
「まあなあ。昔はウォッカをボトルでラッパ飲みしたなぁ」
「すごぉい!」
父さんが今でもしてるよ……。アルコール度数の高い日本酒だけど。
「今でもできるんでしょ?」
「ラッパ飲みは無理でも、ストレートのグラスを一気飲みくらいならなぁ」
2杯くらい飲んだら連れ出そう。そして連れて行く。
本当にストレートのグラスを一気に飲み干した。2杯くらい飲んだところで、
「少し夜風に当たりませんか?気持ちがいいでしょう?」
と赤川弟を店から連れ出した。
この時点で赤川弟の思考やなんかがもうフラフラ。
「よくやったな。大輝。酩酊状態じゃないか!」
大雄さんは大輝の頭をワシワシと撫でる。
大雄さんも過保護だよね。子離れしてないというか……。
「えーと、ウォッカのストレートをグラスで一気飲みを二回させたらこうなったよ」
流石の大雄さんも頭を抱えてしまった。
「やるとは思ったけど、そこまでとは思わなかった」
「酔わせなきゃ、このエロオヤジが私の胸に手を出しそうだったから。つい」
「つい」ねえ。朔斗君的には良かったかもしれないけど、私達が迎えに来なかったら赤川弟は酔いつぶれてたわよ。どうやって運ぶのよ?




