第4話 失踪者リスト
◇◆◇
橋での出来事を引きずったまま、
蓮は翌日、市内の図書館へ向かった。
古い新聞の縮刷版を
閲覧できると聞きつけたのだ。もし本当に
“赤い橋”に事件の記録があるのなら、
ここに痕跡が残っているはずだった。
検索端末で
「赤い橋 事故」「赤い橋 失踪」
と入力する。すると、思いのほか
大量のヒットが返ってきた。
最古の記事は二十数年前のものだった。
> 「高校生グループが、
心霊スポット巡りの帰りに失踪。
最後の目撃は“赤い橋”付近」
さらに数年後――
> 「通勤途中の男性が行方不明に。
防犯カメラには
“橋の中央で立ち尽くす姿”が映っていた」
そして最近の記事では……
> 「女子大生が深夜に姿を消す。SNSに
“赤い橋を見に行く”と書き残していた」
蓮は震える指先で記事をめくり続けた。
奇妙なことに、
どの失踪事件も共通点があった。
――必ず
“最後に赤い橋に向かっていた”という点だ。
しかも、ネットで見かけた名前が
新聞にも記されていた。
都市伝説の証言が、
実際の記録と重なっている。
背中を冷たい汗が伝う。
これは単なる怪談ではない。
実際に、人が消えているのだ。
不意に、隣の席から声をかけられた。
「……それ、調べない方がいい」
顔を上げると、同じく新聞を閲覧していた
初老の女性がこちらを見ていた。
皺だらけの顔に、強い怯えが刻まれている。
「あなたも“読んだ”のね。あの小説を」
蓮の心臓が跳ねた。
なぜ彼女は、
自分が小説を読んだと知っている?
女性は小さな声で続ける。
「消えた人たち……全員がそうよ。
あの小説に取り憑かれたの。
必ず“橋”に呼ばれてね。そして――
あああああああああああああ!!」
言葉が途切れた。
女性の視線は蓮の背後を凝視していた。
振り返る。
誰もいない。
だが確かに、耳の横で低い声が囁いた。
――「何も喋■な…■■の女!」
慌ててスマホを取り出す。
そこには
新たな掲示板スレッドが表示されていた。
「佐久間蓮、失■者リスト入り」
最後に添えられた一文は、
見慣れたものだった。
――#諸説あり




