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番外編8 護衛騎士の苦悩


——マーク視点




護衛騎士として、私は 王太子殿下の身を守る ことが仕事である。


普段から殿下の傍に仕え、どんな時も危険がないよう警戒を怠らない。



——が。



最近、それ以外のことで気を揉む機会が増えている。


それは 殿下とエステル様の甘すぎる関係のせい である。



いや、別にいちゃついているわけではないのだが、

お二人とも完全に両想いで、しかも互いにそれを意識しすぎているのがバレバレ なのだ。


このままいくと 私は近いうちに仕事を失うのではないか と、本気で思い始めていた。


そんな私の不安を決定的にする 事件 が、ついに起こる。





夜の回廊。


私は王太子殿下が湯浴みから戻るタイミングを見計らい、適切な距離を保ちつつ待機していた。


そして 目撃してしまったのだ。


エステル様とばったり遭遇する王太子殿下の 無防備な姿 を。



上半身は裸、下はラフなスラックス。

髪は半分濡れたまま、片手にはタオル。

静かな月光の下、滴る水が光を反射している。



(……殿下、それはあまりにも油断しすぎでは?)



しかし、その瞬間——


エステル様が真っ赤になった。


いや、これはもう 真っ赤 というか……


湯気が出るのでは?? というレベルである。



「……っ!」



普段、あれほど冷静で気品に満ちたエステル様が 固まっている。



(やばい、これはやばい。)


何がやばいって、私が見ていることがやばい。



王太子殿下は いつも通りの優雅な表情 でエステル様を見つめている。

しかし、私は見逃さなかった——



ほんの少しだけ、殿下の目が愉しげに細められた瞬間を。



(この方……絶対に、確信犯ですね??)






「……エステル様、顔が赤いですね」



来た。

来てしまった。


甘々台詞、発動である。


しかも、殿下、距離が近い!!


いやいや、いくら婚約者とはいえ、そんな距離で囁いたら 心臓に悪いのでは??



……案の定、エステル様の 耳まで真っ赤 になった。



「な、なにも……!」



焦ったように背を向けるエステル様。


(うん、これはもう完全に殿下の勝ちですね。)



そして、事件は続く。


「……?」



——いやいやいや。


殿下、どうして 首を傾げながら近づくのですか??


これは確信犯で間違いない。



そう確信した次の瞬間、


殿下が、エステル様の頬に優しく触れた。



「……湯浴みを済ませた後だから、熱が移ったのでしょうか」



……。



いや、違います殿下。


それは あなたのせい です。




その後、エステル様は 猛ダッシュでその場を去っていかれた。



(気持ちは、痛いほどわかります……)


そして、残された王太子殿下は——



「……」



濡れた金髪をかき上げながら、満足そうに微笑まれていた。



(……これはもう、手遅れでは??)


殿下、確実に エステル様の反応を楽しんでいましたよね??



「……そろそろ、時間ですね」


低く穏やかな声で、そう呟く王太子殿下。


(時間とは??)


(もしかして 結婚式までの時間ですか??)


(……1ヶ月後、どうなってしまうんですかね??)





その夜、私は 深刻な問題に気づいてしまった。


このままでは、私の仕事がなくなるのではないか??



なぜなら——


結婚式が終わったら、殿下の護衛の必要がなくなるのでは??


普通、王太子には護衛が付き添う。

だが、結婚式が終わった瞬間、殿下の興味は 100%エステル様に向く。


私が 「殿下、お休みになられては?」 と進言しても——


「いや、今夜は休むわけにはいきません」(※意味深)



と返される未来が見える。



私が 「護衛を配置すべきでは?」 と言っても——


「エステル様が隣にいてくだされば、問題ありません」 とか言いそうである。



結果、私は 「お、おう……頑張ってください……」 と言い残し、そっと席を外すことになるのでは??


いや、そもそも。



王太子の護衛とは、そんな仕事だっただろうか??


「……もう、俺の出る幕がないのでは?」



そんな危機感に襲われながら、私は 深いため息をついたのだった。


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