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番外編2 愛しい人の香り 前編


(エステル視点)



夜の静寂に包まれた寝室で、私は 小さな石鹸 をそっと手のひらに乗せた。



ジークハルト様からいただいたこの石鹸。

それは シリウス様が使っているものと同じもの だという。



「殿下と同じ香り……」



静かに呟くと、ふわりと 温かみのあるウッディノートの香り が広がった。


樹木の深く落ち着いた香り。

静かで穏やかで、どこか安心感を与えてくれる香り。



(シリウス様の傍にいるとき、感じる香り……)



私は無意識のうちに、石鹸を指で撫でていた。



使ってみたい。


この香りをまとったら、どんな気持ちになるのだろう?


シリウス様のそばにいるときと同じように、穏やかで、満ち足りた気持ちになるのだろうか——。





「……サラに話したら、大変なことになるわね」



想像するだけで 容易に予測できる光景 があった。



『ええええええ!!? シリウス様とお揃いの香り!? なんて尊いのですかエステル様!!! これはもう! 運命!!!』



——騒ぎすぎて 王宮全体に広まりかねない。


(それは……さすがに恥ずかしすぎるわね)



サラに知られるわけにはいかない。


私は こっそり、一人で使うことにした。





王宮の浴場は広々としているが、私は 個室の浴槽を選んだ。



誰にも知られず、静かに香りを楽しむために——。


浴槽に温かな湯を張り、私は そっと石鹸を泡立てた。



「……いい香り」



柔らかな泡が肌を包み、ほんのりとシリウス様の香りが漂う。



目を閉じると、まるでシリウス様がすぐそばにいるような感覚に陥った。


(落ち着く……)



この香りを纏っていると、どこか心が穏やかになる。


シリウス様がいつも冷静で優雅なのは、この香り影響もあるのかもしれない。



「ふふ……」



けれど、もし明日 この香りを纏ったままシリウス様とお会いしたら——


私は 彼の表情を想像し、ほんの少しだけ胸が高鳴るのを感じた。



後半に続く


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