第二十五話 侍女が見た怒れる殿下!
皆さま、ごきげんよう!
エステル様の侍女、サラ です!!
今日も今日とて、エステル様の周りをちょこまかと駆け回り、推し(=エステル様)を全力で支える日々!
しかし本日は——
エステル様がお休み中!!!
ううっ……心なしか、最近お疲れのご様子だったから心配……。
でも、こういうときこそ 殿下の愛が炸裂するとき!!
やはり殿下は違う!!
エステル様をそっと寝台に寝かせ、心配そうに 優しく髪を撫でる姿……。
額にかかった前髪を、すっと指先で払ってあげる仕草……。
その指先にふわりと触れたエステル様が、少しだけ頬を染めて——
「……もう、シリウス様」
——とかなんとか、 甘い声で囁いちゃったりしちゃったりなんかして!!!
きゃ~~~~~っっ!!!!
これが!!! 王族の恋愛!!!(違う)
そして、きっとエステル様が少し動こうとしたら、
殿下がすかさず「無理をなさらず、少しお休みください」 とか言って、
そっと手を握るんですよ!!!!!!!!
で、エステル様は戸惑いながらも、その手を握り返しちゃうんですよ!!
うわぁぁぁぁぁぁ!!!
もうだめ、想像だけで尊すぎるぅぅぅ!!!!
——って、
いやいやいやいや、違うんです!!!
今そんな妄想してる場合じゃない!!!
だって……!!
エステル様の私物が何者かに盗まれているんですよ!!!!!!!!
許せない!!
私だってエステル様の使っていた小物とか欲しい!!!(え?)
でも! 欲しいときは、なぜかエステル様が気づいてくださるんです!!!
「サラ、これ、あなたに似合いそうね」って……!!
女神!!!!!!!!!
それなのに、こっそり盗むなんて、そんなこと許されるわけがないでしょう!!??!?!?
ぷんぷんしながら掃除をしていたら——
バンッ!!!!(盛大にぶつかる音)
「いったーい!! ちょっとどこ見て歩いてるんですか!!!」
「はぁ!? ぶつかってきたのそっちでしょ!!!」
鼻を押さえて顔を上げると、そこにいたのは……
赤茶色の髪の魔術師見習い・ミシェル だった。
……は? なんで???
「ちょっと、なんでそんなに慌ててるんです? まさかやましいことでもあるんじゃ……?」
「はぁ!? そんなわけないでしょ!? だいたいアンタこそ、何でそんなキラキラした目でこっち見てんのよ!!!」
「キラキラ? 当然です!! 私、今めちゃくちゃ良い妄想してたんで!!」
「……え、何の話?」
そんな謎問答を繰り広げている場合ではなかった!!
背後から ズンッッッ…… とした 重圧 が近づいてきた……!!
なんですかこの空気……!!
寒気がするんですけど!?!?!?!?
「ミシェル」
──!!!??????????????
そっ……その声は……
シリウス殿下!!!!!!!!
え、待って、殿下めっちゃ怖いんですど!!!???
いつもの優雅で上品な雰囲気はそのままなのに!!
なのに!! 背後にオーラが見える!!!
なんか魔力がピリピリしてる!!!
え、怖い怖い怖い怖い怖い怖い!!!!
ちょ、マークさん!? なんか言ってくださいよ!!
「……俺も今、できることなら消えたい」
マークさん、無理ですね、これ……!!!
シリウス殿下が、静かにミシェルを見据える。
その目は、冷たく澄み切った 王族の目 だった……。
「ミシェル、少し話がある」
終わったな。
サラは確信した。
ミシェルが、ここから無事に帰れる保証はない。
なぜなら、あのシリウス殿下が……
本気で怒っている。
さて、これから何が起こるのか──
続く!!!(たぶん)




