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第十五話 護衛騎士からみたお忍びデート


アストラ王国の王宮では、朝からシリウス殿下が極めて機嫌が良かった。

理由はもちろん── 「エステル様との初デート」 である。


本日の予定は、歌劇鑑賞とカフェデート。

お忍びとはいえ、王族が街中を歩く以上、俺たち護衛騎士の仕事は欠かせない。

ただし、殿下の希望で「いつもより距離を取って見守ること」。


つまり、遠目から2人のデートをガッツリ見守る という、護衛騎士として新たな試練が課せられたのであった……。




【歌劇鑑賞】


歌劇場の特別席に並んで座るシリウス殿下とエステル様。

王族とはいえ、お忍びなので目立たぬようシンプルな装いだが……

この2人が並んでいるだけで、まるで物語の主人公とヒロインだった。


だが、問題はそこではない。


殿下……

手を繋ぐだけじゃなく、優しく指を絡めて撫でるのは一体どういうことですか!?


── 劇のクライマックス、感動的なシーン。

エステル様が目を潤ませた瞬間、シリウス殿下は 迷うことなく、エステル様の指をそっと包み込み、親指で優しく撫でたのだ 。


俺は息を飲んだ。


(そんな手慣れた仕草、いつの間に習得したんですか、殿下!?)


驚くのも無理はない。

シリウス殿下は学生時代、誰とも親しくしすぎない、鉄壁の優雅さを貫いていたお方。


それが今や……

この甘々なスキンシップ!?


エステル様も、完全に意識してしまい、劇に集中できていない様子。

そんな彼女の反応を、殿下が少し嬉しそうに見つめているのが、またなんとも……。


極めつけは、劇が終わった直後だった。

拍手の中、立ち上がった殿下は さらりとエステル様の髪を指で梳きながら、耳元で囁いた 。


「美しい劇でしたね……ですが、それよりも、エステル様が見惚れるほど美しいと気づけたことの方が、私には大切です」


(ちょっと待てえええええ!!!)


エステル様は一瞬フリーズした後、顔を真っ赤にし、唇を噛みしめながら小さな声で囁いた。


「……シリウス様は、本当に時々、ずるいです」


その言葉に、殿下は満足げに微笑む。


── 俺は、もう限界だった。





【カフェデート】


歌劇の後、2人は王宮近くの落ち着いたカフェへ。


俺は遠くの席に座り、護衛しながらも様子を伺っていたのだが……

案の定、殿下はしかけた。


エステル様に向かって、スプーンにケーキをのせ、差し出したのだ。


「エステル様、このケーキ、とても美味しいですよ」


「えっ……?」


エステル様の戸惑い。

しかし、断ることもできず、おそるおそる口を開け、スプーンのケーキを受け入れた。


── その瞬間、殿下の目が甘く細められる。


「……エステル様が召し上がる姿も、可愛らしいですね」


(くっ……!!またやりやがった……!!)


エステル様、完全に固まる。

俺の耐久ゲージも限界だ。






【帰りの馬車】


……そして、王宮へ戻る馬車の中。


俺はもう、視界の端で何が起こっても驚かないと思っていた。


──が。


殿下、エステル様の肩を引き寄せ、そっと額にキス。

うおおおおおおお!!!

これはは予想外でした……!!!


エステル様は驚いたように瞬きをし、呆然としていた。


「……シリウス様?」


シリウス殿下は、彼女の頬に手を添え、穏やかな笑みを浮かべる。


「今日は、とても楽しい時間でした」


「わ、私も……楽しかったです」


「そうですか……ならば、次の機会も、こうして一緒に過ごせますね?」


優雅に言いながら、殿下は再びエステル様の額に唇を落とす。


「っ……!」


エステル様の顔がみるみる赤くなり、彼女はそっと目を伏せた。


「シリウス様は、本当にずるいです……」


「ええ。エステル様のためなら、いくらでもずるくなります」


── 俺は、もう無理だった。






こうして、2人の甘々デートは幕を閉じた。


護衛の仕事とはいえ、俺はどこまでこのラブラブ空間を見せつけられなければならないのか。


そして確信した。


次のデートでは、確実に「次の段階」に進むだろうと……!!!



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