アマンド
雪が降っている。
俺は犬ぞりに牽かれて六本木の町を走っていた。
もうすぐクリスマスだしなぁ
ん?
この犬はムキムキでバカみたいでなつっこい‥
五郎丸‥
20年以上前に死んだはず‥
俺は五郎丸に牽かれて雪の六本木を走り回った。
お前なら俺を引いて走れるよなぁ
見上げると遠くに王宮のようなビルが見えて‥曇った空から雪がしんしんと降っていた。
‥
「雪ですよ。」
バナナがカーテンを開けていた。
「もうすぐクリスマスですよ。」
(クリスマスプレゼント‥)
そういや、俺が持っていた財布とか来てた服とかどこいったんだ?
ここは、家から遠く離れた練馬の病院らしい。
俺が練馬に住んでいたのはもう10年以上前だ。
何でこんな所に入院してるのか聞くと、
俺は地元の路上で冷たくなっている所を発見され、手術できる医者がここにしか居なかったとの事。
?
どうやら死んでいたらしい。
死ぬほど働いて稼いだ(事実死んだらしいが)退学になった息子の復学費用を持っていたはず‥
現金がどこに行ったのか、怖くて聞けなかった。
「俺の財布はどこ?」
やっと声を出したが、
聞いたことの無いしゃがれ声だった。
「ご家族にお渡しされたはずです。」
「まだせん妄状態なので、ゆっくり寝て下さい。」
せんもう?
動物プランクトンに生えてるあれか?
意味がわからない。
ベッドの横に車椅子が持ち込まれた。
自力で移れる気がしない。
窓の外には雪が降っていた。
(転生してないのか?‥)
(こんな思いするなら死んで動ける身体に転生した方がマシ)
(しかし、一度死んだのは確かみたいだから、転生は無いって事か‥)
(だとすると、死んだら無って事だな。)
‥
息が苦しい‥
深呼吸は出来ないし、無の方がマシだな。