水
コップを持てないので、バナナが吸い口なるものを置いていった。
何とか持てるので、吸い口から水を飲む。
横になったまま飲むしかない。
むせないように細心の注意を払う。
吸い口を手探りで取るだけで、息が苦しくなる。
鼻の管を手で押し込む。
声は怖くて出せない。
ボタンは押さなかった。
押すのはいざという時だけにしよう。
酸素はおいしいな。
もっと水飲みたいけど、こぼしこうだし。
むせたら死にそうだから。
一口二口飲むだけにした。
(いつかごくごく飲みたいなぁ)
ピッピッ‥
「お隣さんが来ますよ」
バナナが言うには誰か隣のベッドに来るらしい。
俺と同じように水を、飲んだようだ。
お隣さんは何度もボタンを押したようで、バナナが何度も来た。
(押しすぎて来なくなったら困るから、そんなに押さないでほしいなぁ)
お隣「気持ち悪い。吐きそう。」
俺「初めて水飲むとなりますよね。」
お隣はボタンを押した。
「ゲロゲロゲロ」
吐いている。
(吐くと体力無くなるから、なるべく我慢した方が良いのに‥)
バナナがお隣さんを横向きにした。
(吐いたものが気管に詰まるとたいへんだしな。)
高校で学んだ応急処置について思い出していた。
息が苦しくなると力が入らなくなって。漏らしたくなるし、吐きそうにもなるよなぁ。
ノンブレスで100メートル泳いだ時みたいな感じだね。
今は管が尿道に入ってるから。漏らす心配はないけど。
息が出来ないときの気持ちは分かるよ。
つか、空気吸っても苦しいって、窒素ばかりか?
(あ、酸素吸おう。)
俺は吐かなかった。
(そういや、呼吸出来る液体ってもう完成したのかな?)