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人魚の会


 1


 今のこの世界の日本では、妖怪も国籍を得て日本人としても生活を送っている者たちが増えてきている。それは人魚であっても例外ではなかった。基本的に人間よりも長生きできる種族なのだが、お互いの生存確認のために同じ種族で集まりを開くことがあった。



 ニーナがジェシカを連れて現場再検証をした、その日の夕方。

 全国展開するチェーン店の居酒屋『胡座』長崎市思案橋支店。

 その店内の座敷を二部屋借りて、美しい人魚たちが集まっていた。

 鰐恵わに めぐみ。二三五歳。

 長崎市陰洲鱒町の蒲鉾工場『かわはぎ蒲鉾』に勤務。

 製造機械のメンテナンスと企画販売営業課。

 大阪の浪花に“出現”した人魚のフカ三姉妹の長女。身長は二〇〇センチにも達する、細く締まった身体を持った美しい“女”。吊り上がった切れ長な黒眼の中に銀色の瞳。整った顔立ちの中央を走る、高い鼻柱。薄く瑞々しい唇。上下二列になった尖った歯。適度な膨らみと張りと形の整った大きめな胸と、締まった腹回りとヒップという、大きい背丈でも肥満体型ではなく鍛え上げられて細く締まった身体つきであった。文字通り白色の肌で、差した影が薄い青色だったり紫色だったりして見える。首筋に五つ肋に三つのえらを持っていた。天然パーマの黒髪を襟足でカットにしたショートヘアで、左七三分けにしていた三の部分をオールバックにしていた。そして、鰐恵の服装は、立派な膨らみの胸元を大胆に見せるかのような大きくV字に襟が切り込んだ白いティーシャツは、一番下の肋の鰓まで露出しているほどの丈が短かった。続いて下は、腰骨ラインのジーパンから黒色ゴシック体で『YOSHIBOU』という『㈱芳原紡績工業』のメーカーロゴ入りの見せる下着の裾の顔を見せていた。

 橦木朱美しゅもく あけみ。二三〇歳。

 長崎市内『キクマル冷凍食品㈱ 長崎工場』で勤務。

 製造機械のメンテナンスとオペレーター。

 同じく、大阪の浪花に“出現”したフカ三姉妹の次女。身長は百八〇センチで、細身の人魚の美しい“女”。穏やかで切れ長な黒眼に銀色の瞳、整った顔の中央を走る高い鼻柱、薄く張のある唇、上下二列になった尖った歯。以下、白色の肌や首筋と肋のえらなどの身体的な特徴は人魚たちの共通であった。薄く線の細い身体でも、あるていどの綺麗な膨らみと大きさのある胸。黒い艶やかな髪の毛を脱色して明るいブロンドに染めて、それを右七三分けにしてから肩で切り揃えた上に毛先を内向きに巻いていた。服装は、襟元は鎖骨を大胆に見せるかたちで、広く浅くV字にした襟の黒色のカッターシャツに、同じ襟元にデザインされた黒いジャケットを羽織っており、下は膝丈より少し短い黒いベルト無しのスカート。そして、朱美あけみを一番特徴づけていたのは、顔の左側に額から頬にかけて二つの斬り傷が走っていたことであった。妖怪である彼女は、少し深い斬り傷を完全に自己治癒してしまうことは朝飯前であったが、この左目に刻まれた二つの傷だけはなぜか残していた。

 野木切鱏子のこぎり えいこ。二二八歳。

 長崎市内『㈱オオトリ自動車産業』勤務。

 製造機械のメンテナンスとオペレーター。

 同じく、大阪の浪花に“出現”したフカ三姉妹の三女。身長は百八〇センチの、細身の人魚の美しい“女”。切れ長な黒眼に銀色の瞳と、整った顔立ちの中央を走る高い鼻柱、薄くて張りのある唇、上下二列の尖った歯。こちらも、白色の肌や首筋と肋の鰓などの人魚としての身体的な特徴を備えていた。薄く細い身体に、小ぶりでも膨らみと張りのある胸、締まった腹回りに小ぶりなヒップ。右側八二分けの長い黒髪を、濃いアッシュ系グリーンに染めていた。服装は、緑色のカッターシャツをインナーにして、ほとんど黒の緑色のジャケットと膝丈スカートのツーピース。

 座敷の手前に座るフカ三姉妹。

 そして、障子が開けられて続々と人魚の参加者が到着した。

「お疲れさまです」

 磯野姉妹。声をそろえての登場。

 磯野マキ。百二八歳。

 諫早市内『㈱長崎大黒揚羽電電工業』で勤務。

 部署は広報課。

 七三分けの黒髪をポニーテールにして、サーモンオレンジのリップを引いていた。太腿までの裾が長いオレンジのカッターシャツに、ジーパン。

 磯野カメ。百二五歳。

 諫早市内『㈱タイヨウエレクトリック 長崎工場』勤務。

 部署は半導体の製造。

 顎のラインで切り揃えて毛先を内巻きカールにしている黒髪を襟足でくくっていて、マット系のローズレッドのリップを引いていた。上はノンスリーブの赤色のカッターシャツに、下はジーパン。

「お疲れさまです」

 虎縞福子。百三八歳。

 諫早市内『㈱鷺山製薬』勤務。部署は毒物の研究部。

 大きく波打つような七三分けの襟足で内向きにカールしてしる明るい茶髪はもちろん、ワインレッドのワイシャツに黒色の膝丈スカートといった彼女のお決まりの組み合わせであった。口紅は、クリアーのグロスを引いていた。薄手の黒いサマージャンパーを脱いで、座敷のハンガーに掛ける。

「お疲れさまでーす」

 英玲子。二三歳。

 旧姓、黄肌玲子。

 長崎市内楽器店アルバイト。

 つい三日前ほどに夫の英令一を磯辺毅から殺害されて、未亡人となっていた美しくも可愛い“娘”。身長は百六八センチで、薄く細い身体。人魚特有の吊り上がった切れ長な黒眼からはちょっと変わっていて、吊り上がってはいるが猫の目のような印象を抱かせる目付きをしていた。真ん中分けの艶やかな黒髪は、右側は胸まで左側は肩までというアンシンメトリーにしていた。白い七分袖のワンピースに、茶色い本革ベルトを巻いている。

「お疲れさまです!」

 潮干タヱ。二二歳。

 現在、無職。

 猫っ毛の入ったブロンドヘア娘。

 烏賊のような触手の“右手”をシュッと上げて、登場。

 今年の人魚の会では唯一の部外者として招かれた。

 そして、メンバーの中で一番小さい身長の百六〇センチ。

 足首まで裾が被さっている、黒色のノンスリーブのワンピース。

 頭から爪先まで“いつもの潮干タヱ”であった。

 そして最後は。

「お疲れさまです」

 鯉川鮒こいかわ ふな

 この席で一番の年長者。千三二五歳。

 長崎市陰洲鱒町の『萬屋 磯野商店』で勤務。

 この“人魚姫”が座敷に入ってきた瞬間に、中の空気が華々しい香りに包まれた。キラキラとした輝きも伴って、部屋をより一層明るくしていく。百八〇センチの長身で細い身体に適度な柳腰をしていた彼女には、白い真珠色の小袖がとても似合っていた。美しい瓜実顔。腰まである白色の艶やかな髪の毛を、オールバックからのハーフアップにしてアミカサゴを象った髪止めをして、薄くみずみずしい唇にはライラックのリップを引いていた。膝を浅く曲げた摺り足で、空いていた奥の方に歩いていき、裾を押さえて座布団に正座した。


 これで『人魚の会』のメンバーがそろった。

 一番奥、鯉川鮒。

 右側の頭、鰐恵。

 右側二番目、橦木朱美。

 右側三番目、虎縞福子。

 右側四番目、潮干タヱ。

 左側の頭、野木切鱏子。

 左側二番目、磯野マキ。

 左側三番目、磯野カメ。

 左側四番目、英玲子。

 以上の席順となる。


「今日は、お忙しいところを有り難うございます」

 会釈してひと言労ったのは、鰐恵わに めぐみ

 席のメンバーを見渡して微笑んだ。

 実に優しく美しい“女性”の笑顔であった。

「今年も私がこの会の幹事をつとめます」

 こう言ったあと、鰐恵はお膳の呼び鈴を押して「人数がそろったので、お願いします」とカウンターに連絡した。それからだいたい一分と経たずに障子が開けられて、店員が二人入って右左に別れていき、奥から中ジョッキの生ビールを配膳していった。

 そして。

「お疲れさま!」

 三時間の飲み放題コースが始まった。

 乾杯をそれぞれが交わしていき、ビールをひと口味わっていく。

「毎年言ってますが、今日だけは皆さん派閥や仕事の関係を抜いて同族の近況報告などして楽しんでください」

 もはや恒例となった、鰐恵によるお互いの垣根を越えた超党派で会を楽しもうとの呼びかけがなされた。いちおう、これに参加者の皆が頷いて同意を示した。



 2


「今年は、オリックスが日本一を獲るわ」

 鯉川鮒が切り出した。

 開口一番これである。

 たちまち静まり冷えていく空気。

 頬を痙攣させていく、以下“数名”の人魚。

 鰐恵わに めぐみ、橦木朱美、野木切鱏子。

 磯野マキ、磯野カメ。

 そして、虎縞福子。

 この名前の面々が、一斉に“人魚姫”へ敵意の眼差しを集中させていった。銀色の尖った歯も剥いていく。そして、よりによってこんなときに障子が引かれて、可愛い女店員二人が飲み放題コース料理の一皿目を場の雰囲気にお構い無しに配膳していった。配り終わったあと女店員二人は、そそくさと座席から撤退していった。静かに障子を閉める音がしたとき、座敷部屋のゴングとなった。

「なに言うとんのや。日本一は阪神やぞ!」

 一番手に朱美が突っ込んだ。

「違います。ホークスが日本一ですわよ!」

 二番手はマキだった。こちらも負けじと主張する。

「ああもう、鮒ちゃん。今日だけは派閥などを抜いて楽しもうって私言うたばかりやないの!」

 鰐恵が、遥かに歳上の鯉川鮒に“ちゃん”付けして突っ込んだ。

 政治、宗教、食べ物、職業。

 これらは会話の争いの種になりやすい。

 そしてそれは、例外なく野球も“同じ”であった。 

 漏れなく喧嘩になりやすい。

「セ・パ交流戦で負けたからって、なにも“ここ”で言わなくたっていいでしょ」

 半分残った中ジョッキをお膳に置いて、鰐恵は奥の鯉川鮒にひと声を投げた。この指摘を受けたわりに“人魚姫”は大して応える様子もなく、割り箸を取って割ると人差し指と親指に挟んで手を合わせて「いただきます」と呟き、一品目の小皿の料理を口に運んでいく。ほうれん草の御浸おひたしを口内で繊維を噛みきりながら、薄口醤油と白ゴマの味を堪能して“もごもご”としていった。

 彼女のこの姿を右側のそばで見ていた潮干タヱ。

 ー可愛い……。ーー

 挟むかたちで左側で見ていた英玲子も同じ思いだった。

 両脇からの目線を感じつつ、鯉川鮒は御浸しを堪能する。

 次の料理を頼んでから、鰐恵も一品目に箸をつけて味わう。

 参加者が中ジョッキを空にして、それぞれノンアルコールを頼んで幹事の鰐恵がそれらをまとめて注文していく。

「みんなどうしたの? ノンアルコールって」

「だって姉さんも入れて、みんな“足”を持っているじゃない」

「そうだったわね」

 次女の朱美の指摘を受けて、鰐恵は納得した。


 二品目の刺身の盛り合わせが配膳されて。

「ねえ見て、鱒が入っているわ」

 そう箸で白身を摘まんで顔の位置まで上げて、野木切鱏子のこぎり えいこは嬉しそうに声をあげた。その白い断面には脂がよく乗っていて、うっすらと虹色に光っていた。

「お姉さん、この鱒どこのですか?」

「陰洲鱒町のですよ」

「ありがとうございます」

「いいえ、どういたしまして」

 鱏子えいこにこう返したあと、女店員は小さく笑って座敷から出ていく。厨房隣のカウンターへ戻ってきて、同じ年齢層と少し歳上の他の女店員たちに微笑んだ。その様子を見た襟足から三つ編みしている三〇歳の美女が、座敷から帰ってきた可愛い同僚に聞いていった。

 連れてこちらも微笑む。

「どうしたの? 嬉しそうにしちゃって」

「分かりました?ーーーだってあそこの座敷の女の人たち、可愛いんですもの」

「あ。やっぱり“あなた”もそう思ってたんだ」

 その答えに、美女店員が笑みを浮かべて納得していった。


 『人魚の会』の座敷に戻る。

「そういえば、最近カラオケに行ってます?」

 と、出汁醤油だし じょうゆに浸した鰹の切り身を口に運びながら潮干タヱは英玲子に話しを振った。口に入れた鯛の切り身をしばらく咀嚼して小さくしてから、玲子は答えていく。

「行ってない」ちょっと不満そう。

「え、そうなんですか。信者からの誘いはありますよね?」

「教団は“ほとんど”男だよ。同じ信者でも女友達がいないのは嫌だな」

「あーー……」

「令一さん、あの糞蛙クソがえるに殺されちゃったし。そして私も奴から殺されかけた」

 そう言って、目付きを鋭くして、銀色の瞳でタヱを強く射す。

「令一さんは私によく付き合ってくれていたんだよ」

「う……」咀嚼したまま、眉を寄せた。

「ーーーと言っても、あの蛙は手加減を知らないというか、手加減ができないみたいね。生まれつき。だから同じ調子でやってしまうのよ。そして“これ”は、あなたの“せい”じゃないよ」

「ありがとうございます」胸の“つっかえ”が取れた。

 よりによって、なんで磯辺毅のために私が……。

 可愛い年下の友達から“憑き物”が離れたのを確かめた玲子。

「話しを戻すけど。私がカラオケに行ったらどうなるか、タヱちゃんも知っているでしょう?」

「毎回マイクを壊してしまう……」

「気分が乗ったときに必ずね」

「店員さんも不思議がっていましたね。中身だけ焼けて破損しているって」

「まあ、わざとじゃないんだよ」

「分かってます」

 そして、お互いに笑顔で見合わせた。

 この若い娘二人を見ていた鯉川鮒。

 咀嚼し終わった鱒の切り身をお茶で流し込んで話しだした。

「雌の人魚は個体差はあれども、歌声は人間や他の生き物を魅了するだけでなく、破壊することも可能なのよ。気をつけて使いなさい」

「…………。ありがとうございます」

 思わぬところから指摘を受けて、玲子は礼を述べて返した。

「そういえば、鮒さんも歌うんですか?」

「……え?」不意打ちの質問に箸が止まる。

 皆へと銀色の瞳を流したのちに、口を開いた。

「私、カラオケには興味ないから」

「へえー。そうなんですか」

 なにやら含み笑いで玲子が納得した。

 これにタヱは稲穂色の瞳で目の前の人魚の娘を見ていく。

 ちょっと恥ずかしそうに鯉川鮒は玲子を睨んだ。



 3


 三品目。

 小鉢の肉じゃがが配膳されていく。

 鱏子えいこが箸で、煮汁のよく浸みた馬鈴薯じゃがいもを摘まみ上げて「今さらだけど、マキのそれってホークスカラーだったの?」と聞いてから口に入れた。これを受けた瞬間、マキは箸を持った手で口元を押さえて吹き出した。二回大きく咳き込んだあとに、鱏子に顔を向けた。

「違います。わたくしのパーソナルカラーです」

「んー。ありがとー」

 と、馬鈴薯を咀嚼しながら微笑む鱏子。

 これを見たマキとカメは、思わず箸を止めた。

 ー可愛いいい!ーー

 我が妹に目じりを下げていく鰐恵わに めぐみと朱美。

 マキが代表して、鱏子の頭を撫でていった。

 この様子を楽しげに見ていた虎縞福子。

 糸蒟蒻いとこんにゃくを啜って、小さく笑った。

「最近サバゲー行っているの?」

 朱美からの問いに、福子は口内のを咀嚼しながら。

「ここ数ヶ月行ってない」

 “もぐもぐ”して答えた。

 そして、隣のタヱから触手の“手のひら”で頭を撫でられた。

「福子さん可愛い」

「うふふ。ありがとー」

 と、福子はタヱを見て礼を返した。

 お茶で流し込んで糸蒟蒻を食べ終えたとき。

「検死官の“彼氏”は連れてこなかったの?」

 鯉川鮒からの問いに、福子が大きく咳き込んでいく。

 三回ほど咳き込んだのちに、箸を小鉢に置いて指先で鼻を押さえた。

「あかん。鼻水が……」

「はい、ティッシュちゃんや。ひとつもろーて」

「ありがとうございます」

 鰐恵から差し出されたポケットティッシュを受け取り、後ろを向いて鼻を噛んでいく。二回ほど噛んで座敷のゴミ箱に捨てて、福子は再び正面を向けて座り直した。それから、ちょっと恥ずかしげに奥の“人魚姫”を睨んだ。よく出汁の浸みた人参を咀嚼しつつ、鯉川鮒はほくそ笑んでいく。

「福子さん、彼氏いたんですね」

 タヱが少し驚きを見せて聞いてきた。

 思わぬところからボールを投げられて、福子は困った。

 できれば流したかったのだが。

新島悟にいじま さとるさんですか?」

 二発目のボールを投げてきたタヱ。

 ここまで聞かれたら、さすがに無視するわけにもいかず。

 福子は決意して口を開いていく。

「そうだけど。なんで彼を知っているの?」

「昨日、私たち警察署で事情聴取を受けたんです。そのときにその検死官の人がきました」

「え? そうだったの?ーーーでも、なんでタヱちゃんが?」

「教団からの刺客達を撃退したからです」

「…………刺客?」

「恵さんの娘さんたちと、玲子さんとその旦那さん」

「ええ……」ドン引きしたのちに、幹事の顔を見た。

 鰐恵は、ブロンドヘアの娘へと申し訳なさそうに。

「ごめんなさいね、タヱちゃん。蝶之介のヤツが独断で娘たちをけしかけてしまって。私も仕事から帰ってきて初めて知ったから、びっくりしちゃった」

「いいえ、いいんです。私勝ちましたから」

「タヱちゃん強いのね。頰白ほほしろにも勝ったんでしょ」

「いいえ。私は長女さんとは闘っていません。彼女の相手になったのは、刑事さんと榊さんです。大の男二人の攻撃をものともせずに、一発で彼らを倒しましたよ」

「娘、強いのね。その二人はお気の毒だけど」

「なんなら“ついでに”磯辺毅もぶん殴ってほしかったです。ーーーと、思いました」

「…………タヱちゃん?」引きぎみな笑顔になる。

「言いすぎたとは思っていません」

「なんか、彼に恨みがありそうね」

「ええ。ーーーちょうど先月末に私の家に侵入して、冷蔵庫を漁って私が取っておいたゼリーを勝手に食べていたんですよ、あの蛙」

「は?」参加者の人魚たち、一同に驚愕。



 以下、潮干タヱの話し。

 それは七月末日。

 アルバイトを午前中で終えて帰宅していたタヱ。

 父親の舷吾郎は漁のあとに営業。

 母親のリエは諫早市の電機会社で仕事中。

 ということで家にいるのはタヱひとりであった。

 シャワーで汗を流して部屋着に着替えたあとに、欠伸をしながら八畳間に入ってきたとき、喉が渇いたのでなにか飲みたくなって台所へと足を運んだそのときだった。トレンチコートの蛙男こと磯辺毅が潮干家の桜色の冷蔵庫を勝手に開けて、中身を勝手に漁ってライチのゼリーを勝手に食べていたではないか。この光景に、タヱは表情を固くしていく。これを見られた磯辺毅は、たちまち焦り出して血の気を引かせていった。空になったゼリーのケースと白いプラ製スプーンを慌てて後ろに放り投げて、その二つがたまたまシンクの中に入った。

「のののの喉が、渇いて、いたんだ、な…………」

「お前、私のゼリー食っただろ?」

 額に青筋を立てて、鈍色の尖った歯を剥いて、タヱは聞いた。

 磯辺毅が黒曜石のような黒い眼を泳がせていく。

「ききき、君の、ゼリー、だったのか、な…………」

「そうさ。私がバイトで稼いで私の金で買った私のゼリーだよ。文句あるか?」

「わわ悪かったんだ、な……」

「謝っても私のゼリーは帰ってこないんだよ!」

 怒りのひと声と同時に、爪先が切先となって横に走った。

 毅が足と上体を後ろに引いて避けたときに、タヱのタックルを腹に食らってそのまま裏口の扉を突き破って飛び出した。落下で受け身をとって転がり、二人は離脱して構える。

「そそそっちから、先に手を出したんだ、な……」

「家宅侵入と盗み食いしといて、ざけんな!」

 怒りのひと声とともに、タヱは力強く跳ねた。

 地面の土砂と雑草が深く抉られて、茶色い飛沫を上げた。

 同時に、磯辺毅の爪先が斜め上にグンと伸びて槍と化す。

 ー宙に浮いたら、うう動きがとれなくなるん、だな……。俺の勝ち、なんだな!ーー

 と、一発逆転勝利を掴んだ蛙男であったが。

 ところがどっこい。

 タヱの跳躍力は磯辺毅の予想を上回り、蹴り上げられた爪先よりも上に伸びて、足刀の茶色い革靴に白い烏賊のような触手の“手のひら”が乗せられたと思った、そのとき、丸めていた黒衣の身体から裸足の足刀が太いとげのごとく伸びてきて、蛙男の横顔に炸裂した。ゴツッと硬い骨が鳴る音を立てて、タヱは反動を利用して宙で背面飛びして片膝を突いて着地した。背中を丸めて、なんとか受け身をとって転がり、立ち上がっていく磯辺毅。今の蹴りは、タヱの内臓を破壊するつもりで出した。そのはずであったが、目の前の黒衣の烏賊娘は、つよしを上回っての強力な一撃を食らわせたのだ。この陰洲鱒町特有の筋力と耐久性を供えていなければ、今ごろは“お陀仏”していたであろう。そう磯辺毅は自身の生まれに感謝した。しかも、今食らったタヱの蹴りは本気であったのか? その割りには、弱い感じがしていた。

 確かに力強い蹴りではあったが…………。

 唐突に景色がボヤけて、頭が大きく揺れる感覚を味わって驚いていくつよし。とっさに片足を横に出して、踏みとどまった。

脳震盪のうしんとうかい? 早かったね」

 鈍色の尖った歯を見せて、タヱは笑みを浮かべた。

 この言葉に、得たいの知れない恐怖を覚えて、磯辺毅は気力を振り絞って地面を蹴って宙を舞った。そして、ほぼ同じタイミングでタヱも宙に跳んだ。硬い鞭のように横から振られた毅の足が、タヱの頭を狙っていく。そのタヱが、稲穂色の瞳を金色に光らせたかと思った瞬間、間合いを急速に詰めてきて、突き出した膝で毅の顔面に当てた。間髪を入れずに、毅の脳天に肘鉄を落とした。落雷が直撃したかのごとく、上から下に突き抜けていく大きく太い電撃と激痛を味わった蛙男。そしてこれは、間違いなく疑う余地がない潮干タヱの本気であった。その結果、磯辺毅は宙で意識を飛ばして、視界を暗闇の中へと落として気絶した。

 それからだいたい三〇分ほど経ったか。

 八畳間で意識を戻した毅は上体を起こして部屋を見渡していくと、座布団で正座しているタヱと摩周マルに気づいた。娘二人して、口を強く結び鋭い眼差しで不届きな蛙男を睨んでいたではないか。この様子を見たとたんに、磯辺毅は謝ろうと判断した。文句なしの完敗を味わっただけでなく、見棄てられることなく介抱されていたからだ。ここまでされたのなら、素直になるしかない。畳で直に正座した毅は、両手を突いて頭を深く下げていった。

「俺が、悪かったんだ、な……」

「よろしい」

 厳しい眼差しのまま、タヱは鈍色の尖った歯を剥いた。

「私は“力”を使った。けれど加減した。あんたを殺しても“なんにもならない”からだ」

「たた、確かに、そうなんだな」

「あんたの悪い噂は私の耳に入ってきていた。毎日でなくとも、その量は少なくなかった。しかも、あんたは浜辺亜沙里さんにまで手を出したじゃないか。私の友達だぞ。問題を抱えている人だといっても、彼女は決して周囲の人を壊すようなことはしなかったんだ。それは、海淵龍海うみふち たつみさんが支えているからだよ。ーーーそれを、それを、あんたは、あんたは…………。ーーー最低だ」

「そそそれは……、彼女のお母さんと君のお母さんから蹴られて、なな投げられて、実感したんだ、な……」

「ふざけんな! お前そのあとに、みのりさん襲っただろうが! なにが実感しただ!」

 ダン!と強く畳を踏み出して、片膝になってタヱは触手の先端部を細く丸めて磯辺毅を“指さして”怒鳴った。これを受けたトレンチコート姿の蛙男は、肩を竦めて背筋を伸ばした。その様子を厳しい表情のまま黙って見ていた摩周マルが、隣のタヱを眉毛のないクマのある三角白眼でアイコンタクトしていく。隣からの合図に応えるかのように、タヱも眉毛のない稲穂色の瞳でマルと見つめ合っていく。一秒か二秒ほど交わしたのちに、二人の娘は顔を再び正面の毅に向けて、タヱから切り出した。

 片膝から正座に直して再び語り出していく。

「正直、あんたは更正が難しい、というか出来ない。だから今からは私とマルちゃんの下で動いてもらうよ」

「どどど、どういうこと、なんだ、な……?」

「言葉通りだよ。私たちの監視下のもとで町のために強力してくれということ。だからお前、今度他の女の人に変なことしてみろ。さっきの倍で“どついて”、片タマにしてやるぞ」

「ひええ……っ。わわ分かったんだな……」

「分かればよろしい。ーーーじゃ、そういうことで」

 タヱとマルがともに鈍色の尖った歯を見せて、笑顔になった。



「家宅侵入に盗み食いか……。まあ、どつかれてもしゃーないわね」

 そう言って、鰐恵は残りの馬鈴薯を口に入れて小鉢を空にした。磯辺毅に同情の余地無し、といった顔をしてタヱに返していった。しかも、磯辺毅と本気で一戦を交えて圧勝したのは今のところ潮干タヱだけである。煮汁によく漬かった人参を口に運んで咀嚼していき、玲子は三品目の小鉢を空にした。他の面々も、残った牛肉の切り落としや糸蒟蒻いとこんにゃくや玉葱や太葱ふとねぎなどを食べて、各々の小鉢を空にしていく。

「私がアイツを下に置いているあいだ、好きにさせませんよ」

「うふふ。頼もしいのね」

 タヱの発言に、鰐恵は愛娘を見るかのような笑顔になった。



 4


 四品目、串焼きの盛り合わせが配膳された。

 胸肉、腿肉、鶏皮、セセリ、砂肝。

 タレ焼きと塩焼きの二種類の計十本。

 なかなかのボリュームである。

 タレ焼きの胸肉を三つ銀色の尖った歯で挟んで、串から引き抜き、口の中で噛み切っていく鯉川鮒。鶏肉にありがちなパサパサとした繊維質の食感が不思議と感じられず、柔らかくて張りのある肉質であった。あまりの美味しさに「んふふ」と小さく喜び、“人魚姫”は味を堪能していった。

「ねえ鮒ちゃん。あなたちょっと可愛すぎない?」

 この様子に、たまらず橦木朱美は口を開いた。

「……ん?」悪い気はしないので、嬉しそうにキョトンとした。

「まあ、いいけどね」目じりを下げていった朱美。

 皆もそれぞれ串焼きに手をつけていく。

 福子がノンアルビールで口内の砂肝を流し入れたとき。

「新島君とあなた、最近どうなの?」

「ぶっっっ!!」

 鯉川鮒からの質問に、二口目のノンアルビールを吹いた。

 大きく三回ほど咳き込んだ。

 隣のタヱから背中を“さすられて”いき、ありがとうと返す。

 そして、物凄い目付きで奥の“人魚姫”を睨んだ。

 恥ずかしさに頬を赤く染めて。

「その話、もう終わりだと思っていたのに」

「そうかしら? 気になっているのは、私だけじゃないみたいよ」

 この言葉に、福子は顔を上げて参加者を見ていく。

 すると、皆が皆、福子と検死官の結末を知りたがっている表情を浮かべていたではないか。まあ、隠すようなことでもないしなあ、と思った福子は軽い笑みを見せたあと、語り出した。

さとるくんとは、今も友達よ」

「その割りには、あなた、彼と身体の関係を持っていたんでしょ? 男女の仲とは違うの?」

「友達でも“寝る”ことはあるわ」

「お互いに恋愛感情がわかなかった……、と?」

「珍しいでしょうけれど、悟くんと私は“そう”なのよ」

「じゃあ、今も彼と“寝る”ことがあるんだ」

「いいえ。その関係はこの前切ったわ」

「なにかあったのね」

「そう」

 鯉川鮒との問答に、福子は嬉しそうに肯定した。

「悟くんね、好きな人ができたって私に言ってきたのよ」

「へえー。青春ね」

 こちらも珍しく頬をほころばせていく鯉川鮒。

「で。彼の好きな人って誰?」

「分からない。恥ずかしいみたいで教えてくれなかったけど、事情聴取に来た人ってだけ答えてくれた」

「広範囲すぎない?」

「広すぎて的を絞れなかったわ」

 ある意味肝心な話を終えて、安堵した福子。

 ありがとうね、と微笑んで返した鯉川鮒。

 そして、その隣のタヱと目の前の玲子の様子がおかしいことに気づいた福子。

「どうしたの?」

 若い娘二人に目線を送って、聞いていく。

 タヱが少し恥ずかしげに福子から目線を反らして。

「福子さんの、ちょっと、その……。“そういうところ”を思わず想像しちゃって……」

「それに福子さん、エッチな身体しているから……」

 と、玲子も頬を赤らめて目線を外した。

 これに対して、みるみると顔中耳まで真っ赤になった福子。

「いやいやいやいや。ちょっと待って。なんで二人が恥ずかしがってんの? そんな反応された私のほうが恥ずかしいんだけど!ーーーちょっとやめて二人とも」

「実際“やらしい”スタイルしてんだもの。しゃーない」

 遠くから肯定してきた鰐恵に、福子は銀色の尖った歯を剥いた。

「誰が“やらしい”スタイルか。恵さんこそドスケベボディじゃないの」

「ど……、ドスケベボディ……」

 鰐恵の隣で鶏皮のタレ焼きを咀嚼しながら、朱美が。

「姉さん、エッチやもんな」

「せや。町で二番目にエッチな身体やもん」

 次に、目の前で砂肝を咀嚼している鱏子からもきた。

 妹二人から言われてしまい、鰐恵はみるみる顔中を赤く染めていった。

「では、町で一番って誰です?」

 タヱからの質問に、鱏子は微笑んで答えていく。

「ズキちゃんよ」

「ホオズキさんですね」

「そう」

 ノンアルのカシスソーダで砂肝を流し入れて、続ける。

「彼女は町で一番のダイナマイトボディ。ーーーでもね、昔は二回り以上細かったのよ」

「どれくらい?」

「あなたのお母さんくらい」

 潮干リエのことである。

 ちょっと驚きを見せるタヱ。

「ええ……! 細い」

「ねー。信じられないでしょうけれど」

 ニコニコして、鱏子は相づちを打った。



 5


 五品目。

 蛸飯たこめしあさりの味噌汁。

 薄口醤油で味付けされた蛸飯を堪能しながら、鯉川鮒こいかわ ふな鰐恵わに めぐみに話しかけていく。

「そういえば、恵さん」

「はい。なんでしょう?」具材の蜊を咀嚼。

「私のお店『CLUBクラブ KINGキング OFオブ THE HERRINGヘリング』の二階か三階の奥の廊下か部屋から、ときたま虹色の点滅しているといった報告を受けているのだけど。ーーーなにか分かる?」

「え……? こわ……。ーーー分からない。私それ、初めて知ったよ。誰から聞いたの」

「ボーイの翻車こぼしくるま君から」

「マンボウ君からかね」

「そうそう」

 と、蜊の味噌汁を啜る鯉川鮒。

 そして、蛸飯を口へと運んでいく。

 “もぐもぐ”していく“人魚姫”を見ながら、鰐恵は。

「なんでまた、そういう噂話を?」

「あのね、昨日今日の話じゃないのよ。前から聞くようになった現象」そう眉を寄せた。

「どれくらい前から?」蜊の味噌汁を啜っていく。

「一年くらい前からね」

「ミドリちゃんが“消えた”ころだね」

「そうそう」

 相づちを打ったあと、ノンアルのカシスオレンジをひと口。

「そのお店で“黒服”もしてくれている恵さんなら、なにか分かるかなと思って聞いたの」

「期待に応えられなくてゴメンね。私も分からないんだ」

「それならいいんだけど」

「だけど? なに?」

「恵さん、本職があるのに私のお店で“黒服”まで頼んで任せっきりで悪いと思っているのよ。その上でのことなんだけれどね」

「そんことなら、良いよ。“リュウグウノツカイ”には週三日だし、大したことでもないわ。それに、あなた忙しいでしょう? 萬屋よろずやの営業で大変だと思うし」

「ありがとう」

「いいえ、どういたしまして」

「ーーーで。それらを含めたことなの」

「どうしたの?」

「『CLUB KING OF THE HERRING』も『CLUBクラブ LUNAルナ LIONライオン FISHフィッシュ』にも、“太客ふときゃく”が来ていることは知っているわよね。政治家、芸能事務所の社長とその所属芸能人、法人関係者、文学作家、人権保護活動家、司法と警察関係者、マスコミ関係、有識者、スポーツ選手、そして宗教家。世に言う“浮き世の人”ね。みーんな、磯野商事のお客様。巨大化したわ」

「本当に大きくなったわね……。ーーーしかしそれ、あなたんとこの萬屋だけじゃ“持たせられない”でしょ」

「…………。なにか言いたそうね?」

 たちまち鯉川鮒の目付きが鋭くなった。

 そして生まれていく緊張感。

 鰐恵は構うことなく続けてきた。

「その“太客”たちの大半は院里学会から流れてきた分なのよね」

「あとの残りの大半は私と波太郎さんのよ。あと、銭樺も」

「教団は?」

「“あっち”にいるのは信者だけ。それ以上でも以下でもないわ」

「そう。それで?」

「それでね。あなた、“私のクラブ”でちゃんとお客たちに接客してくれているのでしょうね?」

「大丈夫。私なりにできる限りのことはしているわ」

「良かった。それならいいのよ」

 そう微笑みを見せたのちに。

「そして、もうひとつの“私のクラブ”では、朱美さんの息子と娘が”黒服”をしてくれているわ。ーーーあの二人は“よくしてくれている”わよ。素敵な子供たちね」

 このように鯉川鮒から笑みを向けられたとき。

 橦木朱美は、なんだか悲しげな表情を微かに見せて。

「そう言ってもらえて、嬉しいわ。ありがとう」

 と、静かに返した。

 その妹の後ろ頭を優しく撫でていく、鰐恵わに めぐみ

 そして、視線を隣の朱美から鯉川鮒へと流して。

「鮒ちゃん。“仕事のこと”だったら飲み会が終わったあとならいくらでも聞くわ」

「そう? ありがとう」

 と、微かな笑みを浮かべた。


 仕切り直して。

「なんだか皆さん、“いろいろ”と大変ですね。長生きしていると」

「た、タヱちゃん……? それに触れるんや?」

 鰐恵が、なぜか狼狽うろたえていく。

「私と玲子さん、まだ人生四分の一に満たないですけど、恵さんたちは二周目から三周目ですよね」

「本当。凄いよね」

「ねー」

 合いの手を打ってきた英玲子えい れいこに、タヱは相づちを打って返した。そろったように頬を痙攣させていく、鰐恵と橦木朱美と野木切鱏子と磯野マキとカメ、そして虎縞福子。鯉川鮒は、奥の座席で緑茶を啜っていた。

「ところで鮒さんは、何周目でしたっけ?」

「十四周目じゃない?」

 タヱの質問を玲子が答えたことが追い討ちとなり、その直後、“人魚姫”は口内の緑茶を緑色の霧のごとく吹き出した。それはまるで、かのプロレスラーのグレート・ムタが四角いジャングルで吹き上げていった美しい毒霧のようであった。その緑色の美しい霧は、繋げたお膳にへと霧雨のごとく降りかかっていく。幸い、配膳されていた参加者の皿は皆が皆締めの蛸飯と蜊の味噌汁まで美味しく頂いて、空になっていたため心配はなかった。

 それはそれで。

 大きく三度ばかり咳き込んだ鯉川鮒は、額に青筋を立てて。

「ぶぶ漬けにしたろか」

「私は柚漬けの沢庵が好きです」

「私は奈良漬が好き」

 タヱと玲子の好きな漬物を発表されてしまった。

 これらに言葉を失っていく鯉川鮒。


 そして、人魚の会は、このまま御開きになった。



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