第六十四話 制限時間③
事務所についた私。
「今日は半日しかないからボイトレだけね」
と、先生は言う。よかった…。筋トレなしかぁ。
「その代わり、筋トレいつもより多めね」
「えっ?ボイトレだけじゃ…」
「何を言ってるの?ダンスがないだけよ。筋トレは毎回やるわ。ちゃんとストレッチしときなさーい」
上げて下げるのうますぎでしょー!!!???
「今日は筋トレを30分間、休憩を挟みながらやるわ。回数足りなかったら、もう3セット追加ね」
鬼だ…。鬼コーチだ…。鬼トレーナーだ…。
なんとか筋トレを終えた私は、続けてボイトレに入る。
「声出し足んないわよ!もっと大きくっ!」
喉壊れるぅ…。
「よーし、いいわ。今日は終わり。しっかり喉を休めなさい」
「はーい…」
「それでね、あなたにいいニュースと悪いニュースがあるんだけどどっちから聞きたい?」
こーゆー時、私はいいニュースから聞く派だ。
「いいニュースで」
「いいニュースは、あなたの短尺の歌唱動画を撮ることになったわ」
動画…。動画!?
「ホントですか!?それ」
「当たり前よ。嘘言っても仕方ないもの」
「それで、悪いニュースというのは?」
「それが1週間後ということよ」
えぇ!?1週間!?
「あ、後ついでに。これ、あなたのデビュー曲だから」
頭追いつかなぃぃい…。つまりデビュー曲を短めの動画にするのが1週間後ってことだよね…。
「ハードすぎません?」
「せっかくの機会なんだからしっかり頑張んなさい。これが成功すればデビューはほぼ確実よ。社長からの試練のようなものね」
デビュー…。
「はいっ!」
「ん。いい返事。じゃあ今日はおしまい。帰っていいわよ」
私は帰路につくのだった。