第六十話 ついに始動?
開いた扉の先にいたのはなんと社長だった。
「紗夜、君はもうデビューだ」
と、驚きの一言を放つ。周りがざわつき始めた。
「社長、私はレッスン始めて、一週間しか経ってないですよ?」
と、私は聞いてみる。すると社長は、
「紗夜、君の歌声は人類史上最高と言ってもいい。君のことを待っている人々がたくさんいるはずだ。これからのことを話すから、少し来てくれ」
周りは羨ましがっているような、妬んでいるような視線ばかりだ。
そして、そのまま私は社長室へ連れて行かれた。
〜社長室〜
「改めて話そう。先程はあんなことを言ったが、紗夜。君の歌声はまだまだ荒削りだ。デビューには少し及ばない」
それは私自身が一番わかっていることである。私は尋ねる。
「ではなぜ、デビューなんて言ったんですか?」
「あの環境は君を成長させるのに適していない。君も感じているだろう?」
それは確かに感じていた。もっとステップアップできる方法があるはずだ。
「それに、顔バレのリスクもあるしな。個人レッスンを再開することにした。1ヶ月だ。1ヶ月とる。この期間内にうちの看板になれるような実力を身に着けてくれ。そしたらデビューの準備を進める。一応社内の機密だからあの子達も、周りには話したりしないと思うが…」
そういえば、社内機密は漏らしたら即解雇だったっけ。私は少し考えて、
「わかりました。必ずや実力を身に着けて見せますっ!」
「うん。いい返事だ。期待してるよ」