私と彼女の、些細(ささい)な秘密
デートに遅れそうな私は、体を霧に変えて高速移動をした。常人には捉えられず、霧から元に戻る際は時間を止めるから、誰にも目撃されない。
待ち合わせ場所へ急ぐと、愛しの彼女が横断歩道を渡る姿が見えた。ああ、彼女も来たばかりなのだと安堵してたら、横からトラックが信号無視で疾走してくる!
私は世界の時間を止めた。全てが静止した中、私はトラックの前で実体化して、拳で前面を殴り運動エネルギーを奪う。それから私は、世界に時を戻した。再び周囲が動き出す。
「ほら、車が来ると危ないよ。エスコートしてあげる」
「……あれー、近くにいたの? 気づかなかったー」
彼女の手を引いて、横断歩道から出る。トラックは慣性も無くなって停止状態だ。驚いてる運転手を尻目に私たちは歩いた。
吸血鬼で変身、時間停止、運動力吸収能力を持っているのが私の秘密。そして彼女から「実は私のお母さん、吸血鬼狩人なの」と言われて、騒動が起こるのは少し先の話だ。