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8.愛しい子は恐怖の娘

この回で、ストックしていたものが無くなりましたが・・・

引き続き、作品が完結する時まで頑張っていきたいと思いますので、温かい目で応援の程、よろしくお願いいたします。


(ああ!なんて事だ!アンジェリカが、あの麗しい少女であったアンジェリカが、少し離れた間に魔女となってしまっていた!)


ユーリシアスは苦悶の表情を浮かべながら、もう一度、今居る部屋を見渡しながら、以前の様相を改めて思い起こしてみる。


さすがは、一国の王太子の自室とあり豪華な内装が施され調度品も贅を極めていた・・いや、はずだったが、今は、その面影が薄ーくなっている。


黒髪の少女へと変貌したアンジェリカが思いのまま魔法を放った為に、王太子フランツの自室は戦闘攻撃を受けたようにめちゃくちゃに破壊されていた。


まあ、原因のもう一つは、あの城を襲った大きな揺れもあるのだけれど・・・


だがしかし、被害を拡げたのは、この黒髪の少女(アンジェリカ)である。


改めて、ユーリシアスはアンジェリカに向き合った。


「アンジェリカ、質問してもいいですか?」


コホンっと、一つ咳払いをしたユーリシアスがアンジェリカを見つめた。


今の彼女にも、サファイアの瞳は健在であり、その瞳をみる分には、アンジェリカは変わらないようには思うのだが・・


「ユーリシアス、改まって何でしょうか?」


大きなサファイアの瞳を瞬かせて、ユーリシアスの声に応えるアンジェリカ。


髪色が変わり少し雰囲気までもが黒さを感じはするが、相変わらずの美少女のアンジェリカに、この状況の経緯について問うてみたのだが・・・


「やはり、気になりますわよね?」


(当然でしょうが!・・こんな惨状を目にしていながら、気にならない者がいるのなら連れて来て貰いたい!)


ユーリシアスのこめかみがピクピクと動いてみせる。


「ええ、まぁ、これほど、部屋の状況や人の姿までもが大きく変わっていますと、やはり気にはなるものですよ?」


「そうおっしゃられますと、そうかもですわねぇ?」


そうユーリシアスに指摘された上で言われた為に、漸く部屋の様子などを気にしだしたアンジェリカは戸惑いながら辺りを見回している。


「ちょっと、魔法の力の加減が大きかったみたいですわね?わかりましたわ、これからは気をつけますわ!」


(えっ?そこ?)


思わずアンジェリカの視点に驚いてしまい、ユーリシアスは暫し、返す言葉を探してしまった。


「いや、まて!アンジェリカ!きみは何故こんなことをしたんだ!と聞いているんですよ!」


アンジェリカとの言葉の疎通がうまくいかないユーリシアスは、少しイライラとした気持ちが芽生えて来たが、当のアンジェリカには焦りも何にも持つこともなくマイペースである。

暫くして、漸く、アンジェリカは、ポン!と手を打ち、ユーリシアスの質問の意図を今になり理解したのだった。


「あぁ!、そのことですか?それは、フランツがオイタをしたからでして」


といってから、アンジェリカは自分の左手をすっと前へ差し出して、その手の掌を上へ向けた。すると、淡い光が掌を覆ったかと思えば、見覚えのある指輪が姿を現したのだ。


「フランツが、わたくしからユーリシアスの指輪を奪い取ったので返して頂く為に、ほんの、ちょこっとですが、わたくしは魔法を使ったのですわ・・」


と口にしながら、ぼわりと光を手に浮かばせたかと思うと、その光は、フランツの自室の天井に向かって放たれたのだった。

天井に光があっという間に届いたと思ったら、今度は、バアーーンと衝撃音が室内を走った。


「まあ、こんな感じで、ほんの、ちょっことですが、魔法をしましたわ」


アンジェリカの放った魔法により、今度は、天井が黒く焼き焦げてしまった。そして、煙がまだ充満する中、パラパラと天井の一部が部屋にも降り注ぎ始めた。


「ア、アンジェリカ!」


ユーリシアスの美しく整った顔が、驚愕で崩れたのは言うまでもない。


「はい!何でしょうか?」


一方、対照的に、ユーリシアスの疑問にきちんと答えれることが出来たと思っているアンジェリカは、美しく微笑んでいるのであった。


「今!なんで実演をしたんですか?!」


自分としては、完璧にユーリシアスの質問へ答えた筈であるのに、何故か、目くじらを立てて怒るユーリシアスの行動には、アンジェリカは理解できず、ただ驚いてしまっている。


「えぇっと?、ユーリシアスに聞かれたからなのですが、今の魔法は解りづらかったでしょうか?」


困惑するアンジェリカに、呆然とするユーリシアス、二人は話が嚙み合わないでいる。


(おい?、どうしたんだ?アンジェリカ・・・きみは、そんなにポンコツだったのですか?)


ショックを隠し切れないユーリシアスだが、このままでは進まないので、次なる疑問をぶつけたのだった。


「では、仕切り直して改めて聞ききますが、そこの・・あそこにいる人形?、っぽい者はどうしたのでしょうか?」


「あぁ!、あれですね?」


ユーリシアスの言葉を受けたアンジェリカが、床に転がる少女を人差し指で示し返してきた。


「あれは、ミーナですわ!」


(やっぱり!ミーナなのだね・・・、そうだと100%確信はしていましたが、そうだったのですね・・・)


そんなアンジェリカの答えに、肩を落としてしまうユーリシアスであるが、ここに来て、また更なる衝撃が加わろうとする。


「ミーナは教会の頃から問題を起こしてばかりいましたから。しかもですね、今日は更なる悪事を働いたので、ここは、彼女の本当の姿を知る為にですねぇ、こうやって・・・」


ユーリシアスの質問の為、アンジェリカは一生懸命、ミーナへの制裁?に至るまでの経緯を語っていた時、不意に、すーっとアンジェリカの利き腕が上がり、ユーリシアスの方に、何故か掌をぱーっと広げて見せたのだった。


(えっ?)


暫し、可愛らしいアンジェリカの掌を見つめるユーリシアスだが、その視線はすぐに反らされた。


「ま、待て!アん、アンジェリカ!打つな!実演は結構ですよ!」


思わぬ大声が出てしまったが、アンジェリカの行動を止めれたことを確認してから、漸く、ユーリシアスは落ち着けた。そんなユーリシアスの身体には冷たい汗が伝っている。


(た、助かりました。いやでも、今のあれ、何をしようとしたんですか?しかも、誰に向かって、何を発しようとしたんですか!!)


色々と、整理した時、さぁーっと、血の気が引いて行くような感覚をユーリシアスは体験をした。


「まあ、そうですの?さっきのが解りにくいかと思って、より正確なものをお見せしようと思いましたが、さすがはユーリシアスですわね!想像で理解できますのね?」


美しい微笑みを見せながら、アンジェリカが楽しそうに話し出す。


「より正確に・・?」


アンジェリカの言葉に息をのんでしまった。そして、思わず、床に転がるミーナを見てしまった、ユーリシアスである。


(私は、危うく、あれになっていたのか?もしかすると、自分自身に、癒しの魔法を施すことになっていたのかぁ?)


とうとう、ユーリシアスは脱力してしまった。


そんなユーリシアスの瞳には、まだ、正気を失ったまんまのフランツが映る。


(だいたい、この王子が悪いんだ!おまえとあのアバズレが事を起こさなければ、アンジェリカはあんな娘にはなっていなかったんだぞ!とんだ、魔物が出来たではないか!)


ユーリシアスは、この現状を引き起こした元凶を睨みつける、だが、フランツとは視線は交わされない。


「あぁ゛ーーー!!」


何かもう、ほんとイライラする。こんなの自分ではないと思いながら、とにかく、自分が今できること、やるべきことを考える。そして、考えた末に、ユーリシアスは両の手を天に向けた。


(とりあえず、人命救助が必須だな!)


それは、良識を持ち合わせるユーリシアスが出した答えだった。


しかし、魔法をかける前に、ちらりと、ミーナの姿を再度、目に留めて考える。


(あれは、あのアバズレには、少しアンジェリカの言葉の通り、性根を変えた方が確かにいいだろうな・・)


そう思ったと同時に、ユーリシアスがここで漸く魔法を発した。


それは、城内にいる傷ついた者達へと掛けられた癒しの魔法だった。


キラキラと光り輝く粒子が降り注ぐ。


ユーリシアスの癒しが城内で怪我など負う者たちへ施される。


「まあ!ユーリシアスは優しいのですね!」


ユーリシアスが放ったキラキラと光り輝く癒しの魔法を見つめながら、アンジェリカが口にする。


その言葉に、ユーリシアスの眉間が寄ってしまう。


「わたくし、命までは奪っていませんのに、大サービスではありませんか!」


確かに、城内で負傷する誰もが命はまだあるようだ。でもね、ミーナなんて虫の息ですけれども・・口には出さないが、ユーリシアスはアンジェリカをギィっと睨みつけることでアンジェリカへの苛立ちを押さえつけようとした。


だが、続くアンジェリカの言葉に、真の彼女の恐ろしさを感じてしまうのである。


「でも、せっかくのユーリシアスの癒しの魔法も無意味になるかもしれませんわよね?だって、今日で、完全に精霊はエルボルタからは消えますでしょう?」


最後には、うふふ・・と微笑むアンジェリカの言葉は確かに真実ではあるが、でもね・・・


「フランツとミーナもエルボルタで幸せに暮らせますでしょうか?」


コテンと小首をかしげて可愛く笑うアンジェリカが、頬に少しの赤い爛れを残したミーナに向かって言う。


「精霊が消えた国は死すると言われていますからね。どうか二人で協力して、幸せになって(生き抜いてみて)くださいませねぇ」


黒く長い髪を靡かせたアンジェリカがオーホホーーと高らかに笑う。


そんなアンジェリカの姿を見たユーリシアスは、身体をガクガクブルブルと震わせている。


(あれは、本当に私が育てたアンジェリカなのでしょうか?誰か違うと言ってくれーーーー!)


悲しきかな、ユーリシアスの願いは届くことはなかったのである、当たり前ではあるが・・・


「さあ、もうここには用はありませんので参りましょうか?」


アンジェリカはサファイアの瞳をきらりと輝かせて、ユーリシアスと小さな精霊へ声掛けたのだった。



最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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どうか、よろしくお願いいたします。

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