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22.旅の仲間づくりは名前から

お久しぶりです。

よろしくお願いいたします。

「いや!ほんとうに時間の無駄でしたわね!」


ユニコーンの背に乗りながら軽やかに旅路を進む中、ちょっぴりお怒りな面持ちの黒い少女アンジェリカは、カチェに向けて、先程までの過ごした過程を思い出しながら、あれこれとぶーたれている。


「わかるよ、わかるよ、アンジェリカ!」


そんなアンジェリカのグチグチな言葉を聞きながら、カチェの方はお得意のアンジェリカの太鼓持ちを披露しているのである。


その二人?の様子を項垂れながらも後を追い駆けるのは、我らが上級精霊のユーリシアスである。


そして・・・


「時間の無駄ってそりゃないぜ!」


アンジェリカのグチグチの言葉を聞きながらも、何故か元凶である気障な精霊が共について来ていたのであった。


「おまえ、何故にわたしたちに付いて来ているのだ!」


ユーリシアスの前を歩むのはグチグチ少女、そして、後方には、そのグチグチにモノ申す気障な精霊。


この二人に挟まれて旅路をするユーリシアスは先程から頭痛がしているのである。


「ううん?別に付いてはねえぞ。あんたの気のせいじゃねえの?」


そう言って気障な精霊は鼻歌を歌い出す。


(マジで、おまえ、ウザい!)


上級精霊のユーリシアスは口には出さぬが、顔は怒りを露わにしている。


「まあまあ、そんなひでえ顔すんなよ、旅は楽しく過ごすに限るぜ!」


気障な精霊はそう言いながら風を身体に纏わせて、ゆらゆらとアンジェリカたちと同じ方角に漂っている。


その姿に、ユーリシアスは益々イライラが募ってくるのであった。


「ところで、ユーリシアス?」


多少気持ちが落ち着いたのかで、急に、アンジェリカの方からユーリシアスに声を掛け来たのであった。


「・・・うん?」


グチグチオーラに汚染されていたユーリシアスの脳には、すぐにアンジェリカの声が届かなかったようで、ユーリシアが一度立ち止まり辺りをキョロキョロと見渡したのであった。


その行動に、アンジェリカの方も、ユニコーンの歩を一度止めて立ち止まったのである。


「ユーリシアス?どうされたのですか?」


怪訝に思いながらも、アンジェリカが再び声を掛けたのであった。


「・・・あっ、すみませんね。少し疲れが・・・」


アンジェリカからの掛け声から数泊置いて漸く、アンジェリカからの問い掛けに気付いたユーリシアスが前を進むアンジェリカの姿を見据えて答えたのであった。


そんな発言を返して来たユーリシアスの顔には、確かに疲労の色が浮かんではいるような・・・


だが、そんなものはアンジェリカには知った事ではない。


「まあっ!ユーリシアスったら、どうして疲れているのですか?」


ユーリシアスの疲労の原因など全く検討もつかないアンジェリカはただ、疑問を浮かべて小首を傾げるのである。


「確かにな?何で、あんた疲れているんだ?ただ、こんねえちゃんの後ろに付いて行っているだけだよな?」


アンジェリカの言葉に付随して、今度は、気障な精霊までもが呆れたように言い放って来た。しかも、コバエのように、ユーリシアスの顔周りをわざと周回しながらなものだから、ユーリシアスのこめかみが次第にピクピクと引き攣りだしている。


「あんた、上級精霊なくせに、なんか?足引っ張ってばっかで、ほんと、ダッセイゼ。グフフフ・・・」


「おまえ!!!!!」


気障な精霊の下卑た笑いがユーリシアスの耳に届いた瞬間、とうとうユーリシアスの手が動き、自分の顔周りを飛ぶ下級精霊を摘まみ上げたのであった。


ユーリシアスによって首辺りを摘み上げられた気障な精霊は一瞬、我が身に何が起きたのかわからず、暫し、沈黙してしまう。


その間、身体はぶらぶらとユーリシアスの目前で揺れたまま・・・


「おい!離しやがれ!俺が何したって言うんだゼ!」


漸く、自分の身に何が起きたのか分かった気障な精霊が、状況回避の為に自分の身体を拘束?しているユーリシアスへ抗議をしだしたのである。


「おまえ、先程からわたしに対して言いたい放題。自分の立場わかっているのかっ!」


我慢の限界だとばかりに、ユーリシアスは小さな身体の気障な精霊に対して顔を近づけて怒りをぶつけて来たのであった。


「ひえーーーーっ」


とうとう、ユーリシアスの本気の怒りを浴びせられた気障な精霊は、ここに来て漸くこれまでの自分の行動を反省することになったのであった。


だが、そんな二人のやり取りにも気を留めることのない少女が一人、ポンっと手を打ち顔を和らげたのであった。


「ホラっ!やっぱり、ユーリシアスは元気ではありませんか?しかも、ダゼと仲良くなって、羨ましいですわ!」


最後には、うふふふ・・・と声まで出して微笑む少女に、大小二人の精霊が固まっている・・・


「えっと・・・」


「オイ!もしかして、そのダッセイやつ、俺の名じゃない、よな?」


なんとか数秒で硬直が解けた精霊たちがアンジェリカに言葉を返したのは当然であろう。


しかし、掛けられた言葉に不服だったアンジェリカは、その可愛らしい頬をぷくりと膨らませて、ムスッとしたのである。


「まあ、失礼ですわね!このわたくしが付けて差し上げた素敵なネーミングをダッセイと言うなんて!」


プリプリと再びお怒りモードのアンジェリカ、そのアンジェリカを宥める太鼓持ちのカチェ。


この状態は数分前にもあったような?と、ユーリシアスの頭には数分前の様子が呼び起こされたのであった、だがしかし、再び、空気の悪い環境に陥るのはごめんとばかりに、ユーリシアスは、ここはアンジェリカの機嫌回復にまわるべく、行動をするのである。


「まあ、良いではありませんか?下級精霊は名もないものも多い中、このようなダッ・・・いえ、特徴をつかんだ名を得られたことは、いや、素晴らしいではないか!」


乾いた笑いまで最後に付け加えたユーリシアスを、気障な精霊がジト目を向けてきた。


「なんだ!何か言いたいのか?」


小さな精霊なのに、気障な精霊から齎されるジトリとした目が、何故か、胸に突き刺さるような感覚になっているユーリシアスは、その目を逸らしたいばかりに、問い掛けたのであった。


「フン!あんたは、そりゃあ素敵な名前が付いてるから、気にもしないんだろうゼ。ああ、俺も上級精霊になりたいゼ。で、あんたに、ダッセイ名前付けてやりたいゼ!」


そう言って、こちらもつーーーんと剥れた表情を向けて来たのであった。


(いや、マジで、めんどくさいですね!)


気障な精霊の態度に呆れそうになってしまっていたユーリシアス。だが、今度は、その気障な精霊の言葉にアンジェリカの顔が明るくなったのであった。


「あらっ?ダゼは、ユーリシアスに名前を付けたいのですか?」


(うん?)


キラキラと目を輝かせたアンジェリカの姿がユーリシアスと気障な精霊の目にも留まったのである。


ただ、ユーリシアスはアンジェリカの言葉には疑問符が浮かんではいたのではあるが・・・


「おうよ!俺は、あの偉そうな上級精霊に名前を付けてやりて―ゼ!」


気障な精霊は、アンジェリカの問いに胸を張り、己の主張を繰り広げていくのであった。

そんな、気障な精霊に、アンジェリカの胸も高鳴り、大きく頷くのである。


「では、ダゼ、あなたに、ユーリシアスの名をつける権利を授けますわ!」


「おう!有難き、シアワセ!」


何の小芝居だと思いながらも、ユーリシアスは黙って見つめている。


また、小さな精霊もチカチカと発光を繰り返して、この寸劇をわくわくしながら見ているのだった。


「さあ!ダゼ。ユーリシアスの名はなんと!」


アンジェリカの問い掛けに、この場にいる精霊たちが息をのんだ。


そして、皆が小さくて気障な精霊に目を向ける。


その注目を受ける気障な精霊は、腕を組み、うーーんっと、首を捻っている。


暫しの、沈黙が続く・・・


「おい!」


沈黙に堪り兼ねたのは、名づけを待つ身である上級精霊のユーリシアスであった。

そんなユーリシアスの言動に苦言を呈したのは、名づけを許したアンジェリカである。


「まあ!ユーリシアスは堪えしょうがないのですね!今、ダゼがあなたを思って、名を考えてくれていますのよ!あなた、名前って、なかなか難しいのですわよ!ひらめき?はすぐには出ないのですわよ!」


「「ひらめき?」」


ここで、再び、大小の精霊がシンクロしたのであった。


「そうですわよ!要はひらめきが一番ですわ!ねえ、カチェ!」


そう言って、アンジェリカはカチェを呼び寄せたのである。


勿論、カチェはその声に応える様に、身体をチカチカと発光させている。


「まあ、カチェはいいですよ。ダゼについても、当の精霊は不服でしょうが、まあ、ひらめきでの名でもいいのではないでしょうか。ですが、わたしに関しては、もうすでに名はございます・・・なので、おまえにつけられることはない!」


カチェを呼び寄せて、戯れるアンジェリカを見ながら、ユーリシアスが大きくため息をついてから言葉を発したのであった。おまけに、最後はぴしりと気障精霊、ダゼに向かって言い放ったのである。


その姿を見たアンジェリカは、再び、ぷくりと頬を膨らませたのである。


「もう!ユーリシアスはつまりませんわね!新たな名が貰えるというのに!」


「わたしは、この名でいいんですよ!」


剥れているアンジェリカにも、ここは曲げれないユーリシアスはガッンと言いのけて見せたのである。


だがしかし、ここで終わらないのが、アンジェリカ様であった。


「まあいいですわ!今は、仮称ユーリシアスとしましょう。では、ダゼ、ひらめいたら、報告を!」


「御意!」


ユニコーンの背に乗りながら、胸元に仕舞っていた扇子を取り出したアンジェリカが、その扇子をダゼに向けて指示を出すと、今度は、小さなダゼがアンジェリカの前に来て頭を垂れて忠義を誓うのであった。


「いや、待て!おまえ、自分の呼び名が不服だった話ではなかったのか!?」


呆れるユーリシアスをシラーっと横目にしたダゼが、ぴゅーと口笛を吹いてアンジェリカの背へと回ったのであった。


「おっまえ!」


「うるさいですわよ!そして、邪魔ですわよ!(仮)ユーリシアス!」


アンジェリカの背にまわったダゼを懲らしめてやろうと、動く大きな精霊ユーリシアスにアンジェリカが怒りを表している。


「ちょっとー、アンジェリカ、何ですか!その(仮)は!」


「あらっ?先程お伝えしましたでしょう?ダゼがひらめくまでは、このままだと」


そう言って、憤慨しているユーリシアスをさらりと受け流したアンジェリカはクスクスと笑いだす。


「いや、その表現はおかしいでしょうが!」


尚も言い募るユーリシアスを躱すアンジェリカたちを見ながら、カチェとダゼがそんな二人に先をうながすのであった。


「ほらっ、早く行くゼ」


ここで、この次なる旅路へと誘う精霊が加わったのである。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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どうか、よろしくお願いいたします。

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