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ツッキーはデビットカード()を手に入れた

 大通りの中程にある商業ギルドはとても賑やかだった。

 冒険者として登録されているので、身元の保証はされている。口座とシェルストーンの作成は特に問題はなく終了し、所持金の大半を預け活気ある建物内から出る。


「しかし、元はブレスレッドだったのか」


 シェルストーン作成の際血を使用するとのことで針を刺した中指をなめながら、左手首につけた革製のブレスレットを見た。石の色は数種類から選べ、何となく黄色いやつにした。


「冒険中に落したりするかもしれないし、別のものを手首につけたい人もいるから外してしまってるやつが大半だ」

「ツッキーさんなら手首でも問題ないと思います」

「俺ならってどういうことだ」

「たまに手首を切り落としてでも奪おうとするやつはいるんだよ。ツッキーなら返り討ちできそうだし問題ないだろ?」


 さらっと物騒なことを言われて、思わずブレスレッドを外しながら突っ込んだ。


「何で基本がブレスレッド?!」

「知らねぇ」

「まあ、みんなバッグとかにしまいますから…」

「ツッキーなら平気だって」


 ヴァンは軽く言うが、狙われないに越したことはない。


「つーかしまうもんもないし、買うまでそのままにしとけばいい。悪質なスリって捕まえれば礼金出るぜ?」


 にやにや笑いながら言うエドに、ため息を一つ。


「靴は昨日無理してがたがたで、服も綺麗にしたとはいえ着替えなしは勘弁してほしい。そんな面倒より、まずは服や靴の買い物が優先だ。あと、できれば武器が欲しい」


 財布代わりの袋にシェルストーンを突っ込んで、袋を首から下げた。よれよれのスーツに首から袋を下げているのは間抜けかもしれないが、硬貨がかさばっているのでポケットに入れるのも間抜けな感じになってしまう。早くこの場所にあった服装にしたい。


「素手でも強いのにですか?」

「あー…俺は素手だと加減が下手なだけだ」

「武器持って弱体化ってどういうことだよ…」

「そりゃあ、武器の方がもろいからな」


 子供のころ、たしか剣道の稽古中に何かを壊して怒られたことがある。それ以降道具を使用する際は力加減を気にするようになって素手よりましになったんだよなぁ。


「ツッキーって不器用だね」

「たまに言われる」


 古着屋を目指し大通りを歩く。


「そういや、ツッキーって役場みたいなところに勤めてたって言ってたけど、強いんだし戦える職場の方がよかったんじゃないか?」

「ああ、役場と言うか、治安を維持する公的な組織に勤めてた。だから荒っぽいこともやってたはやってたぞ」

「兵士みたいな感じですかね?」

「多分? あの兵士が誰に雇われてんのかいまいちわからんが」

「じゃあツッキーも見回りとかしてたの?」

「初めのころはな」


 そんなことを話しながら歩いていると、古着屋についたらしい。


「どんなのを買うんだ?」

「適当にシャツとズボン。二枚ずつあれば洗ったりすれば平気じゃないかと思ってる」

「バッグはどうする? 多少は置いてあるぞ」

「物を見てからだな」

「じゃあバッグより先にシャツとズボンを見ましょう。大人用のコーナーって縁がなかったので初めてです」

「まだまだ小さいもんなぁ。そういや、お前らいくつだ」

「俺たちは十三だ。ツッキーのところはどうか知らんが、ここではそれで成人」

「俺の住んでたところもたしか昔はそのぐらいだったなぁ。今は二十で成人だが」


 中学一年生と言われてまだまだ幼いと思ってしまうが、成人しているのならそれは失礼か。

 案内してもらった大人のサイズが集まっているところで地味なシャツとズボンを選び、バックが置いてあるところに行く。

 布で作られたバッグばかりで、耐久性が不安になったのでとりあえず他の店も見てからとなった。

 支払いはシャツとズボンが二枚ずつで五千シェルだった。

 古着屋の次は近くの靴屋に案内してもらった。

 職人でもあるという店主が出てきたのですぐに足を測定してもらい、これから冒険者を始めることを伝えると黒い革靴を持ってきてくれた。


「モンスターの皮で作った靴だからこのサイズでも問題ないはずだ」


 そう言われ履いてみると、少し緩い。だがそう思った途端、靴がふるりと震えちょうどいいサイズになった。


「たしかにちょうどいいな。これいくらだ? あと、何のモンスターの皮なんだ?」

「そいつの値段は六万だ。モンスターはブラックブルだな」


 直訳で黒い牛とはどんなモンスターなのかよくわからない。すぐに浮かんだのは黒毛和牛だ。三人の方を見るとアルが教えてくれた。


「ブラックとつくモンスターは基本狂暴で力が強いモンスターです。格上相手でも攻撃をしてくる、戦うことしか考えていないダンジョンにしか基本はいないモンスターです」

「繁殖とかできなさそうだもんな。ダンジョンは割と何でもありと聞いたが、そういうものいるのか」

「やつらがドロップするアイテムを使うと普通の生物やモンスターがブラック化することもあるけどな」


 物騒な内容もあったが、ダンジョンに行くまでは基本考えなくていいモンスターらしい。ちなみにモンスターの皮を使っているからと言っても、サイズの自動調節以外には特に機能はついていないということだった。もちろん使用するモンスターによってはいろいろ付与されているとのこと。その分値段は跳ね上がっていくので初級冒険者では手が出せない品だそうだ。

 靴は気に入ったので買い、そのまま履いて行くことにした。

 その後やはり近くにあった武器屋に連れていかれたが、おいてあるのは西洋剣ばかりだった。防具もダンジョンに入らないならまだいらないんじゃないかとの言葉に頷いて一通り見るだけになった。


「何というか、あまり質もよくないな」

「ああやって無防備に置かれてるのはそういうもんさ。そもそも一流冒険者の場合はオーダーメイドが多い。素材持ち込みもして作ってもらうもんだからな」

「なるほど」

「というか、ツッキーって剣を使うのが得意なのか?」

「剣というより刀だ。家がそれを使う武道を教える道場だったから、そっちの方がなじみがあるが…ないなら杖だな。刀に見立ててふるう」


 あとは傘もなかなか優秀だ。雨の日や雨上がりの時に持っていて不自然じゃないし、気軽に店で手に入る。俺の年齢で杖は奇異に見られがちなので、昔から傘は重宝しているのだ。


「そういえば傘はないのか?」

「傘? 女性が使う日傘のことですか?」

「この村ではあんまり見ないよな?」

「そういうもんか」


 傘は人気がないのだろうか。まあ、どこかの外国ではよほどの雨でないと傘を差さないというところもあるし、土地柄というところだろうか。


「古着屋と靴屋と武器屋、あとツッキーは何か買いたいもんや見たいもんはあるか?」

「というか、ないものばかりでどうすればいいのかわからない。冒険者として必要なものもあるだろ?」

「そういうのはたいてい冒険者ギルド内の売店に行けばそろってますよ。野営や採取などにも使うナイフとか、丈夫なバッグとか採取したりしたものを入れる袋とか」

「ツッキーの場合服と靴が優先だったからそっちは最後に行こうと思ったんだけど、もう行くか?」

「うーん。ならいずれ自炊したいから食料品買えるところと、布とか裁縫道具とかも欲しいからそういう店も知りたいな。もちろん調理器具も欲しい」


 俺の希望に、三人は顔を見合わせた。


「食料品なら午前中に立つ市場と香辛料とか専門的な店が並ぶところを案内すればいいか?」

「ついでにそこでお昼も取れるからいいけど、布とか調理器具の専門店ってないよね?」

「そこは雑貨屋でいいんじゃないか? あそこ割と何でも置いてあるし」

「食べ物目当ての観光客が来るから飲食店向けの調理器具専門店はありそうだと思ってたんだが、意外とないのか?」


 てっきりそっちは需要があるだろうから店があると思っていたのだが、そうでもないらしい。


「普通はそういうのは信頼できる工房に頼むからないみたいだぞ」

「そういうもんかぁ。でも食料品の専門店はあるんだな」

「お土産の需要とかもあるみたいです。香辛料を組み合わせて新しい味を作ったり、長期保存ができるものとかを売ったりする店とかあります」

「面白そうだな。のぞいてみて興味がわいたらあとで買うか」

「保存食品は冒険者もみんな思い思いに買ってますよ。自分好みのものを探す人もいるみたいです」

「料理ができないやつはダンジョンで食材確保できても生かせないからな」


 身内の家事ができない二人が全力で同意している幻覚が見えた気がした。そうだな。食材が取れるといってもそのあとが炭しか作れない場合はどうしようもないよな…。


「よし、じゃあまずは市場の方に行こう。市場は大通りから一本入ったところにあるんだ」

「わかった。案内引き続きよろしく頼む」

「了解」


 宿屋ではあまり奇抜な食材はなかったが、市場とかにはどんなものが並んでるのかちょっと楽しみだな。

買い物が終わらない…。

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