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ツッキーは問題の難易度に泣きたい

 空間のゆがみに蹴り込まれていつの間にか意識を失ったせいで、近づいてきた角付き兎を反射的に手加減なしで殺してしまった。


「……うん。またやってしまった…」


 とりあえず血抜きのために足を持ってぶら下げておく。

 理性が飛ぶと手加減が出来なくなるのは昔からの悪癖だ。つい絡んできた不良をぼこぼこにして病院送りにしたり、ひったくりを投げ飛ばしたこともあったな懐かしい…。


「それにしても、この角のある兎は食用可能なのか? 角以外は普通の兎に近いが」


 もっとゲームなどに出てくるモンスターのように普通の動物とは違うとわかりやすいのだが、頭がつぶれた死体からは全く分からない。


「今度は握りつぶさないようにして頭も観察するか」


 兎をぶら下げたまま、近くにあった道に移動する。少し待つと兎の血だまりにくずもちのようなプルプルしたものが集まりだし、血をすすっているようだ。


「…黄粉や黒蜜って市販されてないかな」

「おそらくないと思うぞ」

「ん?」


 自分以外の声が聞こえ、発生源と思しき足元に目をやると、瑛李が別れ際に言っていた式神と思しき一つ目の小鬼がいた。


「月の、あれ食べるのか?」

「食べない。似た和菓子が食べたくなっただけだ。寒天やアガーないかな…」

「月の、主から預かった手紙」

「ん? ああ、まきこまれた子たちの一覧の事か。ありがとな」

「ん」


 口の中に手を突っ込んだ小鬼は明らかにサイズがおかしい封筒を出した。口ではなく他の場所はなかったのだろうか。いや、服は動物の毛皮が材質っぽい腰巻しか見当たらないからしょうがないんだろうな。

 渡された封筒は封がされておらず、汚さぬように注意しながらそのまま開けて中身を出す。厚みからすると一枚ぐらいかと三つ折りにされた紙を開くと白紙だった。


「…えーっと。炙るのか?」

「霊力」

「ああ、だから封もいらないとの判断か」


 小鬼の言葉に、最近意識して操作できるようになった霊力をそっと流す。流し始めると自動的に吸い出し始めたのでそのまま紙の好きにさせてみる。

 するとジワリと中心に黒い丸が現れ、一瞬全体を覆ったかと思うと余分な部分の色は消え文字が出てきた。


『依頼内容

 能力の暴走により連絡が取れない行方不明者の捜索及び保護。

 穏便な脱出方法の調査実施も求めたいが、保護を優先するように。


被害者候補一覧

 ※こちらで連絡がついたものは順次取り消し線で消していくため時折確認すること

 

 空(能力発動者)

 知立 舜

 薬師(やくし) 燎治(りょうじ)

 古鍛冶(こかじ) 刀真(とうま)

 (まどか) 鎌一(けんいち)

 四月朔日(わたぬき) (けん)

 鏑木(かぶらぎ) 涼平(りょうへい)

 桐生(きりゅう) (ゆい)

 (シュウ) 小狼(シャオラン)

 市川(いちかわ) 光流(みつる)

 リザ・ビショップ』


 一覧を見たあと、俺は周辺に人や敵対生物の気配がないことを確認し、それでも一応小声で我慢出来ずに叫んだ。


「ほぼ古参ばっかじゃねーか!!!」


 団体立ち上げからの面子が多すぎて泣きそうである。ちなみに数人一応籍を置いているだけの面子も載っていて本当に頭が痛い。そういうやつは本業を持っていたりするからそちらの工作も必要となってくるはずだ。

 双子が過労死しそうな気配しかしない。


「いや、あの二人は有能だし、このリストの連中以外にもそこそこ人材はいるが…ん?」


 唸りながら一覧を見ていると、じわじわ『鏑木 涼平』のところに取り消し線がにじみ出てきた。


「…なるほど。こうやって更新されんのか」


 滲み方がとてもホラーで、手紙を用意したと思われる瑛李らしくない。こういう演出を好むのはむしろ皐瑛の方だ。


「さっきの様子からすると、普段と違う行動でもそこまでおかしくはないが…むしろ接続が悪いのか?」


 瑛李は普通に更新したつもりだが、接続が悪いせいでホラーっぽくなっただけ。普段の性格からしてそちらの方が無理がない。


「最悪外とのつながりが完全に切れることも念頭に置いておいた方がいいな」


 ぶつぶつ言いながら、手紙をたたんでジャケットの胸ポケットに入れておく。

 ところで一応雑な血抜きをした兎はどうしよう。片手は血まみれのままで放置したせいで血が固まってしまった。

 兎は食料になるだろうから道具があればさばいてもいいが、残念ながらサバイバルするつもりもなかったので、武器らしいものは何もない。火を起こすものも持っていないので、丸焼きにも出来ない。


「不便だ…!」


 あと水もどうするかと悩みながら、周囲をぐるっと見渡す。

 今いるのは膝丈ぐらいの草が茂る草原の中の一本道で、踏みならされているから辛うじて道として存在しているといった感じの道だ。

 草原の向こうには森のようなものも見えるので、いざとなれば食料はどうにでも出来そうではある。


「熊ぐらいならいけるし、いっそあっちに行って川でも探すか。それとも――」


 道の先を見上げ、ため息をつく。


 

 見上げた先には先が雲に覆われ、全長がわからぬほど巨大な木のようなものがそびえたっていた。

人物名の部分ルビが多くて読みづらくてすみません…。

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