9.聖女ちゃんお詫びする
教室に入ってクラスメイトに挨拶をしながら、アルフの斜め後ろの席へと着いて、おはようの挨拶をしようと思えば、明るいクラスメイトが満面の笑みで机に手を乗せ、
「ナタリーさん、白銀の乙女って誰だと思う!?」
「知らないなぁ!」
思わず反射的に答えれば「当たり前でしょ。だからどこの誰かって思うのかって聞いてるの」と、笑って言われてしまった。
「ナタリーさんも見たでしょ?入学式の日の乙女!!」
うきうきと楽しそうな顔で問うクラスメイトにどう答えたものかと悩めば、丁度アルフが振り向いたので思わず満面の笑みでおはようの挨拶をする。
「おはようナタリーさん。えっと、ダリアンさん…だよね。ナタリーさんはあの日は体調壊して見ていないんだよ」
「…ナタリーさん!!もしかしてくわがた殺人未遂事件て貴女なの」
「そんな面白い名前つけられてるの?!」
アルフのさん付けの呼び方に凹みながらも、知りたくなかった新情報に慌てて顔を上げれば、
「倒れながら女子生徒が虫嫌いのユノ先生にクワガタを押し付けながら倒れて、先生まで倒れそうになったのを近くの教師が2人を連れて回復室に連れて行ったとか?」
「……謝ってくる」
ユノ先生とはあの線の細い白衣の教師の名前だとわかり会いたく無いとは思うが、嫌いなものを押し付けるだなんて申し訳ない事をしたと泣く泣く立ち上がれば、ダリアンが肩をポンポンと叩いて座らせられる。
「わたしもユノ先生に会いたいけど、もう授業はじまるし昼休みか放課後にしたら?一緒に行ってあげる♡」
明らかに興味本位の便乗だけど、スチルの君に一人で会いに行くよりはいいと頷いて同意した。
*****
「あぁ、君は入学式の…。もう身体は大丈夫?」
日差しの関係でまさに後光が見えるユノ先生を見て付いてきたダリアンがほうっと息を吐く。
「ご心配とご迷惑をお掛けしました。もう大丈夫です」
ペコリとお辞儀をすれば柔らかい微笑みを返してくれる。
「女の子は大変だからね。辛くなったらいつでもおいで」
「は…はい」
「大丈夫。恥ずかしい事じゃないからね」
そういや生理痛だと言って倒れたと思い出し、もうちょっと何かいい言い訳は無かったかと思うけど無かったとも思う。
「しかもくわがたを押し付けた様で…申し訳ありません」
深々とお辞儀をしてチラリと見れば、恥ずかしそうに首元に手を当てている先生が目に入る
「こちらこそ変なこと気にさせちゃったならごめんね。どうも虫が子供の頃から苦手でね」
線が細くて肩口にかかりそうな白い髪にパープルの瞳は、女性にも白衣の天使に見えてしまうほど、美しいその人は…
『虫は嫌いだ…あんなもの餌でしかない。私はこの爬虫類が大好きでね…君にもこの低体温を肌で感じてほしい』
そう妖艶に微笑み身体にトカゲや蛇をその身に纏わせてそんな事を言い出す……のだと思い出した!!!思わずヒィィっと顔が青くなる。
「あれ?また顔色が悪い様だけど、少し休んでいく?」
「ご心配には及びません!!むちゃくちゃ元気いっぱいです!!」
出来る限りニッコリと笑って言えば「そっか、それは良かった」と、それはそれは綺麗な笑顔で微笑んでくれた。
「わたくしからは以上です!ご心配とご迷惑をおかけしました!!出来るだけ健康第一で、もうお世話にならない様、気を付けます!!!」
「うん、それは素敵な心がけだよ。無理はしないでね」
白い髪を耳に掛けながらいうその顔は善人そのもの。90度頭を下げて部屋を出れば、本当に付いてきたなんのコメントすらしながったダリアンがうっとりとしながら、
「先生と話せて羨ましい〜♡」
そんな呑気な声を上げる横で、先程思い出したシチュエーションにゲンナリとしながら、
( 人は見かけによらない )
そう改めて痛感いたしました。




