84.聖女ちゃん頷く
「ちょ、アルフっ!? わたしは!?」
たしかにカロッコウ母には助けられたし否定する気もないけど、でもわたしも頑張ったと顔を上げた時、カロッコウ母が頷きアルフを見つめる。
『 いいのよ。この子と添い遂げると言ったあなたならばもう私の愛しき子同然。我が子の悲しむ姿は見たくないもの 』
「…………え?」
優しく微笑むカロッコウ母の言葉に目を見開けば、アルフは照れ臭そうに頬をかいて視線を逸らした。
「ナタリーは御礼なんて無くたって、僕のこと助けてくれるでしょ?」
「え、うん。それは、もう。はい」
「カロッコウに先に言われちゃったんだけど、僕と結婚する?」
「ししししまする!!!!」
トントン拍子に話が進み過ぎて頷くことしか出来なくてただただ頷いていれば、アルフはその可愛らしい顔をこちらにむけて、真剣な目をしてもう一度言ってくれる。
「ナタリーはちゃんと僕だけに一生涯捧げる?」
「一生と言わずに二生でも三生でも捧げますが!?」
「それはちょっと重い」
「1.5生でどう!?」
「残りの0.5は誰のところに行くのさ」
「ほっ、他になんて行かないし!」
慌てて言えば、アルフは眉尻を下げて「ごめん」と謝る。
「……君が、聖女だって知ってから、少しずつ僕にも記憶……っていうのとは違うかな。とにかく君が聖女で、そして僕を亡くしたあとに、他の誰かと添い遂げるのを知ったんだ」
「……いつから?」
自分が死ぬ運命なのをどこで知ったのかと言葉に詰まりながらも聞けば、アルフは少し遠くを見ながら、
「君が『将来は聖女になってそれを隠す為に身体を鍛えておかなくちゃ!』って7歳くらいの時に1人で言ってるのを聞いてから」
「初期段階!!!」
「君は考えてること口に出しすぎ」
「あ、はい」
正座して話を聞けば、アルフはいつもの少し呆れたような笑みでこちらを見ると、
「だから僕もその運命に抗おうと思って鍛えたんだ。結局君には敵わなかったけど……、それでも僕なりに君を、ナタリーの体を傷つけさせたく無くてさ」
「あの、アルフ、もしかしてかなり前からわたしのこと好きだったりしたりした?」
「黙ってくれる?」
「はい」
ちゃんと口を真一文字に結んでその話の続きを待てば、アルフの口が動き出す。
「……ナタリーが髪色を変える練習をしてるのも知ってあの銀髪の鬘なんて無いから、トウドに頼んで伸ばして貰って、それから作って貰ったのに、君が派手にやり回るから銀髪の鬘が流行るし……僕も苦労したのにさ」
「なんかすみません……」
「いいけど」
あれ?なんで怒られてるの?そう思ってとりあえず反省して瞳を瞑って考えれば、ふにゃりと柔らかいものが唇に当たる。
「キスするよ」
「してますが!!?」
「他の誰かとも、した?」
ちょっと怒るような視線に「アルフとニセイジョちゃんだけだから、実質アルフ!!」と告げれば、柔らかく笑ってもう一度唇を合わせてくれる。
「好きだよナタリー」
「んっ」
突然の甘い言葉に全身から湯気が出そうに成る程に暑くなれば、そのまま抱きしめられて押し倒される。
「ホントに良かった。君が……無事で」
「そ、それはこっちのセリフで……」
見上げるその顔は泣きそうで、それでいて辛そうで、思わず腕を伸ばしてその背に回す。
「アルフ、大好き。ホント生きててくれて良かった!!!」
「うん」
「よっ、よがっだぁぁぁぁぁぁ〜〜〜」
安堵のあまりに溢れ出した涙は止まらなくて、ただただ優しく抱きしめてくれるその身を抱きしめ返して、「大好き大好き」と繰り返す。
「ナタリー……」
甘い声と共に、敗れたドレスの裾から背中へと手が入り驚き目を見開けば、
「あのさ、僕も相当我慢してるから、ね」
ぐっと眉を寄せて耐えた顔とは別に、アルフの手がわたしの身体に添うように緩やかに動いた時、
『 ぴよぴよぴぴぴーーーーーー!!!! 』
「あ⭐︎大丈夫。こっちは気にしないで続けて続けて」
壁に囲まれた2人の世界ではなく、周りはカロッコウだったと、そしてその間から顔を出したクレープの顔に我に返ると、アルフも気が付いたらしくその手を慌てて引き抜くと自分が聖女ちゃんの姿……つまりは女子の制服だったことに気がついたのか、近場のボロボロになって落ちたカーテンを身体に巻き付けた。
『 卵を産むなら、この母が代理で暖めてあげようとおもったのに 』
「たっ、たまご産まないからっ!!」
真っ赤になってカロッコウ母に言えば、兄弟達も残念そうに離れていく。
こんなとこでR18になるわけにいかないと、アルフを見れば、かなり照れ臭そうな顔でこちらを見ると、
「とりあえず、全部卒業してからね」
「ど、どの辺を!?」
そう告げられて先程までの光景がよぎり声を荒げれば、
「学業を卒業してから、領土に帰ってから式でも挙げる?」
「そそそそそそうね!結婚ね!!」
わたしがうんうんと頷くと、クレープは微笑みながら、
「それ以外の卒業なら、同室だからタイミング合わせて部屋開けてあげるよ?」
「「 大丈夫です!! 」」
「あっ、無断外泊誤魔化すの手伝った方がいい?」
一瞬それもいいなとか頭をよぎったのは、わたしだけでは無いようで、同じだけ一瞬の間が開いたのにお互いに気がつく。
「アルフくんの裏デレっぷり、楽しかったのに見納めだね」
「裏デレ?」
意味がわからないとアルフを見れば、その顔はどんどんと赤くなってゆき、
「余計なこと言わないでね」
「うふふ〜、どうしよっかな♩」
「姉様!!」
わたしの知らない2人の会話を問い詰めようとした時、部屋へと走り込んできたのは弟のトウド。
「姉様! 無事だとは思ってたけど無事!!? 良かった!! よかったぁぁぁ〜〜! これで聖女のお仕事一先ず終わり!? ねぇ、早く帰ってきてよぉ〜〜!! 父様も母様も心配してるよぉ〜〜〜!!」
「トウド……わたしが聖女ってなんで知って」
「むしろ家族が知らないと思ってるの姉様くらいだよぉ〜〜!バレバレなんだよぉ〜」
「おぉう……」
思わず出た唸り声に、クレープが笑って、アルフが呆れたような溜め息を吐いて……、それからトウドに興味本位でこちらを見に来ている生徒達が居ると教えられて、わたし達は急いでその場を去ることにした。




