79.聖女ちゃん願う
「ナタリー……待て。まずは……アイツらだ……!!」
アルフに駆け寄ろうと足を踏み出したところで、イーサックに腕を掴まれ弾けるように振り向けば、意識を取り戻していたオオトカゲが重そうな身体を起き上がらせて、その口を大きく開くとユノ先生の身体に牙をたてる。
「あぁぁぁあぁぁぁぁっ!!!」
骨の折れる音もさることながら、その行為はユノ先生の魔力を吸い上げているのか、オオトカゲの身体に力が戻っているように見える。
どんな理由であれあの毒でユノ先生が殺されるのが早いか、それともあのまま身体を砕かれ絶命するのが早いか……、どちらにせよ見ていられないと力の入らない身体だが一歩を踏み出す。
「……援護する」
倒れたアルフが気になり溢れる涙を手首で擦り、それでも今のイーサックはわたしには当てやしないと信じて、その実力を頼りに真っ直ぐにオオトカゲに走り向かう。
「ニャタリー!!魔核が見えるようにあの顎を蹴り上げろ!!!俺が切る!!」
「今蹴り上げたらユノ先生まで巻き添えでしょ!」
共に駆け出したフランツの声に応えた時、ユノ先生の周りに青い膜のような物が見え、今度はブルーノの声が聞こえる。
「お姉様、先生は防護魔法で囲いましたが……どこまで持つかは……!!」
「どちらにせよ蹴り上げるわけにいかないわね!」
ならば口の中を開かせるべきなのか、しかし口の中に入って無理矢理開けてわたしにまで毒が回れば、それでなくてもわたしの下手な解毒魔法ではアルフや先生を上手く癒せる自信がない。
「それならこれでどうかしら!!!」
近場の壊れた壁の瓦礫から手頃な1メートル程度の岩を「ヨイショォ!!」と投げつけその口の中へ放り込んでやると、オオトカゲの頭が当たった衝撃で振られてユノ先生が吐き出された。
「今だッ、ニャタリー!!」
「わぁかってるわよ!!!!」
最後の力とばかりに駆け出し、オオトカゲの真下へと回り込み両足で力いっぱい地面を蹴れば、地面に小さなヒビ割れとともに私は空へと飛び上がり、その顎を力一杯そのまま頭突きで打ち上げる。
「豪快だなニャタリー!!まぁいい任せろ!!!」
ドヤ顔で剣を構えて駆け出す王子の横を音速を超えた太い矢が越えていき、魔核の中心へと突き刺さった!!
『ギャァあァぁァァォァッッ』
断末魔と共に消えていくオオトカゲ。
「オイ、イーサック!!お前一言くらい言ってからにしろ!」
「……煩い」
2人のやりとりも聞こえてホッとした瞬間、消えゆくオオトカゲその目はぎろりとわたしを見て、反射的に後ろへと飛ぼうと力を入れたが、膝に力が入らずにそのままその場へとしゃがみ込んでしまった。
「ナタ……リー!!」
「ニャタリー!!?」
「お姉様!!!」
三原色トリオの声だけで、やはりアルフの声が聞こえないと唇を噛んで振り上げられたその大きな足の落ちて来る衝撃に……きっとわたしの身が耐えられないことを悟る。
「アルフ……どうか…………無事で」
呟きは届くわけないと、それでも聖女の加護だなんてものがあるならば好きなあの人の為に使いたいと瞳を閉じて願った。




