77.聖女ちゃん目立たないけど必死です
魔核を暴く……などと言ったものの、両手は聖の力をまとめ上げるのに使って居るため魔獣に使う事は出来ず、なんとか集中して体内の聖なる力を放出しこの場の魔獣達に降り注ぎ、魔なる力を薄めて魔核を照らさねばならない。
「それで今……一番わたしに力が宿ってるのは……」
そう呟いて思い当たり、両腕とはまた違ったわたしの聖なる魔力を身体の中心にまとめ上げると、一気に空へと向けて放出する!!!
そう……、口から!!!!
「………ナタリー……あのさ……君ってやつはさぁ」
「それは俺もどうかと思うぞ……。聖女ニャタリー」
「ふはははひひぇひょ!!?」
呆れた様子のアルフと王子に空に口からビームならぬ口から聖の光を吹きあげれば天井あたりで分散し、この場へと降り注ぐ。
「ぐぁぁぁぁぁぁあぁぁ!!!」
『ギェェェエェェェェエァェェ!!!!』
輝く魔力の中、魔獣達を作り上げた身体の闇は薄くなり、小さな魔獣達の中心には黒く渦巻く魔核が浮き彫りになり、身体から闇を出しながらユノ先生も苦しそうに叫び声を上げながら胸を抑える。
「ふふふふふふっ!!聖女の聖なる魔力にひれ伏すといいわ!!さぁ、あとほ三原色トリオがやっつけてくれないと、手柄は全部わたしのものにしちゃうわよ!!!」
「それは困るな」
わたしがニヤリと笑ってまた両手を縮めれば、最初に動いたのフランツ王子だった。
オオトカゲに向かって走り出せば、他の魔獣達も最後の力とばかりに大きくその身を暴れさせる。
フランツ王子もオオトカゲを目指して駆け出したが、周りのトカゲも這っていても人の身の丈ほどあり阻まれ剣でいなしてゆく。
「オイ聖女!!弱ってないぞ!!」
「言い訳は要らないわ!弱ってはいるはずよ!」
無意識で始めたこととはいえ流石に浄化する範囲が広かったらしいと両手の光の玉を縮めることに苦労しながら返事をした時、トカゲ達に向かって大量の矢が放たれ大小両方のトカゲ達に降り注ぐ。
「……フランツ……やるぞ」
「立ち直ったか!?イーサック!!」
「……………………煩い」
「よぉし!頑張れッッ!!」
何故かイーサックに妙に力の入った声援を送る王子に「なんなの?」と、眉を顰めて見るが、とりあえず何故か不満げな笑顔のアルフが走り出し後ろから援護していたブルーノの腰の剣を奪うと “タンッ” とした軽い音と同じく身軽に飛び上がり落ちてくる勢いに乗り、その身体を回転させながら小さなトカゲ達の中心に浮かんだ魔核を切り刻む。
「なっ……!アルフと言ったか!?偽とはいえ聖女ならば拳を使え!!」
フランツからは苦戦からの八つ当たりか、そんなしょうもない声にアルフは仮面だけは外した聖女の格好のまま、剣に纏わりついた魔の残滓を振り払う。
「悪いですが、アレは聖女ナタリーに合わせてただけで、僕のスタイルはこっちなんです」
ニッコリと笑うアルフに声援でも送りたいが、両手両足を踏ん張りながらもなかなか縮まって行かない光の玉にわたしは集中するけど、アルフカッコいいアルフカッコいいアルフカッコいい!!!!!
「ナタリー、集中して。早くしないと解毒し切れてないから僕死んじゃうよ?」
「超早くしますッッッ!!!!」
確かにいつもより顔色の悪いアルフのその言葉にわたしは青くなり、両手両足腹筋背筋胸筋表情筋と、……とにかく全部の筋肉と聖の力を使って、光の魔力を纏めて行けば、王子が何故か物凄く残念そうな顔をしてわたしを見ると、
「イーサック……これで百年の恋も冷めないか?」
「…………頑張り屋さん……なんだな」
2人が何を話してるか分かんないけど、王子がイーサックに肩ポンしてる間に、気が付けばわたしの後ろをトカゲ取られ、慌てて回転回し蹴りで遠くへと飛ばし、
「そこぉ!よくわかんない男の友情育む前に、聖女様を護って頂戴!!」
「めちゃくちゃ偉そうになったな!ニャタリー」
その言葉になんだか突然涙腺が緩んで声を上げる。
「偉いわよ!!!!わたしはずっっっと必死に頑張って、学園もみんなも護ってきたもん!!!だからっ!!最後くらいは必死になってわたしを護って!!!」
魔力も肉体も正直限界に近い中、気が付けばボロボロと溢れていく涙を見て三原色トリオも思うところがあったのだろう。
顔付きが変わりトカゲを見上げると、王子は太刀筋に切れ味も出てトカゲ達の魔核を的確に切り、1匹、また1匹と減らしていくと、オオトカゲの上でふらついていたユノが慌てたようにこちらを指差し叫び声をあげる。
「トッ、トカゲを全て消してしまえば、そこのアルフくんの毒の解除が完全に出来なくなりますよ!?」
「そんなことをアンタが気にしてる場合かよ」
アルフはその言葉と共にユノへと剣の鞘をその腹にぶち込みオオトカゲから叩き落とした。
ユノが落ちていくと、指令をしていた者がいなくなった不安からか、はたまた自由になる喜びなのか、オオトカゲが顔を上げて叫び声を上げた時、喉に見える魔核を見つけてフランツ王子が切り掛かっていった。




