73.聖女ちゃん協力する
偽聖女の上へと細かく砕けた壁が落ちていく。
しかし粉砕された為に少しの時間が稼げたと、なんとかわたしが駆け寄り守れば小さいとはいえ瓦礫がわたしの背や頭へと落ちてくる。
痛みなんかよりもこうしてそばに寄って見てみると、ここへ寝かしてさほどな時間も経っていないのに、偽聖女の顔や首筋に球のような汗をかき苦しそうに細切れの息をしている。
必死で魔力で解毒を試みるが、怪我の回復ならともかく……こんな強い毒を解いたことないと、歯を食いしばりせめてもと身体を回復させれば「おやおや」と小馬鹿にしたような先生の声が聞こえる。
「何よ……!」
「体力回復させては血の巡りが良くなりますよ。そうしたら……毒の周りも早くなるでしょうねぇ」
クスクスと楽しそうに笑うその顔に対してわたしの血の気が引けば、ゴホッと偽聖女が口から血を吐いた。
「それならっ!!尚更早く解毒方法を教えなさいよ!!」
苦しそうな偽聖女を胸に抱きしめて泣きそうな声で叫び訴えた時、トカゲが体を引いたその目の前を矢が抜ける。
「ナタリー……まずは魔獣を殺せばいい……そしたらアイツは地へと降りるほか……ない」
矢を放ち改めて現れたイーサックの助言にユノは気にした様子もなく視線を送る。
「ふふふっ、怖い怖い。それでも間違えてでもこの私を殺せばアナタ達は殺人の罪になりますよ」
「そんなものは」
魔獣の上という安全地帯だと思っているのか、笑うユノの前にわたしが拳を握りしめた姿でユノ先生の目の前に現れる。
「あそこの王子の権力になんとかして貰うわよ!!」
「ニャタリー!?」
権力だけは国家トップレベルの王子の嘆きのようは声はわたしもユノも気にすることもなく……ユノが「避けなさい」と冷たい瞳で指示を出せば、オオトカゲが動きその口を大きく開きわたしへと襲い掛かる。
「……!!」
怒りの勢い余り……考えなしに飛び出していたと魔獣のその口が迫った時、目の前に透明な壁が現れてオオトカゲを阻んでくれる。
「ブルーノ!!!」
「ついに呼び捨てですか?お姉様」
両手をこちらに伸ばした彼の魔力は防御。
「助かったわ!トウドはあげないけど!」
「……手厳しい」
わたしが地面へと降りてお礼を言っていれば、今度はオオトカゲの首元へと王子の赤い魔力を帯びた剣が切り掛かっている。
「グウォォォォォォ!!!!!」
後一歩で首に届くと思った時、オオトカゲの腕が高速で振り上げられたのを見てフランツ皇子の剣は向きを変え、それを止めると同時にその指先を切り落としたが、悲鳴のような鳴き声……というよりも高周波のようなそれに体を吹き飛ばされた王子の背中へと周ってお姫様抱っこで壁への激突を避けて地へと降ろす。
「指先でも切れば動きは鈍るわ!ナイスな判断よ!」
「そう言うなニャタリー。俺は今正直失恋した気持ちだ」
「好きでもなかったくせに」
「……っ!」
言葉にはならないが向けられた視線に「幼児で悪かったわね」と改めて返せば、「………悪かった」と王子から詫びの言葉を聞けたから、根は悪いやつではないし良しとしよう。
「でもそんな言葉は要らないから……うちの領地の税金下げて!!」
「お前のところは激安だろう!!!」
「領地は国、それにわたしは王都も学生も、それにこうして大事な乙女の貞操も必死で守ってるんだから、無しでもいいくらいよ!!」
「貞そ……ッ、色々と悪かった!!!」
「シャルティエ様に黙ってあげる黙秘料も上乗せで!」
「悪かった!!!」
3度目の詫びと共になんだか変な汗をかいたフランツ王子と共に改めて駆け出せば、王子はオオトカゲを、わたしはユノ先生を狙い飛び上がると、援護するかのようにイーサックの矢が飛び、オオトカゲの攻撃からはブルーノの防御魔法が守ってくれる。
「目を覚ましなさい!!!ユノォォォォ!!!」
私の拳がその目前まで迫った時ユノ先生の目が楽しそうに細まると、
「可愛いトカゲが1匹だと、誰が言いましたか?」
「なっ……!?」
その言葉に一瞬振り下げるのを躊躇った時、オオトカゲの足の隙間から小さな……いや、そうはいっても人ひとりよりも大きなトカゲが10匹ほど勢いよく室内へと入って来た。




