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聖女ちゃんは免れたい!〜力の為のR18展開なんて断固拒否します〜  作者: そらいろさとり


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72.聖女ちゃんはお断り




「ニャタリー!?」



 スカートを破るという行動に驚いたのか、フランツ王子が焦ったように声をかけてくるが、わたしは構わずダンスホールの隅に偽聖女様を寝かせてそっと回復魔法をかけるがその身浮かぶ脂汗は止まらずにいること、それが毒が強い事を示していた。


「苦しいけど、ちょっと待っててね……」


 そう呟いてわたしが振り向くと、その怒りに滲んだわたしの顔を見て王子達は言葉に詰まったようだった。



「ねぇナタリーさん。あなたも女性ならわかるでしょう?そこの人達は大義名分だと言って聖女という女性の心身共にただならぬ傷を付けようと……」

「ウッッッッサイ!!!」


 ダンッッとあらわになった脚を床へと叩きつけ、ユノ先生を睨みつける。


「ならその聖女まで平気で傷付けるアンタの大義名分って何!?」

「……結局は聖女達は虫だけでなく、爬虫類までに……」

 その言葉に近場の瓦礫を拾ってそのデカいトカゲに投げつければその巨体が揺れた。



「君はなんてことを!!」

「なぁぁぁにが『なんてことを!?』女性がどうだって言いながら、自分の可愛い爬虫類だけのこと考えて好きなトカゲをわざわざ魔獣にして、こうして平気で人を傷付けて……そんな奴の大義名分ってナニ!!?」


「……子供にはわかりませんよ。女性が傷つけられようとしたという、その事実の酷さ。それを止めようとしただけ」



 その会話になっているようでただ一方的な言葉を聞けば、握る拳だけでなく全身に肉体強化魔法が巡りその黒きオーラの溢れるユノ先生を睨みつけ、


「卒業パーティーには沢山の生徒たちが居たじゃない!! 半数は女性よ!!」

「だから逃げ切るまで時間をあげたでしょう?そこの男の風上にも……いや、人として信用出来ない男達だけにする為に」


 だから壁を叩いて時間を作ったのかと察するが、そんな下らないことはどうでもいい。



「それでもここでダリアンが怪我をするとこだった!!その上アンタが聖女を傷付けてれば世話ないわ!!」

「……わからない人ですね。聖女とは名前だけで結局は暴力装置。可愛い魔獣の話も聞かずに……!!」


 言葉の最中だがユノ先生の目の前に飛び現れたわたしに目を見開かれる。


 しかしわたしが拳を振りかざした時に魔獣が身体を動かしてその綺麗な横っ面に拳を叩き込む事は叶わず、勢いのまま回転しながら落ちる身を制御し地面へと着地する。



「……本物は貴女でしたか。ナタリーさん」

 楽しそうに笑うその綺麗な顔に喧嘩をふっかけるようにニヤリと笑みを浮かべながらも……笑えない瞳で睨みつける。



「ユノ先生。その魔獣を消して這いつくばってパーティー台無しにした卒業生達に謝って。それから偽聖女様を解毒するなら3発だけで許してあげるわ」

「おぉ怖い……。貴女を傷付けようとしたその男達にも謝るべきですか?」

「そうね。でもそんな事されようもんなら、ストーリーだとか力だとかどんな理由だろうと、アンタがしなくとも私が殴ってでも拒否るから大きなお世話よ!」


 ユノ先生の黒いオーラに対して、無意識に出ていたわたしの白いオーラに2人も気が付いていたのだろう。


 顔面蒼白の赤頭と青頭がそれを聞いてやっと言葉を発する。


「ニャタリー……どういう事だ。お前は……それにお前の髪は白銀ではなく茶色だろう……??」

「うるさいわね。……これで満足?」



 魔力を流して髪を白銀に染めれば、2人はそれ以上の言葉を告げられずに、


「いや!!それでも聖女は幼女だったぞ!!」

「じゃかぁしぃぃぃぃ!!!」


 告げなきゃいいもんを告げてきた王子にその辺の瓦礫を投げつければ、慌てた青頭がそれを魔法の壁で止める。



「何故言ってくれなかったのですか!!お姉様!!」

「誰がお姉様か!!言っとくけどどんな事情であれ、ユノ先生が言うように女の子を傷付けようとしたやつに弟はやれん!!!」

「そんな!!!?」


 胸を抑えてショックを受けるブルーノ先輩を無視して改めてユノ先生を指を指す。


「わたしに3発殴られたなら、赤頭青頭緑頭の三原色トリオを3発ずつ殴ってもいいから早く偽聖女から早く解毒して!!」

「酷い呼び名をするな!」


 王子が思わずと言った風のその言葉を切り捨てるようにわたしは力の限り叫ぶ。


「やかましいって言ってるのよ!! ユノ先生が言うように、あんた達わたしが弱かったらどうしてたの!? 手篭めにしてその力を手に入れようとしてたんでしょ!? むしろ3発で済ませて、シャルティエ様やトウドに言わないであげるって感謝してほしいくらいよ!!」

「それは……!」

「なら逆にシャルティエ様やトウドがそんな事情で傷付けられることになってたなら……アンタ達そいつを許せるの?」


「「……!!」」


 言葉に詰まる2人の元へオオトカゲの前足が振り下ろされて、彼らは左右へと飛んで躱している。



「ニャタリー、でも俺は本気で聖女ならば妃にするつもりで……!」

「それがお断りだっつってんのよ!!」

「何故だ!!」

「好きじゃ無いからよ!!」



 そんな会話の間には、オオトカゲの前足や振り向き様に繰り出される尻尾やその前に回れば噛みついてこようとする尖った歯。

 その動きをそれぞれ何とか避けているが……建物は暴れる魔獣で崩れ、襲う魔獣とその瓦礫を避けていれば、端に寝かせていた偽聖女の上へと壁が崩れて落ちていく!!



「なっ……!!」



必死に地を蹴り手を伸ばすが間に合わない距離に涙が溢れた時、



「アロー……!!」


呟くようなその声と共に魔力の矢が落ちゆく瓦礫を粉砕していた。









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[一言] >好きじゃ無いからよ これ以上ない完璧な理由だ
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