7.聖女ちゃん即即バレる
「ナタリー!今日王子様と話してたよね?」
学園が終わり部屋に帰れば、ライトグリーンの髪を三つ編みにした大きめ眼鏡が可愛い同室人『クレープ・ハネロン』ちゃんが、手を合わせて待ってましたとばかりに話しかけてきた。
「クレープは王子様の事好きなの?」
「好き…というより憧れよね。王子様や秀才で有名なブルーノさんと、言葉数は少ないけど弓の腕は学園一っていうイーサック様も素敵よねぇ〜」
夢見る乙女は可愛らしいが、万が一それに手籠にされると思えばこんな風に笑えもしないだろうとなんとなく聞き流せばクレープはその可愛いタレ目を小悪魔的に細めて私の顔に近付いて、
「でもやっぱり一番素敵なのはアルフくんよねぇ〜」
「…なっ!!!?」
「ナタリーにとっては。だけどね」
嵌められた!と目を見開けば、うふふと笑って手を振られ、
「見てればわかるわよぉ〜。むしろ隠してるつもりあるの?」
「…あるのよ。一度振られてるんだから」
ブスっとしてベッドに座れば、クレープも隣に座ってホッペをツンツンと突く。
「ナタリーは可愛いし大丈夫よ」
「そうかなぁ〜」
「うん!この恋愛博士クレープが補償するから!2割ぐらいは勝ち目があるって」
「すっくな!!!」
思わず声を上げれば、コロコロと可愛く口元に手を当てて笑ってる。
まだ学園に来て一週間。気の置けない同居人だと喜んだものの、毎日『○年生の先輩かっこよかったね』とか『保健の先生見た?大人の魅力よねぇ〜』なんて、正に恋愛脳なのか、兎に角キャピキャピと毎日飽きもせずに話してる。
「で?王子様とはなんの話したの?」
「…白銀の髪の子が一年生に居ないかって聞かれたのよ」
「いないわよねぇ?」
「早ッッ!もう全員覚えてるの?」
「大体の名前と顔はね。ナタリーは覚えてないの?」
これくらい当たり前でしょ?とでも言う感じで首を傾げられてしまうが、こちらは首を振るしか無い。
「知らないよ。まだクラスメイトの顔でいっぱいいっぱい!」
「ナタリーったらアルフくんしか見てないからじゃない?」
確かにそうかもしれないと斜め前のアルフを見ていた事を思い出せば、うふふと笑い声が聞こえる。ついでにアルフが時折身震いするのは癖なのかもしれないと、見つけた秘密を心にしまう。
「それで?白銀の子がどうしたの?」
「だからね、知らないって言っただけよ」
「あぁそうじゃなくて、白銀の髪の子はナタリーでしょ?それで、どうしたの?」
「なんのこと!?」
思わず慌てて言えば、可愛らしい三つ編みに手を掛けて不思議そうに首を傾げる。
「だってナタリーでしょ?」
「違うわよ!見て?私の髪は普通の茶色よ?」
腰あたりまである茶色…といいつつも光の下では金に近い髪を掴んでみせれば、だから?と言うように不思議そうな顔。
「だって入学式にみた聖女様?ナタリーだったでしょ?」
「どこが!?私も入学式に」
「居なかったわよね?保健室にいってたとか?それにあの聖女様ってばナタリーとスリーサイズも一緒だったよ?」
「は!?」
スリーサイズと言われて目を見開けば、
「79の57の80。158センチ。ナタリー・フォレスター。テダ地区をキャンベル家と共に治める伯爵家の長女でしょ」
「………なんて…個人情報ダダ漏れの…ねぇ、王子の身長は?」
「185.3cm。実は甘いものが好きらしいよ」
「アルフの身長は?」
「162.8cm」
ナタリーは察しました…!
これはアレだ…ゲームでいう相手の好感度を教えてくれる親友ポジションの子!!
あのスリーサイズとか身長とか詳しいのどうやって手に入れてる情報かと思ったら、ものすごい特殊能力をお持ちでした!!
「違う…って言ったら信じる?」
「信じない」
「口止めは?」
「止めてくれたら言わない」
「…お願いだから言わないで」
「購買のプリンパン3回買ってね。わたし鈍臭くていつも買えないの」
「お安い御用よ」
苦笑いで約束すれば、クレープは小指同士を絡ませて「約束ね」と笑った。
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