69.聖女ちゃんは探したい
「みんな逃げて下さい!」
パーティー会場から準備用の隣の部屋へと走り込み声を上げれば、華やかな舞台の裏方は意外にも思っていたより華やかで、本当なら今日ここに居るはずだった私は上下真っ黒衣装で決めるつもりだったが、見渡す限りそんな生徒は誰もいない。
なんなら表に食事を届けに出れば、パーティーに紛れられるような女の子達も目に入る。
……とゆーか紛れ込む気満々じゃない??しかも気合いの入ってるのは見た感じ二年生達。
本番は依頼してあるプロの方々と一年生に任せ、卒業される先輩たちとの最後の出会いに気合いを……ってところだろうか?
「ナタリーさん! この音、何があったの!?」
「魔獣の襲撃のようです! まだ中へは入り込んではいませんが、みなさん危険ですので慌てずあちらの扉からお逃げ下さい!」
お手伝いをしていた時の顔見知りの先輩の質問に我に帰り、わたしが入ってきた扉ではなく別の道へと繋がる扉を指差すと、みんなが急ぎ逃げていく中に先程荷物を渡したシャルティエ様の取り巻きクラスメイトが目に入る。……うん。ごめん!名前覚えてないや!
「忙しいところごめん! さっきの荷物ってどこかな?」
「アナタ……何を呑気な……! 知らない!!どこかに置いたわ!!」
「え?」
「イーサック様に声掛けられて浮かれて、自分の荷物くらいクロークに自分で預けないのが悪いのよ!」
逃げ惑う人々に流されて、改めてそれがどのあたりなのかと聞くことが出来ずにはぐれてしまい、周りを見渡すもアルフの姿も見えずに自分の血の気が引くのを感じる。
「荷物を探すの? この状況で??」
壁が殴られるような音と、建物全体が軋む音。
逃げる人々の悲鳴。
そして建物の崩壊の危険から外に逃がしたはいいが、魔獣が外にどれだけいるのかもわからない。
とにかく考えているのは性に合わないと、裏方に人が残って居ないかを見回りながらわたしのバッグを探す。
「……でも、どこかってどこ?」
準備室という名の部屋は、普段は小規模程度のダンスホールにも使われる場所で、いつもならがらんどうに近い室内にはパーティーに向けた料理や、一部は参加者のクロークにもなっているらしく、沢山の荷物が溢れかえっている。
そんな中で小さく纏めた荷物をどうやって探すべきなのか、焦る気持ちで走り目につく場所や机の下を見て回っていると、先程抜けてきた扉の方から誰かに呼ばれる声が聞こえた気がした。
「……タリー……! ナタリーーーー!!!」
改めて聞こえたそれは幻聴では無かったと、慌てて会場へと開いたままだったその戸から顔を出した時、こちらを見たのは……準備係なのか彼女にしては地味な服を着た……ダリアンだった。
「ダリアン!?なんでここに!?」
思わず上げた声にダリアンはわたしと目が合うと、まるで堪えていた涙を溢しながらこちらへと走り近づいてくる。
「ナタリーが、本番手伝えなくなって、それで代わりに……でも逃げなくちゃって、それで参加者の方でナタリー探しても居ないし、ナタリー、変なとこ鈍いし、逃げ、遅れたのかと思………ッ!!」
「ダリアン!!!」
しかしそこはヒビの入った壁の前だと声を上げたその時……少しの間止まっていた壁を打つような音が最大級に響き渡ると、目の前のダリアンを瓦礫と塵とが隠していった。




