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聖女ちゃんは免れたい!〜力の為のR18展開なんて断固拒否します〜  作者: そらいろさとり


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55.聖女ちゃんトラウマに触れる





「う〜ん、これもいいかな?どう思うナタリー?」

「うん。いいと思う!」


 可愛らしい大きな飾りのリボンを手に取り聞いてくれるアルフに大きく頷けば、紺色の瞳が細められて会計へと向かった。



「そっか……でもこんな立派な学園なのに、先輩方の卒業式の花道の飾りを後輩が手作りでつくるなんて変わってるよね。それでまた僕らが買い出し組だし」

「そうよねぇ〜、テストもあるのに……あっ!だから押し付けられたの?」

「僕はいいけどナタリーは大丈夫?二学期は赤点なかったみたいだけど」

「勿論多分きっと絶対もしかしたら大丈夫だよ!」



「ナニソレ」と笑うアルフにキュンとすれば、お店から出たところでアルフの視線は一点に送られてる。



「どうしたの?」

「ん・いや、あれが今人気のお店?」


 指差された先は相変わらず賑わってるウィッグやさん。


「そうそう。ダリアンとクレープと開店日に行ったけど、すっごい混んでたよ!」

「へー、ナタリーも買ったの?」

「う〜んダリアンがプレゼントしてくれてね。でもウィッグって流行りでみんなつけてるけど、わたしみたいに髪が長いと入れるの大変だし、その貰った時にしか使ってないの」


 流行りというより聖女カツラならやる必要もないしと思いつつ笑えば、肩から流れたわたしの髪をアルフはそっと手で梳くい、


「ナタリーの髪はふわふわサラサラだもんね。そのままでいいと思うよ」

「ありがとうございます!」


 思わず90度に頭を下げれば、やっぱり「ナニソレ」って笑われてしまった。髪の毛褒められるとかご褒美でしかないしね!!


「アルフも興味あるの?あ・わたしのウィッグあげようか?可愛……」

 そこまで言えば口元こそ笑みを浮かべているが、絶対零度の瞳を向けられて固まる。


「ナタリー?」

「あ・いや。可愛……いやつだけど、切って使っても、ほら……いいし?」

「僕があれから女装させられるの大っ嫌いって知ってるよね?」

「勿論です!!!」



 歩くスピードの上がったアルフにわたしも慌ててついて行き、思い出を蘇らせれば……そう、あれは7つの頃の地元の花祭り。10年に一度のそのお祭りは、町から1人未成年の女の子から花娘というお祭りの主役を選び、神輿に乗って練り歩く。


 領主に娘がいた場合はその子がやるのが常で、久々に領主の娘、つまりわたしという女の子の居るということで町は盛り上がり準備をしていた当日の早朝……、町のすぐそばにレッドウルフが現れたとの情報が入り、お父様はすぐに出征。ついでに朝からこっそりと魔法の訓練してて、荷馬車で少し朝寝してたわたしも気付かず連れていかれ……町では、ナタリーが居ないと騒がれたがどうせ領主様と討伐に行かれたのだろうと納得。


 ……しかしそれはともかく花娘が居ない。田舎町で同じ年頃の代理の出来る娘なんてそうそう見つからないとなった時、白羽の矢が立ったのがアルフでした。


 『花娘〜〜!』ってわたしが帰った頃にはお祭りも終盤で、目の前に丁度神輿が降ろされてると、そこからは天使か聖女か奇跡か天使か……やっぱり天使かな?と思えるアルフが降りてきて……、



「アルフ、ごめんね!!お父様がわたしに気付かず……、でも似合う!!凄い似合う!!きっとわたしより似合って……」

 とか言ったところで、アルフは被っていた花冠を外すと、


「そんなこと言われて僕が喜ぶと思う?」


 絶対零度の瞳と声と共にわたしへと乗せられました。


 どのくらい冷えたかって言うと、周りで盛り上がってた大人すらも黙るほどの声と瞳でした。


 8歳の男の子が町中で可愛い可愛いと言われ続けて傷ついたプライドは、まだ癒えていないようです……。



「それじゃ早く買い物して帰ろう。寮の夕飯の時間に間に合わなくなっちゃうよ」

「……うん。そうだね!」



 もうちょっと一緒にいたかったって思うのは自分だけかと少し寂しくなりながらも頷けば、アルフはちょっと考えた様子を見せると、


「ならどっかで2人でご飯食べて帰る?」

「是非に!!」


 予想外の素敵なお誘いにわたしが大きく頷き返事をすれば、


「そうそうないしね。僕実は食べてみたかったお店があるんだ。そこでいい?」

「勿論!!」


 笑顔のアルフにわたしは更に頷いて、素敵なレストランを想像して、ドレスコードとか大丈夫かな?それとも今から服を見て、2人でドレスアップしてお揃いで行くとか……素敵!!


 そんな妄想は勿論違って、それが焼肉屋さんだったからといって2人で食べたお肉は美味しかったです!!!





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