51.聖女ちゃんと偽聖女ちゃん
その日は王都にも雪が舞い散り始めた。
空は一面雪雲で白く覆われたが、まだ日の高い時間の今は積もるほどではなくて、ただホントに心から積もらないでくれと心で願いながら、学園横の広場で天道虫魔獣の正面から突っ込んでくる一撃を額の前でクロスさせた腕で受け、踏ん張りを効かせて数メートルそのまま後ろまで下がってしまうが、なんとか靴底を犠牲にしたことで止まる事が出来た。
「学校指定の靴は………高いのにィィ……!」
勢いが止まったと同時に天道虫を持ち上げると、慌てた様に左右に揺れる小さめの前足をむんずと掴み、そのままそれを肩に乗せて担ぐ様に勢いそのままその硬い背中を地面に叩きつけた!
冬休みも目前なこの時期になっても魔獣の出現率は相変わらずで、肉体疲労に悩まされる日々。
額の汗を拭おうとした時に空に羽音が聞こえると、横の森の中から聞こえる走り抜けてくる音。私はその大元を確認もせずに両脚を踏ん張って、手の指を組んで開いた膝の内側に準備すれば、
「上等……!!」
そんなお褒めの言葉と共に走り込んできたその人の足はそこへ乗ると同時にわたしが勢いよくその人を空へと投げ出す。
その空を舞う偽聖女ちゃんは先程共闘してる際に既にかけておいた肉体強化魔法の力もあり、空を舞い1匹の天道虫魔獣の背中を蹴り落とすと、その蹴った勢いで2段跳び状態で更に上を飛んでいた天道虫魔獣を腰から抜いた剣で真っ二つに切り裂いた。
「お見事!」
「……おかげさまで」
先に落とされた天道虫の浄化が終わったところで、目の前にスタンと落りてきた偽聖女ちゃんに拍手を贈れば、互いに仮面があって表情は見えないけれど、なんとなく照れ臭そうにしている様に見えた。
ちなみにわたし達の共闘は、例の……三原色お尻丸出し事件以来続いている。
そしてその3人はあれ以来暫く顔を出さなかったが、今は来ても肉体強化魔法をよこせとかも言わないし、自分で出来る範囲でサポートに徹してくれる。
何があったのか聞こうともしたが、何故か偽聖女ちゃんに怯えているらしく、見た目は双子の様なわたしにまで怯え出した様子にも見えた。
「まぁ、近付かないでくれるに越したことはないんだけど……」
そんなことを考えながらもしていた3匹目の浄化が終わり、最後にポツリと呟いた言葉は偽聖女ちゃんには届いたようで、小さな声の質問を受ける。
「聖女は……本当にそれでかまわないの?」
「今は協力してくれる貴女がいるもの。女の子に無理をさせて申し訳ないとは思うけど……」
襲われる心配もない同性の協力者ほど安心できるものは無いと微笑めば、小さく溜息を吐かれた。
「じゃ・また」
「うん。またね!」
肉体強化魔法が切れる前にと思っているのか、偽聖女ちゃんは戦いが終わるといつも素早く帰っていく。
先程よりも降りだした雪と、無意識にも疲れたと呟きと共に吐き出した白い息を見て、
「寒ぅいッ!わたしも帰ろっと」
そう呟いてから偽聖女ちゃんが去っていった方へとわたしも駆けて行けば、いつの間にか積もった雪に薄らと足跡が残っていて、それは同じ方向に伸びていて、やはり女子寮の誰かなのだと察し始めれば……途中から向きが変わっている。
「あっちは………男子寮??」
足跡の先を眺めながら疑問に思った時には雪と風で消えてしまったその跡に、やはりどこか違う場所から来ているのだろうと、膝を曲げていつものトイレの窓へと飛び込んだ。




