5.聖女ちゃんは愛し子!?
「待ってたよ」
「キャッ☆即夢叶いましたありがとう!!」
アルフの言葉に口元に手を当てて喜べば、「よく分からないけど違う」なんて真顔で言われてしまう。
「ナタリーを待ってたのはクラスメイト。一時間目、自己紹介の時間だったのにどこ行ってたの?」
「…迷子になってました…」
「嘘だね」
ニッコリと可愛い笑顔で言われて思わずときめく。
「だってナタリー、山に置いてきても類稀なる帰巣本能で帰ってくるじゃないか」
「あれは命からがらだったから!!」
そう…あれは9つの頃。
お父様というクソ親父と山へ2人で山菜採りに夢中になり、深く深く突き進み、そして至高の肉と言われる弱いけど逃げ足がとぉっても早いミートミートポークちゃんを発見。お父様は大喜びで追いかけて行き、捕まえて帰宅。
……私を山へ置いたままで。
今のように肉体強化魔法も使えず、あるのは誰にも言ってない回復魔法のみ。
毒蛇に噛まれ、魔獣から逃げ回り駆け回り走り回り飛び回り、崖から落ちたりしながらもなんとか回復させながら、日の位置とかで家へと命からがらに向かって…そしてその森を抜けたところにアルフのご両親とお母様と、お母様にボコボコにされたお父様と捜索隊が準備しているところへと出た。
泣きながらお母様に駆け寄り、それはそれは心配されて確認されれば、無傷の私。
だって完全回復させたすぐ後に山を出れると思わなかったし!!!でも聖女とバレたくないから回復魔法の事は言えなくて、必死に大変だったことと、蛇や魔獣にも襲われたこと。崖からも危うく落ちそうだったとか説明すればする程、無傷の私にドン引きして行く両親達や捜索隊の町の人々。
しかしそのうち誰かが「ナタリー様は森の神様に愛されている」とか言い出して大盛り上がり。違うともなんとも言えずにいるうちに、気が付けばその栄光を讃えて私の出てきた場所には山の安全祈願として「ナタリー祠」が建てられ、山へ入る人達が拝むようになったのだが、あれ私が死んだみたいだからやめて欲しい!!!!
「あれはたまたま…!それに学園は初めての場所だから仕方ないじゃないっ」
「そっか…山の愛し子は人里では発揮できないんだね」
「愛し子違うし!!!」
涙目で訴えるも可愛らしいにっこり笑顔で躱された。可愛いっ!!ズキューーーン☆好き!!!
「とにかくクラスへ帰ろう?2時間目もう始まっちゃうよ?」
そう言って手を引かれて、駆け出すように教室へと向かった。
ねぇねぇ!!!この歳で平気で手を繋いでくれるとかもうこれ結婚していいんじゃないの!?好きって事なんじゃないの!?愛なの!?家族なの!?好きーーーー!!!!
とか考えてたらパッと手を離されて、ジトッとした目でコチラを見ると、
「なんか悪寒がしたからナタリー、一人で走って」
「え!?何のこと?」
出来るだけ可愛くキョトンとしていえば、首を振られた。
「僕まで遅刻させないで?2時間目、ナタリーのせいで遅刻したら、僕『泉の愛し子』の話をついポロッと、クラスメイトの前で話しちゃうかもしれないよ」
「全力で走らせて頂きます!!」
真剣な顔で頷いてから、アルフと共に教室へと必死で向かったのは言うまでもない。
ちなみに『泉の愛し子』は、湖畔で拾った綺麗な石をいくつもポケットに入れてから、クソ親…ゴホン、お父様とボートに乗って、釣りに夢中のお父様のせいで転覆して沈んだけど、無傷で生還のちょっとしたお話です。
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