40.聖女ちゃんワンモア!
「運動の授業は苦手なのよぉ〜」
次の授業の為に運動場へと向かえば、始まる前から既に泣き言を告げるクレープに苦笑いを返す。
「大丈夫よ!クレープは座学がいいから著しく落ちることないしね」
「それ……暗に『運動神経悪い』っていってるからね」
ジトっとしてこちらを見るクレープに「ソンナコトナイヨー」と、なぜか棒読みになってしまった返事をする。
「ところでダリアンは? 今日も運動はお休み?」
「なんか怪我してるんだって」
「えっ、どんな怪我!? クレープは理由は知ってる?」
思わず食いつく様に聞けばクレープはニッコリと笑って、
「知らない♡」
その笑顔は本当なのか嘘なのか、情報屋さんのクレープが知らないとは思えないけど……、
「言わない♡」
心をよんだ様に言われた言葉に深い息を吐いて「わかった」と眉尻を下げて答えれば、嬉しそうにクスクスと笑って腕を組んでくる。
「ナタリーのそーゆーとこ好きだよぉ〜」
「ダリアンにも理由があるんでしょ…。無理矢理聞いていいことなんてないよね…」
たとえばダリアンが聖女の振りをしてるの?……とか。聞いたところで頷かれた時に、わたしはどういった反応を返せばいいのか、まだわからずにいる。
「ナタリー、なんか悩んでる?」
「ん〜…そうだね」
隠し事しても察しのいいクレープにはバレるかと、苦笑いを返せば柔らかい笑みをくれて、
「次の休み遊び行こ!」
「いいね!」
反射的に返せば「そうこなくっちゃ!」ってクレープはギュッて腕を握ってくれた。
*****
「んんんん〜!?アルフ?!あれ?クレープは?」
約束の場所、街の高台のベンチへと行けば、私服の至福のアルフ!
「あれ?ナタリー聞いてないの?担任先生への誕生日でプレゼント買いに来たんでしょ?でもクレープさん学園長から呼び出しがあったから、代わりに行って欲しいって頼まれたんだけど……」
「そうそうそうそうでした!うん!そうなの!そうだった!」
コクコクコクとクレープの嘘に乗っかろうと沢山頷けば、アルフが口に手を当てて吹き出した。
「ナタリー、首、取れちゃいそうだよ?」
「大丈夫!丈夫!!」
「丈夫でダイジョウブなんだね…あはっ、知ってる」
楽しそうに笑うアルフに笑みを返せば、やっぱりおかしそうに笑いながらポケットの中から紙を出してきた。
「そうそう、先生お孫さんが生まれたらしいしさ、そちらのお祝いも兼ねてだってさ」
「へー!知らなかった…、まだお父様達より若いくらいじゃないの??」
担任のカリア先生はまんまる眼鏡がチャーミングな、少し童顔気味の先生。
「ナタリーは意識しない人、気にしないよね。先生、お父様達より20歳以上は上だよ」
「オー…アンチエイジング……」
思わず呟けば溜め息を吐かれる。
「それにこの前授業の最中に嬉しそうに〝孫が産まれました〟って話してたでしょ?」
「そうだっけ?」
「えっと……たしか一週間前かな?ほら夏休み明けの……、始業式して2時間だけ授業のあった日」
一週間前…始業式……そう頭の中で思い出せば、一つ聞いてなかった理由に心当たりがある。
「あっ!アルフの髪に変な寝癖が付いてた日!」
「………え?」
「もしかして気付いて無かった?うふふ……、この首の後ろのトコロ、クシャって上に上がってて、アルフにしては珍しいなって!どうしたらあんな癖ついたの?枕変えたとか?それとも髪乾かさずにそのまま寝ちゃ………」
記憶が繋がったのが嬉しくてその時の事を思わず言えば、アルフがその時にクセのあった首元の髪を抑えて、
「まさかそんな事考えて授業聞いてなかったとかないよねぇ?」
眉を寄せて、それでも頬を赤らめてるアルフに対する答えは……
A.偶然たまたま奇跡的に目に入っただけ!(恥かしそうに)
B.たまたま見えただけなんだからねっ!(照れて)
C.ガン見して妄想してました!(堂々と)
例えるならゲームのように、ピコピコと脳内で矢印を動かすが答えは出ず、
「見っっ、見てないよ!?偶然たまたまガン見して奇跡的なソレを堪能して妄想してただけなんだからね!!?」
…………わたしは、今、何を言った…………?
思わず両膝と両手を地面につけて絶望すれば「落ち着いて、そして謝って」と、謝罪の要望と共に手を引かれ立たせられる。
「うぅ……ごめんなさい」
「そんな小さなミス、見逃してよ……」
「後ろの席なので…」
「真後ろじゃないじゃないか……」
何故かゲンナリとされた表情は情けなく浮かぶ涙と共に「申し訳ございません」と深々と改めて詫びる。
「でも気付かないものだね」
「? 自分の後頭部なんて見えないじゃない?仕方ないよ。わたしも朝、念の為にクレープとお互い見せ合いっこするもの」
寮の鏡は一面鏡で、小さな手鏡と合わせてもやはり見辛いからとそんな話をすれば、想像でもされたのかクスッと笑いを返された。
「だから最近のナタリーは可愛いんだね」
「クレープ様のお陰です」
互いにニコリと微笑み「じゃ・行こうか」と歩み出し、一歩後ろを歩きながら………、
『だから最近のナタリーは可愛いんだね』
そんな言葉に気が付いて湯気が出るほど真っ赤になって揺れてるわたしは、「気をつけなければ…」などと真顔で呟いていたアルフに気が付く訳がなかった。
だってナタリーは脳内再生機能をフル稼働。
『だから最近のナタリーは可愛いんだね』
『だから最近のナタリーは可愛いんだね』
『だから最近のナタリーは可愛いんだね』
おかげさまでわたしの元気は溢れている。
今なら魔獣でも親玉でもグーパン一発で倒せる気がする!!!
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