38.聖女ちゃんの夏休み終わり、そして始まり
「夏休みが終わる…」
「ナタリー結局帰らなかったの?」
「帰れなかったの……」
夏休み中もコンスタントに出る害獣ならぬ魔獣…いや害獣であってるか…の、対応をしているうちに時は過ぎ、あっという間の夏休みも残り数日だと思えば、部屋のテーブルに突っ伏して視線だけをクレープに向ければ、お土産だと可愛いゼリーをお皿に乗せて目の前に置いてくれたのを見て身体を起き上がらせる。
アルフにも夏休み初めの夏祭り、それと雨の登校日と、その後は夜の逢瀬…でなくて、夜、こっそりと一人忍び込んで怪我を治した日以来約1ヶ月も会えて居ない。
会えるのは魔獣と魔獣と時折三原色トリオ。
クレープは先週一週間は実家に帰り、また寮へと戻ってきた。
「クレープも登校日はもう無いんだし、もう少し実家でゆっくりして来ればよかったのに」
「実家に居ると、親は許嫁の話してくるし、お爺ちゃんはお爺ちゃんでまだ嫁には早いって怒り出すし、もう騒がしくって」
「クレープ許嫁いるの!?」
驚いて勢いよく立ち上がれば、手に持ったお皿からからゼリーが落下してしまったが、その下にお皿を滑り込ませ、空中にあるうちにゼリーはまた皿の上に乗せ直すことが出来た。
「わぁ、流石ナタリー」
柔らかい笑顔でパチパチと拍手をしてくれるこんな可愛いクレープに浮いた話が無い訳がなかったと、改めてゼリーを口に運びながら視線を向ければ首を振られる。
「親が許嫁を作りたがってるだけよ。お兄ちゃんもまだ結婚してないし、親は安定が欲しいのね」
ちょっぴり困った様に笑うクレープに、どこの家庭も一緒なのかもと、学園に入る前にアルフと持ちがあった婚約話に思いを馳せ、振られた事を思い出す。
「自然と……自然と好きな人と結ばれるのは理想だけど…難しいよね」
「ふふふ、あたしが男の子ならナタリーをお嫁さんにするのに」
「それならわたしこそ男の子ならクレープみたいな可愛いお嫁さんが欲しいわ!」
目を見開いて言えばクレープはやっぱり楽しそうに笑ってくれた。
*****
「ナタリーをお嫁さんに?」
夏休みも終わり、食堂でクラスメイトのダリアンへとわたしとクレープ2人で「ね〜♡」っと、目線を合わせて夏休みに培ったわたし達の仲良しの様子を示せば、ダリアンは大きく首を縦に振ってから、
「わたしならお断りだわ」
ニッコリと笑ってハッキリと言い放たれた。
「なんでぇ??ナタリーって頑張り屋さんだしぃ、苦手なお勉強も投げ出さずに頑張るし、毎日毎日他にも色々頑張ってるのよ?」
クレープが一生懸命アピールしてくれるのを聞いて、ダリアンは呆れ顔に変わる。
「……それだとナタリーのチャームポイント、頑張り屋しかないけどいいの?女の子なら手芸が得意とか、料理が得意とか?」
「ナタリーってば小走り程度の馬になら飛び乗れるらしいよぉ〜」
「……物凄い頑張り屋さんなのはわかったわ」
ダリアンとクレープのお褒めの言葉にえへへと照れて頭を掻けば、何故か褒めてくれた筈のダリアンの目は冷たい。
「ちなみに料理は?」
「えっとね、そんな自慢出来ることじゃないけど……一人で山籠りを10日ほどさせられた時に、自然の中でも乗り越えられる程度の料理の腕はあると思う」
やはりちょっぴり自慢になってしまうかと、恥ずかしくなって頬を染めれば、ダリアンは改めてニッコリと笑うと、
「アルフくんもそれは知ってる?」
「一応…『それはすごいね』って褒めてもらえたし」
ダリアンは何故か笑顔だけど死んだ魚みたいな眼をして、
「……ナタリーがアルフくんとうまくいくように、心から祈るわ」
「え!?ホントに!?」
突然の宣言に嬉しくなれば、
「だからその特技は他で言わない方がいいと思う。アルフくん、頼むからこの珍獣をハントして国防の領土から逃がさないで欲しい…」
などと呟いたようにも聞こえたけど、きっと何か聞き間違えたのだと思う。
夏休み終わったのは寂しいけど、やっぱりお友達っていいな!と思ったナタリーでした!!




