37.聖女ちゃんセンチメンタルになる
「…んっ」
目が覚めたのは…星灯りしか頼れない暗い時間。
「…丁度いいかな?」
眠い目を擦ってまた制服に着替えてそっと廊下の窓から外へと飛び出す。
今日の目的地は礼拝堂。
木々を飛び移り礼拝堂の屋根へと着いて、いつもの天窓を開いて聖杯へと祈りを込めれば、身体の中から魔が抜けてその身が軽くなった様に感じる。
こんな高い位置から聖杯の中を覗けば、まるで金の水が溜まっている様に見えて肉体強化で良くなった視力を更に凝らして改めて見てみるが…、特に何も見えずに気のせいだったのかと天窓を閉じる。
見上げれば空には細い細い線の様な月。
星が瞬くのも見えるが、うっすらと雲もあり身を隠すには丁度いい夜。
「悪いことしてるわけじゃないのにな……」
それでも我が身の貞操の為に協力もせずに突っ走る自分を返り見て、膝を抱えて少し夏の夜風を浴びる。
「帰りたいなぁ〜…」
田舎で…特に何があるわけじゃないけど、毎日笑って、喧嘩して、怒られて、怒って、慰めてくれる、そんな家族と過ごしたあの時間。
それでも…魔獣に襲われる人々を見ないふりして帰るような莫迦な事は出来ない。友達も出来ればそれはもう確実に。
みんな自分と一緒で……家族が居て、好きな人が居て、毎日笑って、怒って、泣いて、騒いで、ただそんな当たり前を暮らしてほしいと願ってしまう。
ふうっと息を吐いた時、礼拝堂の裏…わたしの視界の隅で闇が纏まり形を成すと同時に、唸り声すら上げさせるより前にわたしは屋根の上から飛び降り両足で潰して……そのまま祈りを込めて魔力を球にしその中へとまたもモヤに成りかけたソレを圧縮して行けば、なんの魔獣だったかも分からないままに形を留められずに球となって、縮んで縮んで…わたしが目の前で手をパンッと合わせると同時に弾け、黒かったソレは光となりキラキラと輝き消えて……またわたしの中へと消えていく。
「…もう一度祈っとこう」
念の為肉体強化魔法を掛け直し、もう一度屋根へと飛んで聖杯へと祈って、また寮へと向かう。
「まだ日が昇るまではかなり時間もありそうね……」
灯りも殆どなく、見えた寮も当然消灯時間の今は入口と廊下の少しの灯りのみ…。
それは女子寮だけでなく、男子寮も同じはずで……、
気が付けばアルフの部屋の窓の前の小さな突起に足を掛け、壁に張り付いてました!!
「これは…あれよね。アルフの足が心配でね…??」
誰にする言い訳でもなく呟くと、二階だからとはいえ不用心にも窓が開いていて……そっと中へと入り込む。
えぇ決して!!!決してアルフの寝顔が見たかったとかぢゃなくてですね!!?アルフの足とか心配でね!!!!!この前雨に濡れたし風邪ひいたとかなんかあったら心配でナタリー夜も眠れないからね!!!
妙に大きくなる心の声を奥歯を噛み締め頷いて、同室の人は里帰りだと聞いて居るアルフの部屋はアルフ1人のせいかアルフの匂いが………じゃ、なくてっっっ!!!
すぅすぅとタオルケットを掛けたアルフに近付いて、少し出ていた足元をそっと捲り、バレないようにバレないようにと、出来るだけそっと手を触れれば鼻血出そう何この背徳感。
なんとか変に歪みそうになる顔面に力を入れて、片手は胸に当てて祈りを込めれば、薄っすらと光が溢れてその足を癒す。
「……これでよしっと」
小さく呟いてからそっと布団を直して、アルフの寝顔に笑顔を送る。
「…ん…?」
その時、身じろぎしたアルフが目を開く。
しかしその瞳と合う前にギリギリなんとか窓から抜け出す事に成功して壁を蹴ってまた人目につきにくい森を抜ける。
「……せめてアルフの髪が長ければ、チュッとか出来たのになぁ〜……」
物語みたいなその絵は、王子と姫が逆だったと思えてくるが、アルフならどっちでもいいし、わたしもそれも悪く無いとか色々考えれば頬も熱くなってしまう。
「やっぱりアルフは偉大だわ」
顔を見ただけで、夜の下で暗くなっていた気分も上がり、胸が高鳴る。
「…ダメで元々ぐらいな気持ちでとりあえず明日もまた一人でやってみよう!!偽物…いや出来るなら成り代わり聖女ちゃんにも頑張って貰いたい!是非に!」
グウにした手を振り上げて、改めて決意を述べれば女子寮が目に入る。
飛び上がり出た時の廊下の窓から入ろうとすれば…鍵がかかってて、そこから暫く空いてる場所を探すのに一苦労したのは別のお話……ーーーー。
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執筆に力が漲ります!




