34.聖女ちゃんの忘れ物
「どぉぉぉりゃぁぁぁぁ!!!!!!」
走り向かった学園近くの森の中。
魔獣を見つけて躊躇いなく肉体強化魔法を追加でかけて、木々を蹴りあげ夜空をバックに力一杯目一杯、その掛け声と共に全力で喰らわした踵落としは魔獣を地面をクレーター状になるほどめり込ませた!!
「カミキリキリキリキリキリッッッ!!」
「変な鳴き方を覚えるなぁ!!!」
飛び退き拳を握り踏み込もうとした瞬間、そのカミキリムシ型の魔獣はその長い2本の触覚を振り回してくる。
「いや…ちょ!?触覚はそんな使い方じゃなくない!?」
思わずツッコミつつもバックの奥にしまっていた、来る途中で着替えた制服を翻し身体を捻り避けていく。
〝バシンッ バシンッ 〟
器用にも左右から振り回される鞭のような触覚を、地を蹴り木々を蹴り身体を捻らせ…なんとか間一髪避けながら、受け身をとって回転するとそれを追う様に右の触覚を避け切れば……その2本の触覚は絡み合い、やっと気がついたのか慌てたように見えるカミキリムシ魔獣のその纏まった鞭風の触覚を肩に担いで、
「そーゆー進化は……退治対象ぉぉぉぉぉ!!!!」
「カミキリキリキリーーーーーーーッッッ!!!」
そのまま一度跳び上がり、木の枝を飛び越えてそのまま力一杯引っ張れば、梃子の原理で飛び越えて背中の羽根の部分から地面に改めてクレーターを作ったところで聖女の魔力で囲い込み、それを小さく小さくしていって…、両手を閉じて〝パンッ〟と鳴らせば、光の粒子となり消えていった。
「もう…っ、折角あのまま一緒に帰れると思ったのに…!」
キラキラと輝く粒子の中で嘆いていれば誰かがこちらへ向かって走ってくる音がする。
三原色トリオだか誰だか知らないが、会えばまた厄介な事になると思い、疲れた身体を押して肉体強化が切れる前にと木々を飛び移りその場を去った。
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「さっきの音……やっぱり森で魔獣が出て倒してきたの?ナタリー、お疲れ様でした」
「クレープ〜ありがとぉ〜…」
髪色を戻して結んでいた髪も下ろすことだけはして寮へと帰れば、クレープが冷たいお茶を用意してくれていた事にお礼と共に口に運ぶ。
「それで?誰かに花冠は貰ったの?」
「あぁぁぁぁ…それどころじゃなかったぁぁぁぁ〜」
誰かと言ってもアルフ以外には欲しくなかったと思うけど、あの音に慌てて別れて…アルフを置いて帰ってきてしまったことにも後悔をする。
「嫌われたかなぁ〜」
「その言い方をするってことは…、なんだぁ〜ナタリーってばアルフくんと居たのね」
「…約束とかじゃなくて…たまたまね。でも置いてきちゃった……って、あぁっ!!!!!」
その言葉に改めて考えれば着替えた際にバッグを置いてきて、そのまま帰ってきてしまったと慌てて扉に向かえば、クレープに「もう外出時間終わりだよぉ」と声を掛けられてしまった。
「……明日探しに行く…」
「忘れ物?」
「そんなところ……」
しょんぼりとしてしまうとクレープがタオルを渡して「シャワー浴びてきたら?その制服も洗わなきゃだしね」そんな優しい声に涙が浮かぶ。
「ありがとぉ〜」
「シャワーの前にタオルを汚さない様にね」
涙を拭うわたしを見てクスクスと笑ってくれるクレープにもう一度お礼を言ってから、シャワー室に入りサッパリして出てくれば……何故かクレープの手にわたしのバッグがある事に気が付いた。
「探してきてくれたの!?」
「違うよ。今、シャルティエ様が届けてくれたの」
「そうなの!?すぐに御礼言って……いや、明日の方がいいかな?」
「そうねぇ」
外出から帰宅したのなら、もうお忙しいだろうと遠慮をしてバッグの中を覗けば、アルフワンコのぬいぐるみに何故か小さな花冠。
そしてその下には今日着ていた私服がわたしが入れた時より綺麗に畳まれて入っていた……。
それはテコの原理ではないと、聖女ちゃんに誰か教えてあげてほしい。
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タイトル変更をいたしました。
聖女ちゃんのナタリーは引き続き頑張りますので、引き続き応援宜しくお願いいたします!!




